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ヤマト醤油味噌の取り組むDXとは?

こんにちは、ヤマト醤油味噌の山本耕平と申します。
本原稿は創業110年の老舗企業に聞く!食×DX推進のリアルな体験談
何から始めた?どう現場を変えていった?
というテーマでTokyo Food Institute様から講演依頼をいただきました(2022年12月19日実施)。
このnoteは講演用に「この3年間、ヤマト醤油味噌はどんなDXをしてきただろうか?」と振り返りつつ、書き起こしています。
講演をお聞きいただいた方は、振り返りのためにご活用ください。
また、初めましての方には当たり前、というお話しも多かろうと思いますが、食の中小企業が「DXは何から始めたらいいか?」を知るためのご参考としてご利用ください。

コロナ禍の衝撃は大きかった

石川県金沢市の小さな港町・大野で1911年に創業したヤマト醤油味噌。
当代4代目の山本兄弟が取り組むのは、風味がよく、健康的で、先人たちの作らなかった新しい発酵食を、と、志高く新商品開発に全力を尽くしてきた。
おかげ様で多くのご支持を得て、金沢の個人のお客様から飲食店様を中心に、首都圏から国内外20ヶ国を超えるお取引をする、従業員50名の食品製造メーカーとなりました。

そんな地方中小企業にとってのコロナ禍は、大きなインパクトでした。
BtoBの主要顧客であるホテル・レストラン・業務用給食などは休業を余儀なくされた上に、売上の10%以上を占める輸出先の飲食店の方々もロックダウン。
ヨーロッパの契約倉庫では多くの商品が賞味期限切れで廃棄。
BtoCの主力である、金沢の4店舗の直営店の客足は80%減。
いわば、経営を支える柱のうち3本も4本も倒れた状態。
しかしこの難局も、必ず乗り切ると決めて、計画をして最善を尽くしました。

職場が変わるチャンスととらえた

つぶれない会社にしたい。
最高の顧客体験を提供できていて、お客様や従業員が「あなたがいてよかった」「いなくちゃ困る」というよい会社でありたい。
そのためには、力不足を感じることが多々ありました。
最初はDXを考えていたわけではありません。
コロナという逆境を、職場がよくなるチャンスだととらえて、さまざまな取り組みをスタートしました。
2020年までの職場の現状は次の通りでした。

  • 製造部門は別として、販売部門として国内営業部5名、貿易担当2名(うち1名は国内営業と兼任)、営業事務3名、WEB・デザイン担当として2名、直売部門は販売スタッフ約20名と店長3名、それに経理・総務で2名の体制。

  • 社内のWEB・デザイン担当は、保守業務が主で、制作については広告代理店のデザイナーが主に行ってきた。外注なのでノウハウが自社に蓄積できない状態。

  • 「人に仕事がつく」の典型で、仕事が出来る人に業務が集中しオーバーワークを引き起こしたり、上司からの指示がないと仕事を進められない非効率なマネジメントスタイルでした。

  • 例えば、経理・財務担当者が、総務・人事と、通販と小売部門など別職種の人出が足りない箇所を兼任してやりくりしてくれていたりと、明らかにオーバーワーク。インハウスデザイナーも、年末年始やイベント前など制作の仕事が集中する時期と、そうでないときの落差が激しかった。

  • マネジメントが職場にITを導入してきたが、実際の現場感覚では使えなかったり、使うことでむしろ全体では手間が増えたりと(FAXの自動仕分けなど(そもそも留守電とFAXが当たり前の受注形態という古い食品業界))と、商奉行/勘定奉行クラウドやチャットワークなど、そこそこ使えるツールが混在していた。

  • Webショップの運営(本店・楽天市場・Amazon)は、地元のお付き合いの長い広告代理店に委託して広告を出稿していた。この契約が適正か判断できるノウハウがなかった。オンラインショッピングや通販の専門家が社内人材にいなかった。(ノウハウ蓄積が出来ていない)

