The Cosmic Wheel Sisterhood プレイ感想、かつてない選択肢の体験
The Cosmic Wheel Sisterhoodをプレイしましたのでその感想でもと思いしたためております。
まず簡単に紹介なのですが、コズミックホイールシスターフッドはあえて言うのであれば占い版コーヒートーク、という感じのトーキングシミュレーションゲーム。
……と言ってしまえばいいかなとは思います。
自分でオリジナルのタロットを作ったり占ったりとコーヒーに絵を描いたり、バーでカクテルを作ったことがある方なら、あーという感じだと思います。
なんかやたら濁すのは、得られる体験がかなり別種のものと言う感じもありますし、同一視するのはちょっと違うかなという感じ。
少しずつ話していきましょう。
●分岐は多いが1週しかプレイしていないゲーム
以前このゲームを紹介していただいたゲームチャンネルでも言っていたのですが、分岐はかなり多そうなゲームなのですが、その異なる選択を選んだ未来と言うのをあまり見たいとは思わない、と言うのでしょうか。
確かにゲーム的なシステムの関係であまり最終的な結果が変わらないとがっかりしてしまうというのもあるのですが、このゲームの選択肢はその一つで登場人物の文字通り運命を改変してしまうレベルの変化をもたらしたりするので、むちゃくちゃ考えるんですよね。
で、その結果を何回も周回して確かめたいとは思わない。
……というか、考え抜いた選択肢そのものをなかったことにして繰り返すプレイに適しているかというとそうでもないという感じ。
よく1週目が一番思い出に残るゲームって言われるゲームがあるとは思うのですが、これもその一つかと思います。
ただこの選択には今の自分の考え方や精神性がかなり影響してくるゲームとも思っていて、例えば3年後、5年後、あるいは10年、それ以上先の未来、ふたたびコズミックホイールを触れた時自分はどんな選択をするのか、それはちょっと気になったりします。
あるいは他の誰か、実況とかでもいいと思うんですが、他人がどんな選択をしてどういう結末へ至るのか、それも興味があります。(稲葉百万鉄さんが好きなんですがいつかやってくれませんかね)
そんな長期的なことまで考えてしまうような、ディープな魅力があるのがこのコズミックホイールシスターフッドです。
●自分に似てくる(気がする)主人公フォルトゥーナ
主人公はフォルトゥーナという魔女。
占いの魔女で彼女のもとを訪ねてくる人々をタロットで占っていくというのがこのゲームの基本的な流れ。
主人公フォルトゥーナはそれが単体でしゃべったり考えたりするタイプの主人公なので、基本的に性格と言うものを持っている、のですが、なんというか徐々に自分に似てきます。
似てくる錯覚を得るというのかもしれません。
多かれ少なかれ選択肢を多く持つゲームの主人公と言うのは得てしてそういうものかもしれないのですが、このフォルトゥーナの似てくる感は個人的にかなり面白いなと思うほどに似てくる……気がしています。
私のフォルトゥーナは基本的にはやたらと誠実で自分のルールに頑固で、線引きにやたらこだわり、その誠実さで損をして、損をする自分を恨んだり恐れたりしている。一方で嘘はある程度バレなければ人を傷つけなければ許容し、自分に有利な形で嘘をつこうとするしたたかさもある程度ある。自分のせいになるのは究極的には嫌がり、利己的な選択をする。どちらかと言えば選択は全体的に怖がり、本当に親しい人にしか手札をオープンにはしない。
こんな感じ。
他の人のフォルトゥーナもこんな感じかもしれませんが、選択をするほどに自分に似ていくなーと思いながらプレイしている。
まぁそりゃ自分がこうするだろうなーって選ぶんですから似てくるんですが。
これはまるで占いがあー自分のことを言ってる~ってなるのと同じかもしれません。
面白いですね。
