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インスタグラム黎明期の極私的想い出 (10): 最後のプレゼント

(これは「インスタグラム黎明期の極私的想い出 (9)」の続きです)

インスタグラム本を書かれたサラ・フライヤー (Sarah Frier) さんからインタビューを受けた時に提出した資料、および10年ほど前にインスタの中の人たちとやりとりしたメールなどを元に綴る昔話。


前回は、2013年暮れまで書きました。

2012年暮れに Language Ambassador としての役目が実質的に終了してから、いちユーザに戻っていた頃。

2013年9月に Josh と Bailey と東京で再会した時のこと。

Pidgin での翻訳管理がフェードアウトした直後、2013年10月頃からインスタ日本語版の翻訳文言が再びグチャグチャになっていったのち、中の人から泣きつかれて特急対応してあげた時のエピソード(〜2012年12月13日)など。


最終回、10回目となる今回はその続きです。

Facebook 社内、正確には日本拠点に、日本国内マーケット向け部隊が立ち上がり、いよいよ日本でインスタグラムがメジャーとなっていく2014年〜。

そして、思わぬ形で Kevin と Josh とリアルで会えた2016年などです。



Summary so far / ここまでのあらすじ

ここまで、覚えていることをあまり推敲しないまま、思いつくままに時系列になぐり書きしてきました。読みにくくてすみません。

とりあえず、ここまでのあらすじとして、以下にまとめておきます。

その1: (2010年10月下旬〜2010年11月20日)
初めて Instagram を使い始める
ボランティア日本語化担当者 (Language Ambassador) として選ばれる

その2: (2010年11月20日〜2010年11月23日)
Josh / Kevin / Mike らとのメールでのやりとり開始

その3: (2010年11月23日)
ひたすら共同作業
作業開始4日目にして初のクローズドベータ版ビルド

その4: (2010年11月24日〜2010年12月8日)
さらなる共同作業、Web 整備、正式リリース直前

その5: (2010年12月8日〜2010年12月19日)
不完全ながら初の日本語版正式リリース
自動化されていなかった当時のビルドフロー
結果として不本意なひどい日本語が紛れ込み酷評

その6: (2010年12月19日〜2011年1月14日)
Kevin 自家製の他言語翻訳バージョン管理システム Pidgin 登場
ついに多言語化管理がシステマチックに遂行可能に

その7: (2011年を通して)
品質も高水準で安定した「幸せな時代」
東日本大震災 / 当時の純朴素朴なインスタの世界

その8: (2012年を通して)
Facebook による買収、迫り来る変化
Josh / Shayne / Greg との渋谷での歓談
外部ボランティア開発協力体制のフェードアウト

その9: (2013年を通して)
ますます変化するインスタ、手を離れ劣悪化する翻訳文言
Josh / Bailey および当時の日本のユーザと新宿で懇親会
年末に中の人に頼まれて日本語化周りで急遽ヘルプ


Offical Instagram account for Japanese market / 日本向けインスタグラムアカウント

2014年2月14日、Facebook 東京オフィスの三島さん(当時)からメールをいただきました。その数日前に Instagram Direct (Messenger) で連絡をくださって、その後メールでの連絡になったのでした。

Subject: Instagramの新しい試み
Thread-Topic: Instagramの新しい試み
Thread-Index: AQHPKUwaosBHREgv7UKPN2Db+xPaCQ==
Date: Fri, 14 Feb 2014 06:15:05 +0000
Message-ID: <CF23E375.3AEC2%misheri@fb.com>
Accept-Language: en-US
Content-Language: en-US
X-FB-Internal: deliver
Content-Type: text/plain; charset="iso-2022-jp"
Content-Transfer-Encoding: quoted-printable

Kohji (@kohji405mi16) さん
お世話になっております。Instagramの三島です。
先日はInstagram Direct にて失礼いたしました。

