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セッション定番曲その6:Crossroads by Cream

ブルースのセッションでもロックのセッションでもノンジャンルのセッションでも抵抗なくリクエスト出来る便利な曲。元ネタはRobert Johnsonのブルースですが、それをCreamがヘビーなロックブルースにアレンジして有名になりました。元ネタの数曲も含めて歌詞には色々なパターンがありますが、ここではCreamバージョンを中心に。

(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:ブルースを歌おう

歌うのが好きな人でも「ブルース」になぜか抵抗感のある人が多い気がします。ジャズを歌いたいという人でも「ブルースはちょっと・・・」と。それを一歩乗り越えてやってみると、色々なことが身に付くかもしれません。言うまでもなくジャズの底流にはブルースがあるので。

代表的なブルース曲は大体「3コード、12小節(または8小節)」「歌詞は1行目と2行目が同じで物語を呈示、3行目で解決」「メロディにはブルーノートが使われている」「あまり幸せな内容の歌詞はなくて、自分の不幸や不運を嘆くものが多い」という決まったパターンの範疇です。

だから世界中どこのセッションイベントでもライブでも、キーだけ決めれば「せーの」で始められ、ソロ回しをして、エンディングまでたどり着けます。歌わなきゃもったいないですよね。

黒人じゃなくても誰でも「憂鬱(ブルー)」になって落ち込むことってありますよね。その気持ちがあればブルースは歌えます。

ポイント2:エンディングのパターンが決まっていて迷わない

セッションに不慣れな人の場合、最後の最後で「あ、どうやって曲を終わらせようか?」と戸惑ってしまうことがありますが、この曲、特にCreamバージョンなら、何も言わなくてもエンディングのパターンが決まっていて、カッコよく、気持ちよく終わることが出来ます。ありがとうクラプトン。

途中の演奏がイマイチでもエンディングが決まるとなんだけ全部うまくいったような気になりますね。何なんだろう?

ポイント3:Crossroads

「十字路」です。これについては「Robert Johnsonが村はずれの十字路で悪魔に魂を売ってギターのテクニックを身に付けた」という伝説があって、それついて詳しく解説したWebサイトは沢山あるので、それを読んでみてください。

この歌詞では「車をつかまえようとしてcrossroadに行った」とあるので、時間帯は昼間か夕方なのかな。1930年代なので車の数もそんなには多くなく、寂れた場所だったのかもしれませんね。

尚、Robert Johnsonは調べれば調べるほど沼が深くて、分かっていないことも多いので、ハマり過ぎないようにしましょう。

ポイント4:Asked the Lord above for mercy

「the Lord=神様」「mercy=慈悲」つまり「自分の願いを聞いてもらえないか祈った」という感じですね。困った時の神頼みは日本人も得意ですね。

悪魔と取引したはずなのに、それでも神様に頼ってしまうところに矛盾と主人公の弱さを感じます。

ポイント5:Going down to Rosedale

知らない単語はだいたい固有名詞」というやつです。
Rosedaleという地名はあちこちにありますが、ここではミシシッピー州の町の名前ですね。下の解説にもあるように昔も今も人口2,000人程度の小さな町で、黒人比率が高いところ。まぁ「町」といっても「ど田舎」という辺りをイメージしましょう。わざわざヒッチハイクして行った先でもど田舎だから、この歌の主が住んでいる所はもっと田舎の農場なのかもしれませんね。


ポイント6:We can still barrelhouse, baby, on the riverside

「barrelhouse=酒が飲めるジョイント」ですね。音楽も演奏されていたのでしょう。騒いでも大丈夫なように川沿いにあったんでしょうか。

「We can still buy a house, baby, on the riverside. 」とか「You can still powerhouse, baby, on the riverside.」という聞き間違いも歌詞カードに書かれていたりします。

ポイント7:my friend boy Willie Brown

これも「知らない単語はだいたい固有名詞」。「Willie Brown」はRobert Johnsonにギターを教えたり一緒に演奏していた仲間のひとり。

https://en.wikipedia.org/wiki/Willie_Brown


ポイント8:ブルーノート(スケール)