  • 磁気式カードタイプの顧客管理、POSレジなど、ハードウェアはそろっていたが、せっかくのご案内などが出来ていない状態だった。

  • 最も影響力のある媒体は、社長や私個人の「Facebook」で、会社としてのブログやInstagramやTwitterの運用はしていなかった。「ヤマト醤油味噌」としての指名検索が全体のアクセスの90%以上だった。新規顧客が知る経路が明確でなかった。

  • Google Mapのレビュー件数は10件程度だった。(どれもおかげさまで、良いお声ではありました)

優秀な人がぐいぐい引っ張る。
中小企業の良いところであり、どうしても弱みになってしまう組織でした。

1年目に取り組んだこと(2020年)

金融機関と連携して経営的な運転資金の確保の上で、今すぐにできることから取り組み始めました。ITに関することも、アナログなことも、基本的に手探り・体当たりの時期です。
まずは、「止めるべきこと」が無いかを確認し、「止めるべきことを止めてから、新しい施策」を実施しました。
資源がない中小企業は、常に「選択と集中」です。
このときは、まだ組織づくりには全然目が向いていなかったころです。

  • まず、効果が見られないと分かった契約・広告を一切やめた。これにより年間500万円以上の経費削減効果があった。コロナ禍でもあり、ネットショッピングは昨年同月比150%を常にキープしていたので集客や実績への悪影響はなく、広告削減は利益確保に貢献できた。

  • Webショップ・小売店事業の担当責任者に抜擢されて、お得なおまとめ買いや定期購入をスタートした。Webと小売を、走りながら学び始めた。

  • メールマガジン・ブログのライティングを始め、InstagramとLINE@の運用を私と社員の二人でスタートした。社員と一緒に「10日間、糀でリセットプログラム」を実践して、毎日糀を食べる効果をインスタ上でもライブ配信でPRした。広告に頼らないことを意識して、SEOのブログをWordpressで構築した。

  • これまでお付き合いのあった飲食店28店舗様との合同企画「元気回復ドライブスルー」にて、発酵食美人食堂®のお弁当を販売開始。DSGメガワールドさんの駐車場をお借りして、ドライブスルーでお弁当販売するというもの。このときはじめてホームページを自主作成し、出店者の飲食店の皆様との絆が深まり、これがのちの思わぬ連携にもつながった。

  • 小坂裕司先生(オラクル・ひとしくみ研究所)の勉強会にて、ワクワク系マーケティングを学ぶ。「売上をつくるのは、商品だけじゃない、お客様の行動だ」うんうん、その通りだと思い、お客様が楽しくお買い物したくなるような店づくり・Webショップづくりに着手。絆を深められたらと、これまでの常連のお客様への感謝のお手紙を書き始める。

  • Webマーケティングの書籍を30冊以上読み、オンラインショップの経営を学べるセミナーを10件以上受講して、この人は!という先生の開催する勉強会に、社員5名と共に受講した。

  • お弁当の共同開発。先だってのお弁当販売の企画でもご一緒した、お得意先のお惣菜・お弁当屋さんと、腸からの健康を考えた「糀べんとう」の開発やPR。お客様との協業の取り組みを紹介できるブログをWordpressで構築し、紹介を始めた。

  • 売上にはつながらなかったものの、コロナ禍で開店休業状態だったとき、スタッフたちと一緒に、近隣にビラ配りをしたりもしました。んんん、知人のお宅にビラを投函していたり、今思い出しても胸が痛い。お客様が来ないというのは、本当に苦しいものです。

  • 金沢市内のホテル経営者さんと連携して、首都圏の大企業人材をターゲットにしたワーケーションプラン滞在の開発も行いました。こうした企業同士の連携が、面白そうだと気づいた経験でした。

2年目に取り組んだこと(2021年)

Webショップへのアクセスは28万セッション(20年)から58万セッション(21年)に増えました。
まだコロナ禍の行動制限の影響は大きいものの、月によっては2019年並~それ以上の水準に回復するときもありました。
自分自身は走ることは苦にならないが、それについてきてくれているメンバーには疲れが出てしまっていました。