本日は、Instagramが日本で実施する新しい試みについてお知らせしたく、ご連絡させて頂きました。

近日中に、日本向けのInstagramアカウント、@instagramjapanをオープン致します。
このアカウントでは、主に日本のInstagrammer、イベント、ロケーションなどをピックアップし、
日本語でコンテンツを展開します。
このアカウントは、日本のコミュニティの皆さんと共に作り上げて行きたいと考えており、
ぜひKohjiさんにもご参加頂きたいと思っております。
日本人Instagrammerのご紹介、ハッシュタグプロジェクトのアイディア、Instameetのプランなど、
色々情報をシェアして頂けると幸いです。

現段階では、215日(土)にアカウントを公開して、217日(月)に正式アナウンスをする予定です。
現在はプライベートアカウントにしていますが、ぜひ今からでもフォローリクエストをお送りください。
また、もしよければ217日の発表以降に、"@メンション"や投稿にコメントなどをして頂いて、
@instagramjapanのオープンを一緒に盛り上げて頂けると嬉しいです。

@instagramjapanのアカウントについてご不明な点やアイディアなどございましたら、
お気軽に三島までご連絡ください。

今後とも、何卒よろしくお願いいたします。
三島

Eri Mishima
Facebook | Tokyo Office | Instagram Community Manager, APAC
(以下省略)


ここに書かれている @instagramjapan というアカウントは、すでに存在していませんが、当時世界で2番目にユーザ数が多かった日本において、本格的にマーケティングに力を入れる予定であったことが伝わってきます。

この日本向け公式アカウントについては、以下の記事が残っていました。


そして、2012年4月に Facebook に買収されたのち、日本のユーザコミュニティの活性化に力を入れていくにあたり、Facebook 東京オフィス内に日本のインスタグラム専門チームが作られた、ということのようでした。

で、三島さんはコミュニティマネージャという肩書き、と。

この頃から、徐々に日本での利用者数が(2010年〜2011年頃から使っていたアーリーアダプタ層のユーザ以外に)どんどん増えていったんだと思います。

実際にはその2年後の2016年頃から、「インスタ映え」という言葉が流行語大賞を取った2017年頃まであたりが最初の爆発的ピークなのでしょう。

ともあれ、やはり東京オフィスが積極的にかつ地道にマーケティングを仕掛けた努力の賜物だったということなんでしょうね。

In-Reply-To: <CF23E375.3AEC2%misheri@fb.com>
References: <CF23E375.3AEC2%misheri@fb.com>
Date: Fri, 14 Feb 2014 15:25:35 +0900
X-Google-Sender-Auth: Qf_DNg8rpCjUIKQ-tHFrydYGq6E
Message-ID: <CAPpG=BRxz7-hoXcYZRTDkW-4r4V6RpPYGee77MtkCfE6vjCJtQ@mail.gmail.com>
Subject: Re: Instagramの新しい試み
From: "MATSUBAYASHI 'Shaolin' Kohji" <shaolin@rhythmaning.org>
To: Eri Mishima <eri@instagram.com>
Cc: "MATSUBAYASHI 'Shaolin' Kohji" <shaolin@rhythmaning.org>
Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP

三島さん、ご連絡ありがとうございます。
新しく日本向けのアカウントを開設されるとのこと、楽しみです。
日本でも着実に Instagram が成長していくことを祈っております。


なお、三島さんはその後 2018年に(Kevin と Mike が Instagram を離れる直前に) Facebook を退社され、Strava に移籍されました。そちらでも Instagram 時代同様に Senior Country Manager として活躍されているようでなによりです。

Gifts for "Early Adopters" /
アーリーアダプタへのプレゼント

急に思い出しました。

黎明期〜のインスタグラムにおいては、ある程度アクティブに投稿しているユーザなのか、そこそこフォロアー数がいるアカウントなのか、に、折に触れてプレゼントを送ってくれることがありました

その多くは、インスタグラムに世界中から投稿された写真を使ったカレンダーやブックレットのようなものでした。Tシャツやステッカーをいただいたこともありました。

昨年(2020年)の引っ越しで、それらの多くは部屋のどこか(あるいは段ボールの中)で行方不明になってしまっているのですが(笑)、ひとつだけ見つけることができました。

