And I Love Beer
1.クラフトビールについて
ビールや料理に関することを調べてまとめたものを記していきます。今回はクラフトビールについてお話ししていきたいと思います。クラフト(craft)には『手作業で作ったもの』や『技術』『職人技』といった意味があります。一般的にクラフトビールという言葉は、小規模な醸造所が作る個性的なビールという意味合いで使われる場合が多いようです。
1994年の酒税法の改正により、ビールの製造免許の取得に必要な年間の製造量(それ以前は年間最低で2000キロリットル!、以降は最低で60キロリットル以上)(15リットルの樽で13万個が4000個で良くなった)が大幅にひきさげられ、新規参入のハードルも下がり、地ビールのブームが起こりました。
小規模な醸造所(マイクロブルワリー)から多くの地ビールがリリースされましたが、当初は『土産物』といった立ち位置で『美味しいから飲む』というよりは『珍しいから』買うというようなビールでした。
では、『地ビール』と『クラフトビール』では何が違うのでしょうか?『小規模な醸造所が作るビール』という点では同じに見えます。
日本では地ビールが人気を失いつつあった2000年頃、アメリカでクラフトビールがブームを巻き起こしていました。日本のビールファンからも大手の作るビールではなく、小規模な醸造所が作るビールが再び注目されるようになりました。
少し前の『あまり美味しくない』イメージの強かった地ビールと差別化をつけるため、職人の手仕事として『クラフト』のビールなんだという意志が高まり、日本のブルワーたちも『クラフトビール』として販売するようになりました。
『よなよなエール』でおなじみの『ヤッホーブルーイング』のラインナップが続々とスーパーやコンビニに並び始めたのもこの頃で、ヤッホーブルーイングがクラフトビールの入り口になった人は多いのではないでしょうか。
2011年にオープンしたクラフトビールの飲めるレストラン『クラフトビールマーケット』の成功もクラフトビールの名の普及に大きな影響を与えました。
私の初めてのIPA体験はヤッホーブルーイングの『インドの青鬼』で最初の感想は『なんじゃこりゃ〜』でした。今は大好きです。
最近ではサッポロビールの『ソラチ』や、アサヒビールの中の隅田川ブルーイングのように、大手のビールメーカーが『クラフトビール』を謳って差別化を図り展開している事例もあります。キリンは2014年にヤッホーブルーイングと資本提携を結び、2019年にはアメリカのクラフトビール大手の『ニューペルジャン・ブルーイング』を買収するなど、クラフトビールに力を入れています。
大手がクラフトビールとうたいブランディングを図ることに、一部のクラフトビールファンは違和感を覚えますが、『既存のスタイルとは違う=多様性のあるビールという解釈でのクラフトビール』という位置づけだと、自分は理解しています。個人的には大手でもマイクロブルワリーでも美味しくて質の良いクラフトビールであれば、どちらでも良いのでは無いかと思います。
ビールの4大要素
・水 ・麦芽 ・ホップ ・酵母
2.ビールのスタイル
●ラガー [ラガー酵母] [下面発酵]
●エール [エール酵母] [上面発酵]
●自然発酵 [空気中の酵母]
●その他(ハイブリッド、フルーツビールなど)
ラガービール
ラガービールとは、15世紀にドイツのバイエルン地方で初めて製造され、19世紀以降は世界的に主流となった、下面発酵のビールです。日本の大手メーカーが製造しているビールはほとんどがこのタイプで、爽やかな麦芽の香りと、クリアーな味わいに魅力があります。
ブンデスリーガ強豪のバイエルン・ミュンヘンの優勝セレモニーで使用されるのは、全てパラウーナー(ドイツの正統派ブルワリーで、オクトーバーフェストにビールを提供している6つにうちの一つです)のへフェ・ヴァイスビアだそうです。
ビール作り
麦芽粉砕→糊化(こか)(マッシュ)→糖化→濾過(ロイター)→煮沸(ケトル)→冷却→酵母投入→発酵(二酸化炭素とアルコールを生成)→熟成→濾過→パッケージ→出荷
下面発酵ビールとは→発酵が進むと、タンクの底の方に酵母が沈降していくビールの事。6°cから15°cくらいの低温で、6日から10日ほどかけて発酵します。
1 ピルスナータイプ
ピルスナータイプは日本で最も一般的に飲まれているタイプのビールで、ラガービールの一種です。
1. ピルスナー (Pilsner) 透き通る黄金色をしていて、ライトでキレのある喉越しが特徴です。15世紀ごろにドイツを中心に原型となる製法が始まる。