一応「メジャースケール長音階に、その第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えて用いる。特に♭3,♭5,♭7の音をブルーノートと呼ぶ」という説明になっていますが、これは西洋の12音階に無理矢理当てはめるとそれが近い、という意味ですね。実際にはそれにちゃんと当てはまらない中途半端な音。だってアフリカ大陸(各地)から連れられてやってきた人達の西洋音階に捉われていない歌声が起源だから。ピアノではうまく表現出来ない「間の音」をギターのベンディングやスライドギターや管楽器で見つけようと、みんな頑張っている訳で。

声/歌ならばそういう「間の音」が出せるはずだけど、やはり僕らはみんな子供の頃から聴かされてきた「正しい音階」に影響され縛られてしまっているのかもしれません。(子守唄を聴かせてくれた親や子守り役が音痴だった場合は・・・)

で、ある時ブルースやジャズを歌おうと、有名な人達の歌をお手本としてちゃんと聴いてみると「なんじゃ、こりゃ???」と。調子ハズレの、聴いたこと無い節回しや音階、歌にもなっていない唸り声や掠れ声。でもとても魅力的で中毒性が高くて、もっと聴きたく、知りたくなる。正解はどこ?そもそも正解なんてあるの・・・?
沼へようこそ。

英語の発音と一緒で「ナンチャッテ」でもいいんだけど、少しずつでも近づきたいですね。アジア人なりの、自分なりの「個性」でもいいんじゃないかと思います。ブルースはそういうものだから。

ポイント9:これはロック

ブルースについて長々と書きましたが、このCreamの演奏がいつの時代も人気があるのは、やっぱりこれが「ロック」だからだと思います。だってカッコいいし、3人が火花を散らしているし、ガンガン盛り上がってサッパリと終わるし。間口の広いブルースを、ちゃんとロックに仕立てあげたところに革新性があったんだと。「ロックは魂だ」と、2022年にいまさら書いておこう。ごめんなさい。


ポイント10:様々なバージョン

Freeのこのバージョンが好きで、バンドでやっていました。
少しテンポを落として、重心の低い感じで。レゲエの影響を受けたAndy Fraserのベースがいい感じです。


Ten Year Afterの高速バージョン。バンドの特徴が出ていますね。


John Mayerのファンク・バージョン。何故か歌を低音で歌っています。スタジオ録音でも同様だから意図的ですね。


Robert Johnson、デルタブルースの深い沼。


ブルース姉さんRory Blockによる原曲に近いアコースティック演奏。


Ry Cooderによる、賑やかな酒場での演奏のイメージに近い演奏。


■歌詞


I went down to the crossroads, fell down on my knees
Down to the crossroads fell down on my knees
Asked the Lord above for mercy, "Take me, if you please"

I went down to the crossroads tried to flag a ride
Down to the crossroads tried to flag a ride
Nobody seemed to know me, everybody passed me by

Well, I'm going down to Rosedale, take my rider by my side
Going down to Rosedale, take my rider by my side
We can still barrelhouse, baby, on the riverside

You can run, you can run tell my friend boy Willie Brown
Run, you can run tell my friend boy Willie Brown
And I'm standing at the crossroads believe I'm sinking down

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こんなバージョンも

I went down to the crossroad, fell down on my knees
I went down to the crossroad, fell down on my knees
Asked the Lord above “Have mercy, save poor Bob, if you please.”

Mmm, the sun goin’ down, boy, dark gon’ catch me here
oooo, ooee, eee boy, dark gon’ catch me here
I haven’t got no lovin’ sweet woman that love and feel my care

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元ネタのひとつ

Traveling Riverside Blues

If your man get personal, want you to have your fun
If your man get personal, want you to have your fun
Come on back to Friar's Point, mama, and barrelhouse all night long

I got womens in Vicksburg, clean on into Tennessee
I got womens in Vicksburg, clean on into Tennessee
But my Friar's Point rider, now, hops all over me

I ain't gon' to state no color, but her front teeth is crowned with gold
I ain't gon' to state no color, but her front teeth crowned with gold
She got a lean on my body, now, mark is on my soul

I'm going to Rosedale, gon' take my rider by my side
Lord, I'm going to Rosedale, gon' take my rider by my side
We goin' to barrelhouse all night long, 'cause it's on the riverside

Now you can squeeze my lemon 'til the juice run down my leg
You can squeeze my lemon 'til the juice run down my leg
Baby, I'm goin' back to Friars Point if I be rockin' to my head

CreamやZepはこういう元ネタの美味しいところを抜粋して、別の歌(物語)に仕立てあげていた訳です。



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