その 2015年度版 では、とても分厚い(7cm 以上)CD ジャケットサイズに、世界中のインスタグラマーのペットや動物のインスタ投稿を印刷した、日めくりカレンダーになっています。

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Tシャツは、最初期のロゴのものを2013年1月に(ステッカーと一緒に)送っていただいたほか、2013年9月に Josh と Bailey が来日した際に改訂版ロゴのものを手渡しでいただきました。

残念ながら、どちらもボロボロになるまで着古してしまいました(笑)


Featured on InstagramJapan /
InstagramJapan でのフィーチャー記事

その後、再び三島さんから2014年2月26日にメールで連絡があり、その新しく作られたアカウント上で、私のフィーチャー記事を書いてくださることになりました。

お世話になります。Instagramの三島英里です。

先日のアカウント開設のご連絡から早速の依頼になるのですが、 @instagramjapan にこうじさんのフィーチャー記事を掲載したく、ご連絡させて頂きました。主にはEメールで幾つかインタビュー質問をさせていただき、過去に投稿された作品と共に記事化いたします。

もしご承諾頂けるようでしたら、早速以下のご質問をさせて頂きます。
・どのようなきっかけでInstagramを始めましたか?
・Instagramアプリの翻訳をすることになった経緯、印象に残った翻訳時のエピソードなどをお聞かせください。
・Instagramでシェアする写真を撮るコツ・こだわりなどあれば教えて下さい(被写体、場所、編集、など何でも結構です)。
・ご自身のInstagram写真でお気に入りの作品を1~2点と、その理由を教えて下さい。
・記事の中でこうじさんのフルネームを掲載することは可能でしょうか?ご承諾頂ける場合は、漢字でお名前を教えて頂けると幸いです。もしフルネーム掲載NGでしたら、下のお名前かハンドル名のみの掲載を考えております。

以上、是非ご協力頂ければ幸いです。
お返事をお待ちしております。

よろしくお願いいたします。

その時に回答した返事はこんな感じでした。長くなりますが、これも記録として全文を掲載します。

Instagram 三島さん:

松林です。遅くなりましたが、以下、インタビューへの返信とさせて頂きます。予想以上に長々となってしまい、読みづらくてごめんなさい。
なにか不明な点などありましたら、ご連絡下さい。

実は昨年6月、US の方からも同様なインタビューを受けたことがあります。
その際は、個人でのフィーチャーではなく、東京というくくりで「今週のおすすめユーザー」のひとりとして簡単に紹介されました。

その際に、US の Carolyn (Merrell) さんや Jefferey (Gerson) さんなどとやりとりをしたメール(インタビューへの返事)が残っていますので、
今回のインタビューの参考になれば、と、末尾に引用しておきます。


どのようなきっかけでInstagramを始めましたか?

2010年10月中旬、確か Twitter 上で、誰かが Instagram post を share (tweet) しているのを見かけ、Instagram の存在を知りました。その後、自分の iPhone 用にアプリをダウンロードし、2010年10月30日に、初めて写真を post しました。

Instagramアプリの翻訳をすることになった経緯、印象に残った翻訳時のエピソードなどをお聞かせください。

2010年11月18日に、Kevin (Systrom) さんがご自身の IG アカウント上で「ボランティア翻訳者求む」という post を投稿したのを目にし、さっそくメールで応募したところ、採用されました。バージョンでいうと、1.0.6 から 3.2.0 までは、全ての日本語文字列の文責は私にありました。その後、Facebook 翻訳チームが翻訳を行うようになり、ボランティア翻訳者としての関わりはフェードアウトしていきました。

簡素・簡潔なインターフェース、簡素・簡潔な文言で、最高の使用感を提供している Instagram アプリの翻訳を行うことは、ぶれないポリシーが重要でした。いかに簡潔な表現にまとめるか(視認性の点でも、表示スペースの制約という点でも)、全体のトーンを統一させることに注力すること。バージョン 1.0.6、1.1.0 辺りはまだ日本語が変な部分が残っていましたが(後述)、その後 3.2.0 までは、日本語の品質を保つことができたと自負しています。(3.4.0 以降はまた妙な日本語が混ざり出しているのが残念ですが。。。)