Webショップやお店づくりの制作の過程で、特にここ2~3年以内入社のメンバーに対して、自分の指示がきつく聞こえてしまうことが増え「一体、どうやったら伝わるんだろう?」と、すれ違いに感情を乱されることも。
お客様に発信するメールマガジンやブログの質を高めるために、文章の「てにをは」にまで口を出さなければならない、マイクロマネジメントになってしまう自分が本当に嫌になりました。
3年以上勤務のインハウスデザイナーの離職もこの時でした。

そこで異業種の知人・友人に相談しました。
100名規模の食品製造業の経営者さん、10名規模の行政書士さん、元リクルートや元ディズニーなど大手の人事部出身や元教師などのバックグラウンドをもつ知人・友人に頼り、組織作りの大切さを学んだり、1ON1ミーティングの方法や、アンガーマネジメントや、「箱」について学びました。

そのうち、率直に、内面を聞かせてくれたメンバーのおかげで、自分自身の内面も、徐々に変わってきたように思います。また、必ずしも社内メンバーだけでなくとも、システム構築やIT化などは得意な方に任せてみるというのも一つです。任せる上で最低限の勉強は必要になりますが

特に、コロナ禍においても日ごろ訪ねてくださる常連さんの温かい存在と、会社を大切に思ってくれるメンバーの存在の両方が大きかった。
ヤマト醤油味噌という、この会社があったことで、社員・お客様・お得意先様に、すこしでも幸せが増えるような組織にしたい、という思いが強くなってきました。
ささやかではありますが、毎月、常連のお客様へのお手紙を商品に梱包するようにしていたのも、この時期から始めたと思います。

  • これまで会社に存在しなかった「人事理念」を新しく作り、OJT中心だった研修と並行して、座学の研修を増やしたり、週次の振り返りのミーティングを取り入れ、チームで成長できる機会を作った。「人事理念」については、代表の許可を得て、経営計画書にも記載できた。

  • 「やりがいを持って、いきいきとはたらける組織づくり」を目指して。

  • 人事理念の構築のためには、「人事評価制度のつくり方」と、安宅さんの名著「イシューからはじめよ」を参考に、仕事の良きパートナーである製造部長と繰り返し議論を重ねて決めた。

  • 「心理的安全性のつくりかた」と「自分の小さな「箱」から脱出する方法」は、書いてあることは真似出来るようですぐには出来ないので、繰り返し参照して、よい職場にしていきたい。

  • 手を挙げて率先して取り組んでくれたメンバーがコツコツと自ら作って、Kintoneによる社内発注システムが完成した。手書き発注書がなくなり、転記の必要性が無くなり、社内の伝達ミスが激減した。得意分野をいきいきと発揮するメンバーがとても頼もしい。

  • Kintoneで営業管理アプリを自作するなど、社内の活用を進めた。

  • Webショップの運営の研修の結果、お客様にとっての良い/悪い、が明確となり、Webショップの運営はほぼすべて自社で運営できるようになった。

  • Lancersの活用、石川県とリクルートの紹介による副業人材の派遣制度の活用、社外の専門家メンバーとの協業をする場面を増やした。ヤマト醤油味噌らしい業務提携について走りながら学んだ。正社員であれ、プロジェクト単位の社外チームメンバーであれ、この会社があることで幸せが増やせるようなお取組みにしようと意識的になった。

  • Kintoneで販売部門の整備が進んだことで、製造部門にもそれを広げようとしたが、反対を受けた。それぞれのペースで行こうと思いなおし、一旦こうしたIT化は販売部門で止めておくこととした。

この年の後半に、DXの師匠と言える常盤木さんと出会えた。初めてお話しを聞いた日に頂いた話は印象的だった。

  • 仕事の生産性を高める目的は、当たり前だけど、経営者が良い思いをするためじゃない。例えば、仕事の効率化で、きちっと17時定時に仕事が切り上げられた分、残業せず、子どもを待たせずに保育園に迎えに行けて、美味しいご飯を食べさせてあげられる。絵本を1冊でも読み聞かせ出来るような心の余裕が出来る。生産性が高まって、余裕が出た分は、従業員の休暇取得に充てたり、利益として余剰資金が出た分はチームで分配して、海外だったり国内でも旅行に出て、プラスアルファの体験ができて人生の価値を感じられる。業務時間が定時の中だけど、売上が上がって、お給料も上がって、関わる従業員が「あー、ここで働けて良かったな」と思える。こうしたことが本当のDXだろう。薄っぺらいDXは嫌いだ!