完全な余談なんですが、フォルトゥーナのキャラデザ、ベッドに座っている時はそんなに思わなかったんですが、終盤の選挙で初めて正面から見たグラフィックが出た時すごいなんかいい感じと言うか、いやデザインが可愛いんですけど、なんというんですかね、私が選択肢を選んできた魔女はこういう顔をするっていうんですかね。
なんかやたら目線をそらして気まずそうにするのとか、そういう感じがします。
●ダリアとジャスミンとそしてグレーテ
ちょっと具体的に本編触れていきます。
ネタバレもありますので注意を。
フォルトゥーナの親友ダリアとジャスミンですが、個人的にはかなり苦手な二人だったりします。
なんかこう合わさせようとしてくるというんでしょうか、そう思うよね、とか、お前ならそう言ってくれると思ってたんだけど。
みたいな方法を積極的に用いてくる。
かといって私のルートでは最終的にお前が悪いんだ!ってすごい言ってくる。
文化が違う事もありますが個が個であることを意外と許容してくれない感じの二人。
私のフォルトゥーナが選挙に立候補した最大の理由は二人のどちらかに投票するという選択を取りたくなかったから、という感じなんですよね。
本当それが決め手。
どちらかを選びどちらかが関係が悪くなることを選べなかった。
関係性が悪くなるなんてことは無い、ということを信じ切れなかった。
他の理由は後からついてきた感じ。
たぶん私がこういう他人の選択肢を縛ってくるというか、そういう知り合いを苦手としているからだと思うんですが、そこんところ私のフォルトゥーナは内心思っているのか、ちょっと気になります。
もちろん仲の良い知り合いだとは思っているんですが、タロットの秘密やベヒモスの秘密。
私のフォルトゥーナが一番の線引きにしていた二つの事柄についても基本的自分から開示したのは姉と先生の二人だけです。(いやシステム上ほかにオープンにできるキャラクターがいるのかは知らないのですが)
言葉には出すものの内面としてはあまりオープンにしないフォルトゥーナと言うキャラクター。
たぶんうちのフォルトゥーナはそこ辺りあの二人には一定の線引きしているような気がするんですよね。
最後の占いでも私は彼女たちとは袂を分かつ選択をしました。
ぶっちゃけ姉と先生に一番近い位置まで近づいていたのはグレーテだったと思いますから。
初期のことだったので秘密については打ち明けないままグレーテとは過ごしてましたけど、最終的にはエイブラマーのことなんとなくわかってたみたいですし、ダリアを支援しつつもこちらのことも良く見てくれていたように思います。
あのシーン嬉しかった。
このゲームで好きなキャラクターと言えばグレーテなんですよ。
ほんと比べちゃいますが、ダリア、ジャスミンと比べてもすごく話しやすかった。
わたし自身が距離感近い人を遠ざけちゃうところもあるのかもしれませんが、その点グレーテは非常にフェアでありながら、内面は端的にさらけ出してくれる感じで非常に好感が高い。
●好きだったシーン
本当に大好きなシーンを二つ、パトリスの死を占うシーンと、ユーエニアとの昔の思い出を占うシーン。
本当にシンプルにこのゲームの優れたるを見せつけられるというか。
情緒が揺り動かされたというか。
簡単に言葉には出来ない魅力があります。
プレイした方なら解ると思うし、プレイしていないならやってほしいシーン。
ルートによっては無いのかもしれないですが、あんまり言葉を並べても野暮ですし、こんなところで。
●ゲームシステム的な課題と少しの心残り
全体を通して火の要素の強いタロットを使えなかったんですよね。
比較的悪いことが起こるという印象も強く選択を占う際も火のエッセンスの強い選択肢は過激だったり悲しい内容、不幸な内容が多く選びにくかったです。
結果として火の要素のタロットの数は少なく、火のエッセンスも少なく、と言う感じになりがち。
不幸な選択肢を選びたかったとは違うのですが、リスキーになりがちな火の要素には触れにくく、結果ゲームシステムとしてあんまり生きていない部分にしちゃったかなぁというのがあります。