当初は Kevin さんや Mike (Krieger) さん、Josh (Riedel) さんと、Google Docs 上(!)で翻訳文字列のやり取りをしていました。そのため、アプリへの取り込みなどでも取りこぼしや齟齬があったようで、修正の依頼をなんどもメールで送ったり、なぜこの表現ではダメでこの表現にしないといけないのか、ということを(日本語そのものについても含めて)忍耐強く説明したりしました。IG チーム側で、安直に(笑)Facebook 上の日本語翻訳を merge されたことがありますが、この際も、なぜ「Instagram アプリ上では」この表記がダメなのか、ということを辛抱強くメールで説明し変更したこともありました。

その後、gettext や transifex、smartling といった仕組みを使うべき、という私の訴えが聞き入れられたのか(あるいは内部的に多言語を Google Docs だけで管理することの無謀さに気付かれたのか)、2011年1月頃には、Instagram 社内で作られた web 上の管理システム上での翻訳作業が始まりました。2012年10月頃までは、この共同作業が非常にスムーズに機能していました。

そして11月頃には Facebook in-house translation team による翻訳に少しづつ移行し始め、私の手から離れていきましたが、Instagram の盛り上がり、発展、機能進化に(外部のボランティアという立場ではありますが)多少なりとも関わることができたことは、本当に嬉しく思います。

また、2012年5月には、来日した Greg (Hochmuth) さん、Shayne (Sweeney) さん、Josh (Riedel) さんと渋谷で直接お会いすることもできましたし、昨年秋には Josh さんと Bailey (Richardson) さんを招き、他の IG ユーザー20人ほどでミーティングを開くこともできました。

Instagramでシェアする写真を撮るコツ・こだわりなどあれば教えて下さい(被写体、場所、編集、など何でも結構です)。

私自身は、写真自体は本当にドシロートの域を出ないと思っていますし、写真やカメラ「自体」が趣味でもありません。けれども、Instagram という場を通じて、世界中の様々な人達とつながり、互いの文化や歴史、日常のさりげない光景を通してやりとりをすることは、何事にも代え難い貴重な体験だと思っています。

ですので、どのような(ヘタクソではありますが)写真を載せる場合にも、何を伝えたいか、何を知ってもらいたいか、によって写真を選んでいます。私の投稿の場合は、往々にして写真ありきではなく、メッセージありき、になっているものが多いのはそのためです。

同様の目的で、投稿のキャプションは、極力英語・日本語併記にしています。これにより、なにげない日本の一風景に潜む(海外から見た)日本らしさを外国の IG ユーザーの皆さんに紹介したり、意見交換したりできているのではないかと思います。

娘との日常も、写真のテーマになっていることが多いですが、「うちのこ、かわいいでしょ、みてみて〜」的な写真は嫌いですし(笑)そういう意図で載せたことはいちどもなく、「未成熟な大人」では決してない、「大人が失ってしまった純真さ・敏感な感受性・素朴な感性を持った、特別な存在」という意味での「こども」の感覚を、私の娘との日常を通じて伝えることが主眼となっています。

こどもの写真を撮る時は、いかにピースサインをさせないか、おすまし顔を撮らないか、いかにたくさん話しかけるか、などもありますが、個人的に最も注意しているのは、「こどもの目線の高さで撮る」ということです。大人の目線から見下ろしてとった写真は、えてして文字通り「こどもを見下した」ニュアンスになりがちです。こどもの気持ちに寄り添い、こどもの感覚に自ら近づき、こどもの目の高さでとることで、こどもの純真さが出やすいのではないか、と(写真ドシロートながら)思っています。

