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絵本の読み聞かせ
私は10年以上、絵本の読み聞かせ活動に参加している。今までに、幼稚園、保育園、小学校での読み聞かせを行ってきた。
なぜ始めたかというと、自分が本を読むのが好きだから……かなぁ。我が子の通う園で親による読み聞かせボランティアの募集があったとき、なぜだか当然のように申し込んでいたんだけど、そういえばそれはどうしてだったんだろう?(今初めて疑問が湧いた!笑)何はともあれそれ以来、趣味として、今は小学校で読み聞かせを続けている。
そんな活動の中で出会った、お気に入りの絵本がある。それが、《谷川俊太郎 作・和田誠 絵》というゴールデンコンビによる、『これはのみのぴこ』という作品。これは、子どもが一人で読むよりも、誰かが子どもに読み聞かせてあげた方が何倍にも楽しめる絵本。
初めのページではまず「ぴこ」という名前の「のみ」(虫)が「これはのみのぴこ」と紹介される。ページを1つめくるたびに新たに文が1つ追加され、読み進めるとどんどん各ページの文が長くなっていく。ぴこが寄生している猫、その猫と関わった子ども、そのお母さん、お母さんが買い物するお店の人……と、新たな登場人物がどんどん増えて連なっていく。
子どもたちは、初めの数ページでその法則に気づく。「同じ文が毎回出てくる…」「なんか文がどんどん長くなっていく…(笑)」「次はどんな人が出てくるんだろう(わくわく)」と、身を乗り出して食いついてきてくれるのがわかる。
読んでいる私も、そんな子どもたちの様子を見ながら、読み方に緩急をつけてわくわく感を煽る。(笑)文が長すぎて読むのに息が続かないということもあり、後半ではそれまで繰り返し読まれてきた部分はあえて極力一息で早口でささっと読んでみたりすると、読んでいる私が大変そうな印象になり、それも子どもたちにとって「面白い」要素のひとつになる。大人が大変そうにしていたり失敗したりというのは、子どもたちの大好物だから。(笑)
読む前にはまず表紙をじっくり見せて「みんな、『のみ』って知ってる〜?」と話しかける。表紙の絵の指の先に"点"で表されている『のみ』について軽く触れるところから子どもたちの好奇心を刺激して、そのあとは前述の通り。
毎度毎度とても盛り上がるし、私も読んでいて楽しいから、ついついこの絵本を選んでしまいがち。今月の読み聞かせでも小1のクラスで読んでみたところ、各クラスの読み聞かせの様子を見て回っていた司書の先生から、「なんであなたのクラスはあんなに盛り上がっていたの?何を読んだの?」と驚かれた。読み聞かせは、盛り上げることを目的としてやっているわけではないけれど、子どもたちと一緒にいい時間を過ごせたらいいなと思うし、子どもたちが楽しんでくれたなら嬉しい。
ただ、この絵本は読むのが難しい絵本でもある。過去に一度だけ、つまらなそうにされてしまった失敗経験もある。ただ淡々と読むだけでは面白さが減ってしまうし、テンポ良く読まないと間延びしてしまう。そのクラスの雰囲気、ノリによっても合う合わないがある。選ぶべき絵本や適切な読み方はその時々で違っていたりもして、だから、読み聞かせも"ライブ"なんだなぁとここ数年は毎回思うし、その波乗り(したことないけどイメージです笑)のような感覚を楽しんでいる。
大抵の場合、私は15分の持ち時間で2冊の絵本を読む。どの本とどの本を組み合わせるか、そして読む順番も意外と重要。でもそれも、クラスの様子を見ながら最終決定する。子どもたちの様子を観察して、読む前にもリラックスできるよう声掛けしたり、他のことに意識が向いている子にも声をかけてみたり(でも無理強いは禁物)。子どもたちとのそういうコミュニケーションも楽しい。
そこにいるオーディエンスの様子を見極めて演者がオーディエンスを最大限に楽しませる工夫をする。なんていうと、たかが読み聞かせのくせに大袈裟だなと思われるかもしれないけど、私はそのくらいのつもりで読むべき絵本を探してきている。私の大好きな、世界一のエンターテイナーである(と私が思っている)音楽家の影響は多分にあると思う。
そんな読み聞かせにおいて、この「これはのみのぴこ」は、私の鉄板ネタで十八番で大好きな絵本なのです。
子どもたちに楽しい時間を過ごしてもらい、安心感と笑顔のある園&学校生活を送ってほしいと願っているし、微力ながらそれに貢献できたらいいなと思って、また次回のクラスの様子を想像しながら15分間の読み聞かせのセトリを考える。わくわく。
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