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ファミレスを享受せよ、ファミレスを享受し過ぎた者の末路というか感想。
ファミレスを享受せよをプレイしたのでその感想でも……。
と思ったんですが、思ったより書くことがない。
全体のボリュームもそこまで多いわけでもなく、不満感が出るような部分もあまりなく、ほぼほぼ作品として完結してしまっており、正直、あんまり、書くことがない……。
ただなんかすごくまとめたい。
そう思いながらお風呂に入っていたんです。
ファミレスのことを考えながら。
そしたらまぁ、少しずつ言語化出来てきたというか、言語化できていない自分と向き合えたというか。
なんか自分の気持ちをアウトプットしないといけない作品と言うか、そういう気持ちにさせる作品だったんですよね。
今回はそこ辺りの心の動きや、なにが良かったのかと言う部分についての言語化をメインに語れればと思います。
●ゲームとしては
もう正直大満足です。
今年の自分的なランキングに入る名作だなって感じ。
分類としてはクリック形式のテキストアドベンチャーでしょうか。
永遠のファミレスに捕らわれた人々との会話を続けつつ脱出を目指すようなゲーム性です。
取り立てて珍しいシステムではない一方でその特異的なシチュエーションは一部の人間を強烈に引き寄せることになるでしょう。
●なぜ今ファミレスを享受したのか
なんか享受するなら今だな、ってなったというか。
本当にそんな感じ。
ほんと月が綺麗だからファミレスでも行こうか、みたいなノリ。
強いて理由を上げるなら並行してプレイしてたゲームが厚めのPS5アクションで緩いテキストベースのゲームもやりたい、ってなったり、あとは某実況者の「実況を見る前に実際に自分でやりたいインディーゲーム枠」のゲームがまた増えてしまったので、今のうちに消化したいとか、そういう感じですか。
やりたいゲームみたいなのは常に多数ストックしているんですが(ストックし過ぎて溢れてるんですが)、なかなか新規に触れにくいというか、新しいゲームは始まってしまえばぐいぐい遊べるんですが、始めるまでにちょっとカロリーが必要なんですよね。
ただ時々、あ、今なら新しいゲームできそうな気がする……。
ってなる時があって、今回がそれでファミレスを享受することになりました。
●雑談パートの心地よさと、ほんのちょっとの失速
ここを文章化しておきたい。
雑談パート楽しいなぁってやっていた後にツェネズの持ってた文章のパートに入った際のちょっとした不満感と言うか、ほんのちょっとのがっかり感。
これを言語化するのであれば「一種のSCPみたいな完全に未知の空間に迷い込んだのではなく、ある程度知的存在によって管理された空間に迷い込んでいたことが分かったことによる落胆」
と言った感じでしょうか。
どちらかと言えば前者の本当に意味の解らないファミレスにて永遠を過ごしたかったという気持ちが、たぶんあったんですよね。
たぶんある程度システム的な脱出の解法があると判明しちゃったことによるがっかり感ですかね。
ただ後々出てきた設定が色々と魅力的な物ばかりだったので、結果的にそれで作品評価が下がるようなことは正直無かったかなと言う感じもあります。
●魅力的なキャラクターと感じていた魅力の正体
これはとても酷いことを言うのかもしれないのですが、私はファミレスに居たキャラクター、特にセロニカ、ガラスパン、王さまの三人がすごい好きで……。
正直ツェネズはあんまり最後までそこまで好きにならなかったんですが、なんかよくよく考えているとその理由が解った気がするんですよね。
例えばファミレスにいるセロニカ、理論的なんだけどなんかちょっと虚無ってて世捨て人感があるTRPG好きなセロニカは好きなんですけど、記憶を取り戻した処刑人に復帰したエンディングのセロニカは実はまぁ、そこまで、言うほどは好きでは無くて。
ファミレスにいる極限まで摩耗しててなんか話し方がおかしくなっちゃってるガラスパンは好きなんですが、地球に戻り主人公とファミレスで楽しそうに話すガラスパンはほんと悪いけどなんかそこまで魅力的じゃなくて。
ファミレスにいる今にも消え入りそうだけどそれでも話しかければ凄くやさしい地が出てる王は好きなんですが、エンディングで新しい生活を手に入れた王さまはまぁ……普通かな?
基本的にファミレスと言う異常空間で完全に摩耗したというか、角が取れたというか、悠久の時間の中で波にさらわれて意識のある流木みたいになった3人と、その交流が好きだったんですよ。
まぁ、セロニカさんはどっちかと言うと錠剤による変化ですかね。
気づいてしまいましたね。
あれですよ、モニカ空間です。
ああいうのやっぱ好きなんですね。
ツェネズは元々そういう人間(人間じゃないけど)だったというか、別にファミレスでああなったわけじゃないんですよね。
そこがほか三人と少し違うというか、別に嫌いじゃないんですけどね、そんな大好きって程でもないって感じで。
まぁ、結局割と全キャラクター好きなんです。
それはなんというか、全員わりとクソ真面目で地の性格が温和で善性の生き物と言うか、そういうところが自分とマッチングするというか見ていて触れていて一切のストレスが発生しない、ほんともっと言えばその奥にいる作者の持っている性質が私とマッチングしたから全くの不快感も無く、するするするとこの異様な作品を楽しむことが出来たというか。
そんな感じに思います。
月の民とかもそうなんですよ。
むちゃくちゃほんわか種族というか。
前述のように、超テクノロジーを持ってる存在が示唆された辺りでちょっとうーん?って思ったんですが、そこで出てきたのがこいつら。
地球人化したセロニカが超テクノロジーのわりになんか幼稚感がある設計しているみたいに言ってたように、なんだろう、言語化すると、素朴なんですかね。
愛おしい存在です。
●おおむね4種類のエンディングと途方もない恐怖
たぶんこれぐらいの分岐があったような気がしています。
セロニカを記憶を戻してからグッドに行かないパターンがちょっとレアですかね。
一番好きなのは王さまのまま現代に来た王さまと、セロニカのまま地球へ戻ったセロニカのパターンのエンディングでしょうか。
割と一番のプレーンエンディング?