ボヘミアン・ピルスナー 1842年チェコのボヘミアで生まれた世界初の黄金色のビール。控えめなホップの苦味とスッキリ爽快な喉越しが特徴
ボヘミアのピルゼン市で製造されたこのビール、(ピルスナーの由来)他の地域の濃色のビールと同じ製法で醸造されたのですが、他の地域との違いは水でした。ヨーロッパは基本的に硬水の水質ですが、この地方は日本に近い軟水の性質でした。そのことが、黄金色のビールを作り出したのです。
現在でも『ピルスナー・ウルケル』という銘柄で、元祖ピルスナーを味わうことができます。
ジャーマン・ピルスナー ボヘミアン・ピルスナーがドイツに広まると、ジャーマン・ピルスナーと呼ばれるようになりました。
同じ製法で作っても、土地や水が違うとボヘミアン・ピルスナーとはまた違うものが出来上がりました。日本の大手ビールメーカーで作られているラガー系のビールはこの『ジャーマン・ピルスナー』を参考にしていると言われています。
ドルトムンダー その名の通り、ドルトムント地方で生まれたビールです。『ブロンド・ビール』とも言われる淡く透き通った色、ホップの香りや苦味は控えめで、軽くマイルドな口当たりが特徴です。エビスビールはこの『ドルトムンダー』の手法を取り入れています。
シュバルツ ドイツ語で『黒』の表すシュバルツは、麦芽を焙煎させてチョコレートやコーヒーのような香ばしさを持ちながらも、意外と苦味は少なく、ラガービールらしいシャープな味わいです。
エールビール
ラガービールに対し、エールビールは古代から作られ、飲まれてきた上面発酵のビールです。紀元前ホップの複雑で豊かな香りが楽しめ、モルトの甘味や香ばしさが感じられるビールが多く、泡もラガーに比べ少なめなことが特徴です。
上面発酵ビールとは→ 発酵が進んでいくと、液体の上のほうに酵母が浮かび上がってくる性質の酵母(エール酵母)を使ったビールです。20度から25度くらいの比較的高温で3〜4日と短期間で発酵し、1〜2週間の貯蔵で出荷するビールです。
発酵期間の短さや貯蔵しておくスペースの都合のほか、個性的なビールを作りやすいという理由から、クラフトビールブルワリーでは、エールビールの生産が大半を占めています。(ラガービールの製造は低温で長期間発酵させる必要があり、その分設備投資にお金がかかります。)
1.ペールエール (Pale Ale)
ペールエールは18世紀ごろイギリスで生まれたスタイルで、苦味は控えめなので、クラフトビール初心者にはまずおすすめしたいビールです。エールには『色が淡い』と言った意味があり、当時の主流であった濃い色のビールと比較して『ペール(淡い)エール』と呼ばれるようになりました。
現在、ペールエールには大きく分けて2つのスタイルがあります。
・モルトの香りとコクが豊かな『イングリッシュ・ペールエール』
代表的なビール『バス・ペールエール』
・ ホップの香りが感じられる『アメリカン・ペールエール』
『よなよなエール』もアメリカン・ペールエール
2. IPA(アイピーエー)(India Pale Ale )
IPA(インディア・ペールエール)は、18世紀後期にインドに滞在するイギリス人に向けてペール・エールを輸出するため、防腐効果の高いホップを大量に使用し、アルコール度数も高めにして保存効果を高めたものが始まりでした。
これが苦味のしっかり効いた、香り豊かなエールと評判になり、インディア・ペールエール、略してIPAと名付けられました。
このIPAがアメリカに渡りアメリカ産のホップを使用した『アメリカン・IPA』が生まれます。柑橘類を思わせる爽やかな香り、しっかり効いた苦味とホップの甘味が世界的にヒットし、日本のクラフトビールブームの立役者となりました。
日本でもクラフトビール好きには最も有名なスタイルで、『アメリカンIPA』(アメリカの西海岸を中心に製造される、ホップの苦味やアロマの重視したビール。『ウェストコーストIPA』ともいわれます。さらにこれでもかとばかりにホップを入れた『インペリアルIPA』、アルコール度数が5%以下と低めで、長い時間話し合いながらでも飲みやすい『セッションIPA』など様々なスタイルがあります。
3. ヴァイツェン (Weizen)
ヴァイツェンはドイツ語で『小麦』を表す通り、大麦麦芽の他に小麦麦芽を50%以上使用します。小麦は大麦に比べてタンパク質が多いことから、白く濁ったヴァイツェン特有の色味ができます。
バナナやトロピカルフルーツのような甘く、フルーティーな香りが特徴で、苦味は少なめです。