ご自身のInstagram写真でお気に入りの作品を1~2点と、その理由を教えて下さい。

最近の中では、例えば次のような写真になります。1〜2点より多くなってしまってごめんなさい。

http://instagram.com/p/hFIMvPN9tg/
この写真は、たまたま遊びにいった公園で、たまたまお友達になって、だんだん打ち解けてきて、あっという間に楽しそうに走り回り話している娘と4歳の女の子の写真を通じて、こどもの素朴さ・純真さというものは本当に替えがたく、われわれ大人はもっとこどもを尊重しこどもから多くを学べるはずだ、という裏のメッセージを込めています。

http://instagram.com/p/eo_wNrt9hZ/
http://nstagram.com/p/X7C9aSN9rO/
私の娘は小さい時分から、動物や昆虫、植物など、あらゆる生き物に興味があり、そしていつもやさしく語りかけています。この娘のお気に入りの木は、彼女いわく「ねっこくん」という名前で、ここにくるたびに、ねっこくんに話しかけたり、気遣ったりしています。やはりこれも、成長につれて大人が失ってしまうであろう感覚なのではないかと思います。

http://instagram.com/p/bphVjwt9mr/
これは神社での「茅の輪くぐり」を紹介した投稿です。こうやって、我々の日常のそこかしこに潜む「日本的なもの」を、海外に平易に紹介することも、投稿のモチベーションのひとつとなっています。

http://instagram.com/p/XgUEfAN9qK/
日本人にはありふれた「住宅地での春の満開の桜」を通して、日本人が桜をどのように受容してきたか、を(ここでは英語のみで)紹介しました。

http://instagram.com/p/XzZLt5N9ki/
先述した「こどもの目線」というのを意識して撮ったものの1枚です。

記事の中でこうじさんのフルネームを掲載することは可能でしょうか?ご承諾頂ける場合は、漢字でお名前を教えて頂けると幸いです。もしフルネーム掲載NGでしたら、下のお名前かハンドル名のみの掲載を考えております。

フルネームでの掲載で構いません。漢字表記は「松林 弘治」となります。

上述しました通り、以下に昨年のメールでのインタビューを引用しておきます。

(以下省略)

その後、2014年3月4日に、このインタビューをもとに簡潔に編集されたかたちで、Facebook 上の InstagramJapan アカウント、および Instagram 上の公式アカウントで、以下の写真と共に紹介していただきました。

残念ながら当該投稿はいまは残っていないようです。

(Nov. 24, 2013) INNOCENCE MAKES FRIENDSHIP: my daughter and I visited the nearest park this morning - other kids were playing there with their mamas and papas. Then one of the kids, four years old girl, came to my daughter, and asked my daughter to play together with a big smile. They soon became friends each other, and played together a lot. I've been always impressed and amazed to see such innocence and beautiful hearts they have. / 今朝娘と近所の公園に行くと、すでにたくさんの子どもたちが遊んでいました。すると4歳の女の子が娘のところに寄ってきて、満面の笑みで「いっしょにあーそぼー」と言ってくれました。その後二人はすぐに仲良しになり、楽しそうにいっぱい遊んでいました。子供のこういう純真さを見ていると本当に微笑ましくなります。


Innocent Days of Instagram, Revisited /
改めて当時のインスタグラムの純朴な時代

繰り返しになりますが、この一連の記事で触れている当時のインスタグラムには、ストーリー(24時間限定投稿)もなく、ダイレクトメッセージ機能もなく、広告もなく、動画もなかった、そんな時代です。


ちなみに、2010年リリース当初の投稿画像フォーマットは、縦横比 1:1 の正方形のみで、640 x 640 ピクセル固定でした。

2015年7月7日になってやっと 1080 x 1080 ピクセルに拡大されました。


さらにその直後、2015年8月27日に正方形以外のフォーマットでの投稿も可能になりました。


15秒動画投稿が可能になったのは2013年2月でした。ビデオ投稿といえばいまどきは TikTok などでしょうが、そのさらに前、Vine という6秒ショート動画投稿サービス(2012年〜2017年)が流行っていた時代です。


広告導入は2013年10月にアナウンスされ、11月に初の広告投稿が試験的にお目見えしました。


ダイレクトメッセージ機能の導入は2013年12月。


ストーリー導入は2016年8月。当時は Snapchat のパクリと揶揄されたりしていましたね。


フォロアー数 like 数で競ったりすることもなかった時代。

「インスタ映え」という言葉も一般的ではなかった時代。

そういえば、いわゆる有名人、セレブリティのアカウントもほぼ皆無でしたね。ある意味ほのぼのとした、世界中のユーザ間でのコミュニケーションツールでした。

2010年〜2013年頃のインスタグラムはそんな世界観でした。

十年一昔とはよくいったものです。

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上記グラフの出典: 
https://www.statista.com/chart/9157/instagram-monthly-active-users/


