1杯目 コエドの『Kyara』
美味しいビールにはいつも音楽が流れています。ビールを飲むと聞きたくなってくる音楽、より美味しくなる1曲をセレクトしてご紹介していくコーナーが始まりました。
Ben Watt『You're Gonna Make Me Lonesome When You Go』
本日はベン・ワットの『You Gonna Make Me Lonesome When You Go』をご紹介します。オリジナルはフォークの神様ボブ・ディランが1975年にリリースした名盤『血の轍』に収録されています。A面のラストに入っているところもすごく好きで、レコードって曲はもちろん、それ以上くらいに曲順が大切なんだなと思わせてくれます。
『血の轍』はボブ・ディランの体験を基にした私小説的なアルバムと言われていますが、この『You Gonna Make Me Lonesome When You Go』(邦題:おれはさびしくなるよ)は別れた恋人を温かく送り出している、大人の優しさと哀愁の入り混じる楽曲です。
今回僕がおすすめするのはエヴリシング・バット・ザ・ガールのベン・ワットのソロアルバム『ノースマリン・ドライヴ』に収録されているカヴァーバージョンですが、ヴォサノヴァ風のリズムに深いリヴァーブがかかったギターが印象的な弾き語りで、優しく淡々と歌っているところが余計胸に迫ります。
あくまで優しいんだけど、それは人生の苦味もじゅうぶんに知っている人の持つ種類の優しさで、去っていく人の幸せを祈るような大きさ、強さを感じます。包み込むようなベン・ワットのヴォーカルは物語を話してくれているかのようです。
COEDOの『伽羅』はIPL
この曲を聴きながら飲みたいビールはCOEDOの『Kyar(伽羅)』ですね。何と6種類ものモルトを調合して作られた伽羅は、柑橘系の爽やかな香りにカラメルを思わせるほのかな甘みとまろやかさがあり、もちろん苦味もしっかりとありながら、スッキリと飲みやすいビールです。
1番の特徴は、IPA(インディア・ペールエール)かと思いきや、ラガー酵母で低温・長期発酵させたIPL(インディア・ペールラガー)であることです。
ビールには大きく分けて華やかな香りと深い味わいが特徴のエールビールと、スッキリしたキレの良さが身上のラガービールがあり、日本で主に流通しているビールは90%くらいラガータイプです。
ラガービールの爽快感や飲み口の良さはそのままに、ホップの使用量を多くしてホップの個性や華やかさや楽しめるのがIPLというわけです。最近では欧米でも『ホッピーピルスナー』と呼ばれる、ホップをしっかりと効かせたピルスナーが人気を博しています。
ビールと音楽
何はなくとも美味しいビールですが、自分が好きな曲というものがもしあって、好きなビールと共に味わう時間が人生にあるなら、生まれてきた甲斐があったというものです。今日1日のいいことも嫌なことも、1杯のビールと音楽で『ああ生きてて良かった』と思えますように。