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『ホーンテッドマンション』商売っ気と茶目っ気のあいだ
『Disney's Haunted Mansion』★★・・。
南部プランテーション式マンションを舞台とする物語は、奴隷制抜きに語れない。建築洋式や文化のすべてが使役者とそうでない者との関係を浮き彫りにするからだ。語るとなると、どこかで重さをオフセットする必要が生じる。
そんな事情と、ディズニーランドのアトラクションらしい娯楽性を両立させること。1995年にロブ・ミンコフ監督、エディ・マーフィー主演で一度は試したものの、当時火付け役となった『パイレーツ・オブ・カリビアン』ほどは振り切れずに店をたたんだ原作の再映画化は、この点に企画立案時最大のハードルがある。
その点で、パーティ制でバラエティを増やし、主軸を「歴史」に偏らせすぎず「生と死」としたのは賢い。愛した人を失う哀しみと、それを乗り越える物語にしたことで大が小を兼ね、芯ができた。軽さは「亡霊の親玉が残りの亡霊たちを苦しめている」という、入れ子状の構図で作り出す。結果、亡霊たちの親玉と立ち向かう以外のホラー要素はすべてコミカルなトーンに振り切った。
パーティが粒揃いになり、スター俳優ひとりにチップを置きすぎないリスクヘッジも強い。ラキース・スタンフィールドの笑いの間はさほどだが、芯を押さえた泣きのドラマは強力。代わりにティファニー・ハディッシュのノリは笑わずにいられないし、ロザリオ・ドーソンの可愛らしい受けの演技が全体をまとめてくれる。ダニー・デヴィートとオーエン・ウィルソンは…浮いている。それでも、スタジオ後ろ盾がある作品だと、金太郎飴的な構成でもキャストで安心させてもらえる。
しかし雑音が多い。その他の笑いの要素にはターゲット、ウォルマート、Yelp、CVSなどなど既存ブランドがネタで頻出。プロダクト・プレイスメントも大量で、引越し会社からキャンピングブランドまで、現代性の押し売りが激しい。そのため地域性と商売っ気が極端に強く、ともすれば集中が削がれる。終盤の親と子のツイストもツイスト然とはしておらず、驚きは確実に足りない。
総じてフランチャイズにできるほどの強度はないが、アトラクションらしい雰囲気を味わう映画としては十分だろう。大量消費映画としては落ち度が少ない。商売っ気を飲み込めば楽しめる一本。
(鑑賞日:2023年11月8日@機内)