ストーリーテリングの悪しきセオリー
定番、定石、おきまりの展開。物語には大抵、セオリーとでもいうべき「型」があるもの。
そんなセオリーや「型」には利点と欠点があって、その活用には良し悪しが伴ってくる。「型」にならう展開は、語り部に対する安心感や信頼感を与えてくれる。ところが「セオリー通り」でさえあれば観客の心を必ず掴める、とも言い切れない。使えばいいという話でもない。
もちろん、使わないという選択肢もある。
その代わり、レールから外れやすくはなるのだけれど。
使い古されたセオリーは、英語圏では「クリシェ(Cliché)」だとか、「トロープ(Trope)」だとか、あるいは「トライト(Trite)なクリシェ」だとか「ハックニード(Hackneyed)なトロープ」などと呼ばれる。
映画をはじめとした現代のポップカルチャーには、そんな「使い古されたセオリー」が多い。当然、すべてが悪いものとは限らない。けれど、知らずにたどると痛い目を見ることも、ある。
そう、痛い目を見る。
今号のコラムは、そんな話題。
「冷蔵庫に押し込まれる女性たち」の闇 | mofi 209号
スーパーヒーロー・ジャンルの映画にとっては、文字通り「型」破りの作風で大ヒットを記録している続編作品『デッドプール2』。そんな大作フランチャイズが、知らぬ間にある「セオリー」に準じていたことがネット上で指摘された。
思わぬ波紋を呼び込むことになった、その内容と背景とは。
もちろん、セオリーのすべてを知っているからといって、面白い物語を語れるとは限らない。けれど、知らなければいいという話でもない。
ものは使いようだ。
なお映画そのものの出来がすこぶる良かったことは、ご覧になった方ならわかる話。その上で、「#MeToo」が注目される現代だからこそ、タイムリーな視点を与えてくれるトピックだと強調しておきたい。
もう一歩踏み込むと...
これは、海外展開を見越す日本人が心得るべき「感覚」とも通じてくる。明日のコンテンツ・クリエイターたちは、こうしたセオリーに溢れた地雷原に踏み込んでいく身なのだ。最低でも、そんな自覚を持つこと、敏感であること、それでいて縛られないこと。
そのバランス感覚こそ、命だ。
そんなコラムに加えて、三谷がピックしたニュースも盛りだくさん。
暗いニュースがたちこめるなか
「音楽」に希望を見出す|mofi 209号 ニュース
良くも悪くも、女性の存在感に席巻された映画ニュース。ここはトニー賞の受賞結果で気晴らしを。
209号、ぜひ楽しんでみてください。