めちゃくちゃ同感でした。
ただ、思うような休暇を与えることが出来ていなかったり、給与UPの水準については、本当に痛いところを突かれた、とも思います。
人事理念を、絵にかいた餅にしちゃならない。
こうしたエモくて熱い講義を受けながら、学ぶノートを欠かさなかった僕に、常盤木さんが突っ込んでの一言。
「今からDXをやろうというリーダーが紙と鉛筆じゃダメだよ笑」
そりゃそうだ。
変えられるところから変える!
と考えていたのでなんでも素直に変えていきました。

  • Miro オンラインホワイトボードツールの活用

  • Asana オンラインタスク管理ツールの活用

  • iPad 全般的に業務に活用

なお、当方超初心者のiPadの仕事術については、次のYoutubeが参考になりました。この2つのチャンネルに限らず、コロナ禍のときはYoutubeの発信者さんから勉強しまくったように思います。

3年目に取り組んでいること(2022年)

「やっぱり、ヤマトさんじゃなくちゃ」と喜んでご指名いただける顧客満足を目指して、いきいきとやりがいをもって働ける、ESとCSが高く両立した職場を目指していく。

  • CS研修の実施で、さらにメンバーを選抜し、当社の顧客満足を引っ張ることができるCSリーダーを5名選出。

  • 百貨店などの店舗で一般的に教わるマニュアルではなく、ヤマト醤油味噌の経営理念にもとづいた、私たちらしいオリジナルの接客の指針を、CSリーダーとともに構築を始めた。

  • 磁気カードから、会員制アプリへの移行。紙カードを段階的に廃止したが、お客様の利便性のために一部カードタイプも継続しています。

  • 得意な業務に専念できる体制づくり(お客様と接することに集中できるようWeb予約づくりの準備中)

  • チャットワークの活用(外部チームとのメール連絡を廃止)

  • Touch Point BIの活用(顧客アンケート機能の活用)

  • よろず箱の設置(従業員向けアンケート)

  • SNSフォロワーさんや口コミ件数が増えました(Googleの評価★★★★☆4.3(236件))

具体的なおすすめツール・サービス集

DXのXとはトランスフォーメーションで、たんに既存のビジネスの付加価値を上げる、ということではなく、そもそものビジネスのキャッシュポイントを変える可能性のある取り組みだったり、ある地域の衰退を無くするような本質的な企業同士の連携プロジェクトだったり、出会わなかったはずの人たちをITが越境してつなげて新しい取り組みを生み出すようなことだと思っている。
だから個別最適をするようなツール・サービスを紹介しても仕方ないのだけれど、それでもこれだけはしておいては?ということもあるので、一部ご紹介をします。

  • Kintone(社内の発注業務から営業管理まで、自作で結構幅広くできることが多いので、一度Webだけでも見てみると良い)

  • チャットツール(社内メールは廃止。ルール決めでコミュニケーションの促進を。社外メンバーとの協業にも有効。チャットワークやSlackなどで可。)

  • 製造現場にPCモニターを設置(社内連絡がスムーズに。内線やFAXで、相手の手を止めないこと大事)

  • Touch Point BI(特に、顧客アンケート集計機能。今後、日報業務や朝礼活用にも)

  • Asana(オンラインタスク管理ツール。自分のタスクを見れる以外に、メンバーのタスクを見て、助けに入れるのも良き)

  • ホワイトベース(オンラインで購入できるきれいな絵葉書はここから購入するのがオススメ)