Growth of IG User Base in Japan /
日本でのインスタユーザ拡大

2014年〜2015年。目にみえて一般ユーザ数が増えていく実感がありました。

例えば、仕事の打ち合わせで電車に乗り込むと、スマホを持つ周りの乗客は、それまでは例えば LINE POP やツムツム、パズドラといったゲームや、Twitter や Facebook といった SNS、各種ニュースアプリを使っている人が多かった記憶があります。

あるタイミングから、Instagram のタイムラインを眺める人を見かける率がぐっと増えたのです。個人的体感としては2015年くらいだったでしょうか。

ギーク向けではない一般 web メディア、あるいはテレビのバラエティ番組や情報番組などでも、インスタグラムが取り上げられることが増えていきました。広告媒体として活用する企業も一気に増えました。


そして、私自身のインスタ投稿が滞り出したのも、ちょうどこの頃でした。

娘も小学生になり、子どもたちだけの時間も増え、常に親というか家族と一緒にいるわけではなくなった、ということが重なったというのもあるのですが。


Kevin & Mike in Tokyo / ケヴィンとマイク来日

上述の通り Instagram 上での投稿も散発的になっていたその頃。

2016年3月28日、三島さんから久しぶりにメールをいただきました。

なんと、Kevin と Mike が来日するというのです。

松林様

お世話になります。Instagram三島です。
大変ご無沙汰いたしております。

早速ではございますが、ご招待させて頂きたいイベントがありまして本日はご連絡させて頂きました。

4月9日~4月14日に、Instagramの共同創業者のKevin SystromとMike Kriegerが来日いたします。ともに仕事がらみの視察としては初来日となり、Mikeに至っては初めての日本となります。

来日中の4月11日(月)の夜、日本のアントレプレナーやスモールビジネスなどを集めた交流会を開催する予定でして、ぜひ松林さまにもお越しいただきたいと思っております。KevinもMikeも、Instagramをローンチした当時の日本のユーザーグロースや、松林さまにローカライズのサポートをして頂いたことなど、今でもとても良く覚えていて、直接ご挨拶をさせて頂きたく存じます。

イベントの詳細を下記にてお送りさせて頂きます。こちらご確認の上、ご出欠のお返事を4月4日(月)までに頂ければ幸いです(RSVPは InstagramJapan@instagram.com までと記載していますが、私に直接お返事頂く形でも結構です)。もしご都合がよろしければ、ぜひ足をお運び下さいませ。

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どうやら、日本国内のアントレプレナー(起業家)向けのクローズドイベントのようです。わたし、アントレプレナーでもなんでもないんですけど、いいのかな。。。

けど、せっかくなのでお言葉に甘えることにしました。そういう世界を覗き見ることができる機会もそうはないですし。

早速のお返事ありがとうございます!
私もこの機会に松林さんにお会いできることを、とても楽しみにしています。

さて、松林さんにお返事を頂く前から少し社内で先走っておりまして、松林さんに2点ほどお願いしたいことがございます(あつかましくてすみません!)。

作品の展示
当日はLeica Ginza Salon内でInstagram Communityの作品を数点展示する予定です。松林さんの作品も是非ディスプレイさせて頂きたいと思っています。

対象作品:
https://www.instagram.com/p/3-HWgqt9ih/

もしご承諾頂けるようでしたら、以下のお手続きをお願いしたく存じます:

1)利用許可書のご署名(英語の電子書類になります)
  本メールにお返事を頂き次第、電子書類をお送りいたします
2)こちらのお写真の元ファイルをメールでお送りください
  なるべく解像度が高いものをお送りください
  スクエアサイズのお写真をお送りください
3)お手続き期限:4月4日(月)18時