ベルギーで誕生した『ベルジャンホワイト』というスタイルは、大麦麦芽と小麦(麦芽になっていない)を使用していますが、最大の特徴はオレンジピールやコリアンダー、スパイスなどを使用している点で、日本のヤッホーブルーイングの『水曜日のネコ』が有名です。
4. スタウト (Stout)とポーター(Porter)
ポーター
ポーターは18世紀のイギリスで生まれた黒ビールです。当時ロンドンでは麦芽を焙煎して甘みや香ばしさを強調した『ブラウンエール』と『ペールエール』そして少し古くなって酸味の出てしまったビールを合わせた『スリースレッド』というブレンドビールが大流行していました。
そんな頃、あるパブの主人はいちいちブレンドするのが面倒になり、初めからその味を再現したビール『エンタイア』というものを開発したのが始まりです。
それがパブの近所にある市場で働いていた荷物運び人(ポーター)に間に広まり、瞬く間に大流行したことから『ポーター』と呼ばれるようになりました。
スタウト
スタウトはポーターのロンドンでの大流行を受け、アイルランドのギネス社が研究し作り上げた製品で『スタウト・ポーター』が始まりです。
『スタウト』には『強い』という意味がありますが、ポーターに比べアルコール度数も強く、小麦の焙煎具合も高いのが特徴です。ポーターよりも甘味は控えめでシャープな苦味と麦のこげた良い香りが強調されています。
5. バーレーワイン (Barley Wine)
『麦のワイン』の意味を持つ『バーレーワイン』は、一般的なエールビールが2〜3週間の熟成期間であるのに対して、半年から1年以上かけて熟成させるまさにワインのようなエールビールです。
時間をかけて熟成させたモルトの力強い甘みや、ボディの強さ、アルコールの高さ、はちみつやレーズンを思わせる濃厚で上質な香りが特徴です。
シェリー酒やブランデーのように時間をかけて、ゆっくり楽しみたいビールです。
フルーツビール(Fruit Beer)
フルーツビールは、醸造の過程で麦やホップの他に果物を加えて作られるビールで、ハイブリッドビールと呼ばれるものに分類されます。ハイブリッドビールは他にもスパイスやハーブを混ぜたものがありますが、日本では厳密にはビールではなく、発泡酒の扱いになります。
フルーツビールには柑橘系を使用したものやラズベリーなどのベリー系を使うことが多く、ビールの苦味や独特な味が苦手な人にも飲みやすいものが多いようです。
3.クラフトビールの楽しみ方
クラフトビールの魅力には様々なものがありますが、パッと思い浮かぶだけでも
◉ 個性豊かなものが多く楽しめる
◉ 一期一会の出会いがある。
◉ 作り手の個性や想いが光る
大手のビールメーカーは、多くの人が関わって、誰が作っても同じ味になるようにしなければいけません。もちろん、それも素晴らしいことですが、個人でやっているようなブルワーでは、その人ならではの個性がどうしたって現れるものです。
同じスタイル、例えばIPAでも作り手によってその表現は様々です。
多くの魅力的なブルワーたちが作るクラフトビールの中から、自分のお気に入りを探すのは、とっても楽しいものです。
◉ 見て楽しむ
◉ 香りを楽しむ
◉ 味わいを楽しむ
クラフトビールは色味も様々です。製法や麦芽の焙煎具合によって白っぽい淡い麦わら色から、黒に近いものまで多種多様です。缶やビールで買ってきたビールは、是非ともガラスのグラスに注いで召し上がってください。
その際にはグラスの形状によってもビールの味わいは大きく変わります。例えばラガー系のビールには、口の大きなジョッキスタイルがあっています。大きく開いた口から炭酸が程よく抜け、爽快な喉越しを味わえます。
苦味や香りをゆっくりと楽しみたいエール系のビールでは、チューリップ型といわれる口が少しすぼまっているような形状のものが、風味が逃げずにおすすめです。
ラガー系ビールは6〜8度くらいに冷やして飲むのが、すっきりした味わいやキレの良い喉越しを楽しめるといわれています。
エール系ビールでは香りを楽しんでいただきたいので、あまりキンキンには冷やすのはお勧めできません。8〜13度くらいで飲むのが、ホップのアロマやコクのある味わいを堪能できる適温です。
冷蔵庫から缶ビールを出したら、3〜4分置いて、常温のグラスに注ぐのがおすすめです。
どんな風に飲んだって美味しいクラフトビールですが、やっぱり笑顔が似合います!クラフトビールは人生を謳歌するための飲み物です。気取らず、楽しめたら良いですね。
kazuhiko sumida