  • クリフトンストレングス(得意を活かすチーム作りのために、自らのもつ34の資質を見える化できる。自分の強みを人のために活かすことで成果が最大化できる、という発想法もなお良し)

お客様の感動とはたらくやりがいを

ヤマト醤油味噌では、はたらくということを「傍を楽にする」ととらえていて、「労働は苦役」というニュアンスではない。
相手のお役に立てて感謝を得られる喜びの実感に重きを置いている。その相手が、お客様でも、同じ職場の同僚でもそうです。
はたらく自分自身が充足しているから、相手に対しての貢献や、おもてなしができる。余裕のない中できりきりと接客してても、相手に心地よい思いを与えるのは難しいのではないかな。
2022年現在、移動に制限がなくなり、お客様の受け入れ人数が突然増えている。人手が足りない中でも、余力をどうやってつくることが出来るか?という試行錯誤をしている最中です。
目的は、お客様の最高の体験と、はたらくやりがいの両立。

次に目指すのは金沢のDX

自社が成功したと呼べる水準になるまで、まだまだで、3年後に目標としている基準には到達しておらず、おこがましいことは承知の上で、金沢にも夢の舞台を広げる妄想を語ることを許してほしい。
なぜなら、醤油・味噌の醸造には、霊峰と呼ばれる白山の伏流水が欠かせず、金沢大野はその湧き水の恩恵を受けている。また、勇壮な祭り文化が継承されていることも大切な伝統だ。ヤマト醤油味噌は、この創業地・金沢大野のために、これからも根差していきたい。

金沢大野は、醤油醸造業が栄えた歴史的産地だが、現在は10軒を残すばかりで、高齢化で徐々に空き家が増えてしまっている。
金沢では、黒瓦の続く町家が歴史を感じさせる景観も魅力的だが、なんと年間100軒以上も、ただただ取り壊されてしまっているようだ。
大野町は景観保護の特区として認定され、町家の補修・改築には補助金が出るようになったが、それでも1軒、2軒と取り壊されていることに気づく。
日本は人口減少で2060年には現在の人口の30%が減り、たった7~8年後の2030年には労働人口が650万人ぐらい不足すると言われている。
今あるものは無くなるのは、確実な未来予想だ。

もちろん、「ただ座していれば」の話だ。
いまある文化資産を次世代に引き継ぐために、このエリア全体を繁盛させて、適正な利潤を得て、それを地域のために再投資したい。
世界でここしかできない体験をつくりたいと考えている。
それが、「発酵のまち 金沢大野」の構想だ。

  • ファクト:7~8年後は今よりも働き手を確保するのが困難になり、30年後には30%以上に売上が減少する。コロナ禍で味わった痛みと同様かそれ以上のインパクトだ。金沢市は石川県の中では群を抜いて人口が多く46万人を超える歴史都市で、新幹線開業後は年間1000万人を超える観光入込客数を有している。リピート率は58%と高いが、7割以上が1泊のみの滞在で、主に金沢市街中心部へ訪問している。お客様が金沢滞在時に使う金額の平均は約24,000円だそうだ。(データ出典元:「金沢市持続可能な観光振興推進計画」2021https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/32/honpen.pdf

  • 課題意識:プレイヤーである我々事業者は、新たな文化の担い手の育成や繰り返し訪れたくなるような魅力あるまちづくりについて、価値のある取り組みを出来ているだろうか。これまでの歴史にあぐらをかいていないだろうか?

  • 具体的な課題の設定:1泊宿泊している700万人のうち20%にあたる140万人が、あと1泊宿泊したくなる取り組みとは何だろうか?市場の海鮮食べ歩きや、市街地の美術館巡りに加えて、魅力的な+1泊のプランが提示できれば、1泊+食事で約15,000円として金沢市には210億円の貢献ができる。

  • 「発酵」は古い技術であるが、人間と微生物の共生による免疫力向上という機能的な価値や、美味しさを添加物なしで作り出せる官能的な価値、祭り文化や地域の食文化と切り離せない文化的価値など、ツーリズムの主役になりうる。金沢大野は、400年以上前から続く醤油の日本五大産地の一つであり、金沢駅からのアクセスもバス片道30分と良好である。