これは想像力が暴走したただの妄想で作者様の意図とは全くの別物だとおもうのですが、グッドエンディングはなんかうまい事解決したように見えるバッドエンディングなのでは……と感じるときがあります。
実のところグッドエンドに到達したときになんか言い知れぬ途方もない恐怖感が続きました。
それが何かと自分と対話していた所これはいわゆる永遠性の喪失にあるなぁと至った次第。
16桁のパスワードを総当たりで解いて悠久を無為に過ごした人間がその記憶を維持したまま100年も寿命の無い、日々衰えていく生命として第三の生を始めたら。
たぶん恐ろしい速度で過ぎる時間に心があっという間に壊れる気がしています。
本編では思いのほか一日を長く感じると言ってはいたんですが、なんだろう、一緒に疑似体験していた私本人がそうはいかない状態になったというか、それを直感的に感じたのか、めでたし感を感じつつも怖くて怖くて。
それがグッドエンドの感覚。
勿論王さま良かったね、とかもあるんですがセロニカが言っていたようなすべてを上手くやったエンディングとは個人的には思えないのがグッドエンディングだと感じてるんですよね。
王さまにしても正直二人きりの永遠ってのはどうなんですかね。
ファミレスはなんかそこまでデカい感情がない人が沢山いたから何とかなった感もある気がしているんです。
人間はクソデカ感情を持った二人で永遠を過ごせるものなのか……。
あと、クラインもクラインであの性格なので、王との再会を素直に認められるかちょっと解りません。
エンディングで二人並ぶ姿は図書館の時とは少し離れていたようにも思います。(クレジットが出てくる演出の都合もあるでしょうけど)
●ファミレスを享受し過ぎた者の末路
結局のところファミレスでの会話が一番心地よかったのかもしれません。
もちろんこれは一部のゲーム性や物語の流れを否定するものではないのですが、このゲームの特色でありその真骨頂である異様なファミレスでの生活と言う部分が一番魅力的であったというのは致し方ない部分なのかもしれません。
人間関係も特殊なんですよね、全体が近づきすぎない距離を維持しようとしますし、結局はそれが一番心地よく、また関係が悪くならない距離感になる。
人って結局それが一番良いのかもしれない。
王さまに感じた不安感もそこにあると思います。
ほどほどに近かったり遠くなったりするのが良いのかもしれない。
それが心地よい。
いや、実際にはムーンパレスは心地よくはないのかもしれません。
ただ居苦しいわけでもなく。
あるいは無に近いかもしれない。
ただそれが途方もなく愛おしかったというか。
ある種そういう生のあり方に憧れるというか。
まぁ、実際にムーンパレス行きになったら簡単に発狂するかもしれませんが。
●steam版とイラストギャラリー
多くを語ることはしないんですが、
実ははじめ無料のブラウザ版をやっててクリアして後から追加要素がある事を知ったんですよね。
失敗しました。
急いでsteamで購入したんだけどクリアしたばかりでまた同じ内容を触れる気があんまり起きない、そんなこんなで時間を費やし、ようやくギャラリーを見てその後記事をまとめています。
2週目はファミレスRTAでした。
RTAするとどうも一部会話の整合性が崩壊するっぽいですね。
ギャラリーについては各所で言われている通りいわゆる設定資料集に近いです。
普段莫大な情報量のゲームとかを触れていると情報量としてはそこまで密密というほどではないのですが、まぁ正直買って見ない理由はないですよね。
と言う感じ。
良良の良。
作者の持つキャラクター設定とはこういうモノを作るんだという感覚に惚れるというか、あの短い物語でここまで奥深く人間性を語れるモノなんだなと言うのを痛感します。
ラーゼのキャラデザも見れますよ。
後は設定資料見て好き度が上がったのはツェネズだったりしました。
というか基本的にはツェネズも好きになるタイプのキャラだと思うんですが、ほかが好きすぎたというか。
本編ではツェネズのバックヤードはどちらかと言うと月の民の設定とリンクしていた部分が強くてツェネズ本人のメンタリティについて語られる場面はほかのキャラより少なかったようにも思いますし。
設定資料で語られた部分、ここでは話せませんがむっちゃ好き。
ああ愛おし。
サントラも勿論買いました。
CD-Rに焼いてリピートしています。
ファミレス、享受していますよ。