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#104 【書評】貴重な無謀、日本の暁~井深大の私の履歴書~
こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。
井深大さんの私の履歴書のなかで、難局へ立ち向かう姿勢として非常にしびれた「14 小型ラジオ」の章について紹介します。
〇貴重な無謀
まだトランジスターが発明されたばかりでトランジスターに対する一般の認識も少ない頃、ラジオ用のトランジスターは製作不可能に近いほどむずかしいものとわかりなんべんも中止しようと思ったが、むずかしいからこそわれわれがやる価値があるのだ、と思い直してこれに没頭し、世界で2番目のトランジスターラジオの商品化を成し遂げたことに対する井深の文章です。
歩どまり5%、つまり100個こしらえて及第するものが5個になったとき、ラジオの生産に踏み切った。前にも書いたように世界で2番目のトランジスターラジオの 商品化はかくしてできあがったのだが、世界で2番になれるのは当然である。あたりまえの企業家だったらこんなむちゃな計画は立てるわけがない。しかし歩どまりは必ず向上する目算があったので私は思い切って決断したのである。
もしあの時、アメリカでものになってからとか、欧州の様子をみてからこれに従ってなどと考えていたとしたら日本が年間500億円の輸出をするトランジスターラジオ王国になっていたかどうかははなはだ疑わしく、したがって今日のソニーもありえなかっただろうし、この無謀ははなはだ貴重な無謀だったと考えている。
私自身が、今抱えている仕事がキャパを超えている中で、次々と新しい案件の相談きており、疲弊し機嫌を保てなくなっているのですが、この文章が心に刺さりました。
非常に難しい局面でも、必ず状況が好転するという目算を立て、「むずかしいからこそわれわれがやる価値があるのだ」と自らを奮い立たせて、モノゴトを成し遂げるという姿勢は見習わないとと思いました。
あたりまえの起業家だったら立てるわけのない計画でも、必ずできるというスタンスでどうやって実現するかを考え、行動していく。そういう考え方を持つ。匙を投げてはいけない。
後になって貴重な無謀だったと振り返れるような挑戦と捉える。
考え方の引き出しを一つ増やせてかもしれません。
〇日本の暁
小型ラジオの商品化に成功し、全世界へ50万台以上も売ったのを見て、国内メーカーも2年ほどで追いついてきた。
日本は世界最大のトランジスター生産国になったが、たちまち乱売、安値競争になり、値段はどんどん下落した。
そのことに対する井深の文章です。
新しいマーケットを開拓する努力をせず、他人の築いたマーケットに割り込み、ただ値段をくずすだけしか能がないという典型的日本人商法をいやというほど知らされた。
これを切り抜け、振り払うために、われわれは短波用、超短波用(FM用)トランジスターを開発しなければならなかった。おかげで世界最初のトランジスター短波受信機、FM受信機を出すことができ、これがトランジスターテレビにまで進展することになった。過当競争も日本にはよい刺激剤と考えるべきかもしれない。
人がやったというニュースだけで日本では同じものがすぐにできるというふしぎな性質がある。これはそれを作るだけの技術力はじゅうぶん持っていながら、これを思い切って企業化しようという勇気にかけていることを証明しているようだ。すべての分野で日本の技術力に自信を持ち思い切った決断を下せるようになったときこそ真の日本の暁は訪れるだろう。
日本が欧米に追いつけ追い越せで高度経済成長を果たした一方で新たな産業を生み出す力が弱い事を指摘しており、日本の暁はいつくるのかと思わせられました。
また、自分自身にとってもうまく出来る方法が見つかるまではリスクをとった大胆な行動がなかなか出来ていないことにドキッとしました。
そして「他人の築いたマーケットに割り込み、ただ値段をくずすだけ」というのにもハッとさせられました。
弊社もITベンチャーとしてニッチな領域での高付加価値で実績を作り、大手SIerのマーケットに参入していきました。その際は、価格優位性も武器にしていましたが、ここからは適切な価格設定をしていく必要があります。
安易な安売りは利益を圧迫したり、不要なハードワークを強いり、社員の定着率を落とすことにも繋がるため、価格や納期について日々営業と闘っていますが、自分達だけでなくマーケットにも悪影響があるという1つ上の視座からの指摘をいただいた感覚です。
自分の視座を上げ、自分達の技術力に過信でなく自信を持った思い切った決断を下せるように日々精進したいと思いました。
ということで、井深大の私の履歴書の印象的章を紹介しました。
最後までお読みいただきありがとうございます。