  • 「発酵」の体験型醸造所であるヤマト・糀パークを一つのハブとして、周辺に「発酵」にまつわる物販店舗や蒸留所、飲食店、ホテルを構築したまちづくりを行う。現在空き家となっている金沢市大野町の、旧醤油醸造所や町家の外観を活かして、内装はリノベーションを施す。

  • 導線として、取組中の事例として「新入社員のワーケーションによる地方中小企業の経営課題を解決しながらの長期滞在(21年~ 旅音)」、「美肌県ツアー(22年 化粧品大手POLAさんによるプラン)」、「発酵ツーリズムにっぽん/ほくりく(22年 金津創作の森)」

  • AIカメラを活用して導線を把握して適切な案内をおこなったり、宿泊や体験を行ったお客様の満足度調査についてITツールを活用して、事業者間で共有して、まちの魅力向上に取り組む。

  • 先行して集客できる施設が、新規施設に誘客する。あるいは、新規施設の誘客から、既存施設(もともと町にある老舗の超美味しい寿司屋、町中華のギョーザ&ビール&醤油ラーメンが最高に美味しいお店、漁師が仕事帰りに集う鮮度が間違いない居酒屋など、ローカルな魅力店)への誘客を行い、エリアとしての活性化を目指す。

  • こうして得た法人の利益は、まずは従業員に給与という形で分配され、地域の雇用を潤す。次に税収として地域づくりに還元される。できれば、魅力的な町家の景観保全のための資金としてプールし、町家で暮らしたい人がわが家を修繕するための費用や町家で新しく起業したい人への支援などに回るのが望ましい形だ。また、利益が出れば、より魅力的なサービス・商品づくりに再投資することが可能となる。

「社内にDXを進めるには何から始めたらいい?」/「国は中小企業にどんな支援をしたらいい?」(講演後の質問より)

お話ししたときに、あくまで中小企業のプレイヤー側から、「私はDXを何から始めたらいいのか?」/「どうやって進めたらいいのか?」という視点と、企業を支援する国側(関東経済産業局)から「我々はどう中小企業を支援したらよいか?」という二つの視点がありました。

前者には、「そもそもDXを始めるという大上段に構えるんじゃなくて、目の前のスタッフが困っていることを解決することから始める」という視点が大切ではないかとお答えしました。
まず、止めても問題ないことは止める(笑)
毎日コツコツと日報を書いてくれていたり、受注/発送業務や、レジ締め業務など、仕事を円滑に進める上で必要なワークは、仕組みやハードを使って、もっと楽にしてあげられないか?を考える。
どれも、儲けのエゴではなくて、「この目の前の人の人生が良くなること」をピュアに考えた方が良いような気がしています。精神論かもしれないですが。そうすることで、きっと共感して一緒に動いてくれる人が社内にも現れます。社内や自分に知恵が足りなければ、どんどん外に師を求めに行けば、必ず出会えます。

中小企業を支援する国側には、僭越なことですが、もっと県/市単位の地方自治体に、資金と権限委譲をお願いしたいです、とお答えしました。
食・農業にかかわる領域の中小企業=ある地域を生産拠点にして働くということです。必ず根差す地域ごとの課題があり、それは国単位よりも地方自治体にとって身近な課題であることが多いです。志ある優秀な地方自治体の行政マン(こういう方が、必ず地方にはいます)が立案する制度の方が、地方中小企業に貢献できる可能性は高い。
そうしたやる気のある地方自治体が手を挙げたときに、国はそれをキャッチして支援すると良いのではないでしょうか。

中小企業の方で、お役に立てることがあれば質問ください

地方中小企業で、似た悩みを抱える方もおいでるかと思います。規模や業種は違えど、「よい会社にしたい」というテーマは共通のものだと思います。何かお役に立てることがありましたら、ご質問やコメントなどお待ちしています。


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山本 耕平 (kohei_yamato)
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