※展示の際には、Instagramのuser nameを記載し、クレジットさせて頂きます。

取材について
当日はメディアの取材(テレビ、新聞)も受ける予定です。

KevinとMikeにとって、初期の頃の日本の成長はかなり印象深いもので、おそらく松林さんにご協力頂いたエピソードなども話すだろうと思われます。

メディア側のストーリー内容にもよりますが、松林さんにも当時のことをお話いただきたい場面もあるかと思いますので、ぜひともご協力頂きたく思います。

取材に関する詳細は弊社の広報担当の市村とWongよりご案内させていただきますので、別途メールでお繋ぎさせてください。

色々とお願いごとばかりで大変恐縮ですが、こちら2点をご検討いただけましたら幸いです。

どうぞよろしくお願い致します。
三島

会場に写真まで飾っていただけることになりました。。。


Meeting Kevin & Mike in Person, Finally /
ついに Kevin と Mike に会う


2016年4月11日、東京のライカ銀座店にて、そのイベントは開催されました。17時20分頃現地到着、受付を済ませて中に入ります。なんか意識高い系(笑)な方々だらけで明らかに場違い感満載でしたが、まぁいいや、楽しみましょう。


17時50分頃、急に銀座店内のスタッフがあわただしくなりました。Kevin と Mike が黒塗りのワンボックスハイヤーで外に到着したようです。

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(2016年4月29日 NEWS ZERO 内で放送された特集コーナーより)


店内に入ってきた2人は、まっさきに私のところにきてくれました。

Web 上の各種動画で見ていた通りの、そして、6年前からメールでやりとりしていた通りの、リアル億万長者になったあとも(笑)気さくで親切で茶目っ気があって、純真なギーク心を忘れない、けど立派なビジネスパーソンなお二人でした。

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(2016年4月29日 NEWS ZERO 内で放送された特集コーナーより)


「やっとリアルで会えたね弘治!」
「というか Kevin って想像以上に背が高くてびっくりした(笑)」
「どう、弘治は最近どんな仕事してるの?」
「あっちこっち分刻みのスケジュールで引っ張り回されてお二人大変だったでしょう?」
「そういえばいつもインスタで見てる娘さんは元気?」
「来日してからどういうところを回ってきたの?」
「いやー、あの当時の弘治とのリモート共同作業は楽しかったし懐かしいよねぇ」


とかなんとか、他愛もない雑談であっという間の10分強が過ぎてしまいました。2人は続くトークイベントの準備のために上の階のスペースへ移動。

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その後、2人の来日の特集コーナーを取材されていた NEWS ZERO のスタッフの方からインタビューを受けました。黎明期のインスタグラムについて、日本語化をボランティアで手伝っていた頃のエピソード、わたしからみた Kevin や Mike など、当時のインスタの中の人たちについて。


Public Talk with Japanese Entrepreneurs /
日本のアントレプレナーとのトークイベント

19時15分、招待されたアントレプレナーの皆さんを前に、予定通りトークイベントが始まりました。

イベント会場の壁には、Instagram の日本ユーザによる投稿が多数飾られ、ドリンク (FUGLEN TOKYO) や、ケータリングサービス (MOMOE GOHAN) も、そして会場に展示されている花 (Little Shop of Flowers) なども全て、インスタを活用されているお店/企業によるもの、ということでした。

司会者の方によると「このようにインスタグラム満載の環境の下、今回、日本の起業家の皆さんとお話しできる機会ができて本当に嬉しく思います」と。

Kevin と Mike と一緒に登壇されたのは、クービック (Coubic) の倉岡さん、そして every.tv の菅原さんでした。

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逐次翻訳者付きのイベントで、発話者の言語に応じて英語→日本語、そして日本語→英語がスムーズに翻訳されていました。


Kevin と Mike が紹介され、2人にマイクが渡され「Hello - how are you guys?」と挨拶、拍手喝采の会場。続けて、インスタグラムについての概要や今までの経緯、これからの展望を2人が話される前に、会場にいる私を紹介してくれました。

...so, as we were introduced, I'm Kevin, and this is Mike.
いま紹介してもらった通り、私が Kevin で、隣が Mike です。

