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アスペルガー思考に存在する「パラノイア」

はじめに

 2020年4月に、私は30代でASD(とADHDの併発)と診断された。ASD、所謂アスペルガーの人間には語学に関心を持つ者が多い。私もその1人である。診断されて以降、日本語はもちろん、発達障害に関する英語の資料を読んできた。これまでの実感として、日本語で読める資料が英語資料と比較して相対的に少ないということだ。このnoteの目的は、私が興味深いと思った英語資料を日本語に翻訳し、ASDの日本における理解を更に深めることである。

有益な英語文献を翻訳し日本語で共有

 もちろん私は発達障害研究の専門家ではないし、翻訳のプロでもない。だから、このnoteで公開している情報が、臨床的に・翻訳的に全く正しいわけではない。ASDと診断された者としての、肌感覚として共感・納得できる情報を取り上げ、それを日本語で共有する予定だ。

Paranoia in the Asperger's Mind

 初回は、タイトルが少々過激であるが、youtubeで発見した動画、Mark Huttenさんの"Paranoia in the Asperger's Mind"の紹介である。日本語に意訳するとすると『アスペルガー思考に存在する「パラノイア」』というところか。恐らくHuttenさんは心理学で修士号を取得されている方だと思われる。では、以下に動画の紹介と動画内容の紹介である。

↓動画リンク

マインド ブラインドネス

 多くのアスペルガー又は高機能自閉症(以下ASD)が「パラノイア(偏執病)」傾向にあると言える。その理由として、彼らASDが、所謂「マインド・ブラインドネス (mind blindness)」(他者への共感が困難な状態)であり、非言語的なコミュニケーションを過度に単純化する傾向にあることが挙げられる。

他者の言動を汲み取るのが困難

 ASDは、定型発達者の発言に伴うボディランゲージや表情が意味するものを理解出来ず、定型発達者の言動の食い違いに困惑しつつも、ASDは定型発達者の言動を理解しようと試みる。不運にも、ASDの思考回路では、定型発達者の真意を汲み取ることが出来ず、彼らの言動をネガティブに捉えてしまう --- 例えば、相手が自分を傷付けるため、又は侮辱するためにそのような言動を取ったのだ、と。ただ大抵の場合は、定型発達者には、ASDを侮蔑するような意図があるわけではない。

ネガティブな仮説を基に相手を攻撃

 ASDは一度相手の言動をネガティブに捉えた途端に、「相手が最初から侮辱するために自分を傷付けようとしている」という仮説を立ててしまうASDは認識された脅威に対して自らを防衛しようとする。この防衛反応が、ASDの「怒り」として発現される。このASDの怒りが相手に向う。定型発達者にとって、このASDによる攻撃は、全く正当な理由が無いものであり、ASDが先に攻撃を仕掛けてきたと感じるのだ。ここで初めて、定型発達者は皮肉や否定的な言動などを用いて、ASDに反撃する。この定型発達者の「反撃」を受けて、この反撃を証拠として、ASDは、「相手が自らを傷付けようとしている」という仮説が正しいと判断する。この仮説が証明されたことにより、ASDは他者の言動をネガティブに捉える傾向を一層強固にする。両サイドが自己防衛モードに突入することで、お互いが攻撃し合い収拾がつかなくなる。

破滅的なサイクル

 ASDの他者の言動を理解することが困難な「マインド・ブラインドネス」によって、他者の言動をネガティブに捉えてしまい、他者とのコミュニケーションにおいて、最終的には破滅的なサイクルに陥ってしまう。


     -----破滅的なサイクル----
外部からの刺激 → 困惑 → ネガティブ スピン → ネガティブな反応 → 他者の怒りを誘発 → 外部からの刺激 → 困惑 → ネガティブ スピン → ネガティブな反応 → 以降リピート

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 この破滅的な負のスパイラルにより、ASDは、「どうせこうなる」、「相手はきっとこう思ってる」などといった「自己達成的予言 (self fulfiling prophecy)」傾向を強め、ASDは更なるパラノイアに陥り、人間関係が破壊される。

 それでは、この自己達成的予言を回避するにはどうすれば良いのか?

解決策は?

 答えは、極めてシンプルで、相手に「より明確に説明を求める」ことだ。相手に対して、理解できない部分に関して説明を求めることで、相手とのスペースを作り、極端な反応を起こしたり、誤った仮説を立て、誤った結論に達してしまったりすることを避けることが出来る。大抵の場合は、説明を求められると、定型発達者は、喜んで説明しようとするだろう。 

 相手の意図の説明を求めることで、お互いに対する誤解を避けることが出来る。特にASDにとっては、より正確に相手の真意を汲み取ることが可能になる。より明確に説明を求めることで、家庭や職場での多くの人間関係が破滅から救われるだろう。

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