母からの「言霊」~ことばの記憶~
「お前が 良かごっ しやんせ」
母に言われた言葉・そして今も大切にする言葉。
地元の言葉で「あなたが良いようになさい」という意味。
高校生の時に『三者面談』の帰り、電車の中で母に言われた。
記憶の中では電車の揺れと、その母の言葉だけが映像のない感覚で思い起こされる。
なんとか滑り込んだ地元の公立進学校だったためか、入学後は勉強もせず学年の最後位の10人の中にいた。「自分より成績の悪い奴がいるじゃん」という変な安心感。
高校二年の二学期が終わるころに母親とともに学校に呼び出され「三年になると進路を決めるが、このままの成績では進級も危うい」と担任に言われた。ただひたすら教師の話を黙って聞いていた母。
その帰りの電車の中で言われた「お前が良かごっしやんせ(あなたの良いようになさい)」の言葉。
その後、上位数十人の中で高校を卒業し、大学に進むこともできた。
掛け持ちのアルバイト生活、就職や社会に出て結婚。自分が親になってゆく中での分岐点でも何度か言われた言葉。
母の緊急入院。すぐに手術。積極的治療かどうかの判断に兄妹での意見がまとまらない。かすかな意識の母に尋ねた時の返事もまた「お前たちの良いようにしなさい」。
結果、私は母の痛みを和らげるが治癒を期待しない道を選び医師に伝えた。
選択する時間的な余裕もなく、どちらの選択も覚悟を伴うものだったのけれど、そう、母の期待がどうであったかは判らないが、私はその時、それが良いと覚悟を決めたのだ。
「あなたの良いようになさい」は、決して丸投げじゃ無い。
「想像」「調査研究」「検討」「葛藤」した上で「判断」と「覚悟」を求めるのだと思う。
似た言葉「あなたのために」は真逆の言葉だと思っている。
「あなたのため」は「私(自分)のため」の言いゴマカシ。「あなたのために言っているのですよ」「これは君の将来のためだから」はマウント取ってるだけの上から言葉。
「あなたの笑顔のため」もウソ。
あなたが笑顔になったのを見て、嬉しくなる自分のためですよね。
だって笑顔になったのを見たいのでしょ。なぜ見たいの?自分が気持ちよくなるためでしょ。
正直に「あなたの笑顔を見るのが私の満足」と言えばいいのに。ほら「私の満足」だもの。無償の奉仕の言葉「あなたの良いようになさい」…することでの満足・していますか。
「あなたの良いように」を言える大人を目指したつもりです。
職場でもそんな事業所長や先輩でありたいとしてきたつもりです。
時々、やってない人や違うことしてる人、勝手なことしてる人に、「それって目的とちょっと違ってませんか?」「もっと調べましたか?」と言ってきたつもり。
「お前が 良かごっ しやんせ」…母の仏前で繰り返しその言葉の重さを感じます。自分で覚悟を持って生きているか、と。定年退職して、好きなようには生きていますが、良いように生きているかはなかなか答えを探し出せません。
そんな中でも今週には19回目の母の命日がやってきます。
※「お前が良かごっしやんせ」は南九州地方の口調です。
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