But I wanted to introduce one person before we get started, 'cause this is all about on the Instagram and its community.
お話を始める前に、インスタグラムとユーザコミュニティにおいて欠かせない人を1人紹介させてください。

So, there was ONE PERSON - five or six years ago - that helped us translate the Instagram into Japanese.
5〜6年前のことだったか、インスタグラムの日本語翻訳を手伝ってくれた人物がいました。

Because when we first launched, all of the sudden we had a bunch of people signing in, and in TWO COUNTRIES it got very popular.
サービス開始直後、あっという間に大量のユーザが加入してくれたのですが、特に2ヶ国で非常に人気がありました。

United States, and Japan.
アメリカ、そして日本です。

So we reached out to our good friend in the community, Kohji, and we asked him: “Can you translate the app bro?”
そこで友人の弘治に連絡してお願いしてみました。「アプリの翻訳やってくれない?」

And he said “Yes”. And he translate the entire app!
で「いいよ」と返事をもらいました。で、何もかも全部日本語化してくれたんです!

And because of him, we all are spending here today.
弘治のおかげで、今日こうやってここに集まることができたんです。

So thank you to Kohji.
というわけで、弘治、ありがとう。


なんか、今までに書いてきた事実と異なる箇所がありますが(笑)、だって2010年11月にこちらから手をあげて協力しただけですし、リアルで会うのもこの日が初めてですし。

けど、錚々たるアントレプレナーの皆さんの前で紹介していただいたことは、とても光栄ですし率直に嬉しかったです。いい思い出になりました。

Kevin、Mike、三島さん、市村さん、Wong さん、当日はお世話になりました。本当にありがとうございます。

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当日、会場に展示してくださった写真


帰宅後、Kevin と Mike の2人から、娘に向けたビデオメッセージも届きました。

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お礼に、娘も私と一緒になって文章を考えて英語にして、小3娘の話す拙い英語のビデオメッセージを撮影し、2人に送り返しました。

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また、イベント会場に展示していただいた写真は、後日 Kevin と Mike の厚意で、額装されて突然自宅に届けられるというサプライズもありました。

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The Aftermath / その後

わたし自身はインスタグラムへの投稿もめっきり減り、せいぜい2ヶ月に1回程度に減ってしまいました。けど、まだ素朴なコミュニケーションツールだった 2010年〜2012年当時にインスタを通じて知り合いになった方々とは、今でも仲良くさせていただいています。


2018年9月25日、共同創業者である Kevin と Mike が Instagram を退社する、というニュースが世界を駆け巡りました。


すぐ Kevin にメッセージを送ったところ「Time for a new chapter!」と返事がありました。 Kevin と連絡をとったのは現時点ではこれが最後となりました。

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2020年4月、ふたりが Rt.live という COVID-19 実効再生産数可視化サイトを立ち上げたことを知り、相変わらず軽やかなフットワークで活躍されているんだなぁ、と嬉しく思いました。


2021年3月、7月に上梓する本を執筆中、担当編集者から「インスタグラムの共同創業者にメールインタビューをお願いできないか?」と無茶振りをされ、ダメ元でコンタクトをとってみたところ、Mike が回答してくれました。

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その本は、2021年7月7日に「シン・デジタル教育」という本となって出版されました。

子どもと親とディジタルテクノロジーとの関わり方という観点から、彼なりの考えを回答して、拙書の特別付録に掲載させてもらいました。Mike、むっちゃ忙しいやろうに、ほんまありがとう。


以上、特筆すべき内容では全くありませんでしたが(笑)、黎明期のインスタグラムにまつわる、極めて個人的な想い出話でした。

自分はオープンソースの世界のエンジニアですが、クローズドソースのアプリやサービス、しかも世界中の誰もが知るアプリ、にボランティアとして末席ながら開発に関わる、という、貴重な体験をさせてもらったことは本当に楽しかったです。

もし、これら一連の記事を読まれた方のなかに、ひとりでも興味深いと思って面白がってくれる方がいましたら、光栄です。

(了)


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