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『ロキ』シーズン2:苦戦中のMCUに輝く白星

『ロキ:シーズン2』★★★☆。

その名を言うべからざる者・カーンの登場とともに、広げきった風呂敷をくしゃくしゃに捨てて完結した『ロキ』シーズン1。

シーズン2は、そんな前6話を要所で拾い直して、第6話で回収と飛躍と昇華を実現する。言ってみれば、第6話のために作ったようなシーズンだ。逆に言うと、1話から4話あたりまではほぼ意味を成しておらず、キャラクターにもついていけず、展開にも忸怩たる思いを待たされて苦痛だ。

それが、最終2話で極端に上振れする。カギはキャラクターの成長。予定調和で辻褄合わせの連続と化したMCUに一石を投じる、型を破ったキャラクターの変化。必要なのは一作一作が「繋がる」ことではない。「価値ある物語」が「結果的に繋がっている」こと。連続性ありきで物語を成立させない姿勢が求められている。

『ホークアイ』『シー・ハルク』をはじめ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』などにも見られた小品感は、その場しのぎの楽しみに限られる。いずれも良さはあるが、表題のキャラクターが退場し世代交代を主軸とする傾向が強い。『ワンダヴィジョン』は単独での存在感が抜群だが、続きを演出した『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』ではキャラクターに繋がりがなく拍子抜けする。『ファルコン&ウィンターソルジャー』は、キャプテン・アメリカ不在の喪失感を埋める物語としては機能していた一方、次の表題作で価値を維持できるか未知数だ。『ムーンナイト』に至っては出演陣のパフォーマンスを見る分には最高だったが、物語としては破綻していた。

『ロキ』は、他作品と比べても中核へ切り込んだという実感がある。実際は「これが後続の作品群の軸として再配置される」と言った方が正しいのだろうが、どちらにしても、それがシーズン中の怠さをほぼすべて吹き飛ばす。カーンの人格のひとつ、ヴィクター・タイムリーのあからさまに外した演技も、シルヴィの極端な隠居生活への転向も、突発的に登場するウロボロスの平坦なキャラクターも、許せてしまう点が強い。終盤へきて課題のステークス(危険度)がぐっと増すし、キャラクターが捻り出す解への予測がつかなくなってくるからだ。

原作コミックスを読んでいれば知れているだろう結末も、そこへ持っていく過程は劇的で楽しめる。ドラマ作品としては天文学的な制作費($141M)が適額であるかは別として、CG(CGのないショットがなさそうなほど多い)・美術(床から天井まで作り込んだセットの数々に脱帽)・キャスト(看板は2名だが豪華)を見れば納得するしかない。

大枚を叩いたMCUドラマ作として、珍しい成功例だろう。

(鑑賞日:2023年11月14日@自宅)

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