比較的どうでもよい場面で火のタロットがひけたら試して見れればよかったんですが、重要なシーンで火のタロットを使って全部悪い選択肢になったらどうしようもないなと、結局最後まで1回も使えていないタロットが何枚かあったりします。
タロット生成のシステム自体が、枚数を増やしたところで大きな変化が無いというか(もしかしたらエンディング分岐とかに影響があるのかもしれませんが)面白い試みであると同時に、ゲームシステム的にはまだ詰められる部分や、プレイヤー側が飲み込み切れていない部分があったような気がしています。
●選挙と最後と多分岐ならではの粗
このゲームの後半をがっつりと占める選挙パート。
まさかアメリカ大統領選挙と衆議院選挙を意識しながらのプレイになるとは思いませんでした。
私の場合は序盤でもうカードをひいちゃって勝利を確定させた上でプレイしていたので、確かに心の安定はありました。
ゲームとしても比較的手堅くやっていたので、まぁほぼほぼフォルトゥーナ一択みたいな形で後半は進んでいましたし。
あれでめちゃくちゃな選挙戦してたら本当に勝てていたのだろうか……。
通して高評価なゲームと思っているのですが、最終盤については少し評価がぶれるかなと言う気はしています。
全体的に与える影響が大きすぎるせいか、少し矛盾がある感じの展開になっちゃうんですよね。
占いで確定させた要素と占いで確定させた要素が若干ながらミスマッチを起こして矛盾気味になってしまったり、いわゆる代償と占いの結果が矛盾したり、そういった部分がわずかながら発生していました。
また選挙についてはコヴンの崩壊と合わせずに完遂したかったかなぁというところもあります。
なんかすべてのハチャメチャが同時に発生してうやむやになったというか、そのせいで描写が少しわかりにくかったり、全部バタバタの最中で大事な秘密をオープンにしちゃったし、最後で私が利己的になってすべての元凶はサイプレッサに投げちゃったし、ジャスミンダリアはむっちゃ責めてくるし、私は私でなんか恐るべきパワーですべてをまるっとごりっと解決するし。
選択をすることそのものに意味があり、正直最後が少しふやふやになっても得るべきエッセンスは道中で得ているゲームなのですが、画竜点睛を欠く、ほどではないものの、もう少しエモい軟着陸を決めたかった。
と言うのが正直な感想。
まぁただこれも選択肢の上での振れ幅のひとつ。
たぶんあそこの流れは序盤の選択で結構変化したと思うし、内容もガラッと異なるのかもしれないので、あくまでも私がたどった運命ではこうなったという感じ。
私の選択の結果かもしれませんし、これこそが私の初回プレイコズミックホイールの結末となります。
ほかの選択肢を見てみない限り、観測しない限り、無限の可能性を持ち続けるのがこのゲームであり、それを安易に観測しないことに価値を見出せるだけの選択を行えたことがこのゲームの価値になります。
本当に過去類のない選択を行えるゲームだったと感じています。
●お気に入りカード
スクショが共有画面になってなかったんですが(よく見たらアイコンもかぶってた)、撮り直すのも面倒なんでそのままで。
●最後に
エンディングを最後まで見て正直ゲーム中に作者たちのメッセージを入れ込むのは邪道なのではないかと感じる場合が多いのですがこのゲームでは少し違う事が起きました。コズミックホイールにおいてはパンデミックの最中にこのゲームを開発し、そしてこのゲームのプレイがプレイヤーに何かを与えることを願った開発の方々の気持ちと、この時世、ゲーム性とが非常にマッチしており、なんか自然と涙が出てくるというか、感動してしまうというか。
荒れた世の中にこのゲームを生み出したことそのものがゲームの一部になりえるというか、なんか作り手たちの想いの中をちゃんと歩いてこれたのだなというパスをちゃんと受け取れた感じがあり。
なんかまぁ、凄く良かったですよね……。