この社説が気になる(2024.9.11)
今日の気になる社説
前日の朝日と毎日に続き、長崎での「被爆体験者」への被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟に読売と日経が触れた。
先日毎日が言及した際に注目した、着床前診断の拡大については、朝日が二本分の字数で言及した。適用拡大に慎重な点は毎日と同じ。生殖医療と生命倫理の検討を所管する公の機関の設置が必要、との日本学術会議からの提言を引用している点にも目が留まった。
注目するのは、教科書のデジタル化に警鐘を鳴らす読売の一本。
文部科学省がデジタル教科書の利用を推進する中央審議会のワーキンググループを立ち上げ、そこに示した案の中に「紙をデジタルに置き換える」ことも含まれているという。
これまでの検討では、音声や映像で子供の理解を助ける役割がある一方、深い思考や記憶の定着には不向き、との結論から限定的使用にとどめている。それが2022年のこと。わずか2年で紙との併用からデジタル主体に舵を切ることを問題視している。
はじめにデジタル化ありきの議論は避けてもらいたい。一方、私を含めて一定以上の世代は、社会に出る前の勉強でデジタルの教材を経験していない。そのため、自分が経験した紙の教材で学習するのがいいんだ。それが変わることに対する抵抗をしてるだけの理論武装もやってはならない。
私自身が小学校中学年の子供を持つ身である。わが子が持ち歩く教材がどんな姿になるのか、引き続き注目していきたい。
[抜粋]教育は、人を育てる、極めて人間的な営みだ。その基本となる教科書を十分な検証もせずにデジタル主体に切り替えては、将来に禍根を残す。デジタルはあくまで紙の教科書を補助する役割として、相乗効果を図るのが望ましい。↓
その他の各紙の社説
[抜粋]希望者を無条件に被爆者と認定するのは難しいとしても、80年近くが経過した今、健康被害に苦しむ人に高度な証明を求めるのは酷と言わざるを得まい。↓
[抜粋]被爆者援護法は、原爆という特殊な戦争被害について、国に補償や救済の責務を課す制度である。にもかかわらず、対象となる区域を機械的に線引きし、救済範囲を狭めていることは、法の趣旨にもそぐわないのではないか。↓
[抜粋]専攻医の誘導先は東京の近郊に集中し、東北地方など遠隔地にはあまり波及していない。医学部の地域枠の効果も若い医師に限られる。経験を積んだ中堅・ベテラン医師の偏在対策はほぼ手つかずの状態だ。↓
[抜粋]中国と北朝鮮の脅威は高まっている。中国は沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)を狙っている。日本有事に容易に転化し得る台湾有事も強く懸念される。平和を守るため日米の抑止力が不可欠であるという現実から目をそらしてはならない。↓
[抜粋]今回の快挙は、国際棋戦に備え国内トップ棋士らでつくるナショナルチームが切磋琢磨(せっさたくま)する態勢を強化したことが一因だ。台湾出身の許家元九段が研究パートナーとして同行したのも支えとなった。↓
[抜粋]ポリオ感染は人災とも言える。イスラエル軍による攻撃で社会基盤が破壊され、住民の9割が家を追われた。避難民キャンプは衛生状態が悪く、国連などから感染症の流行を懸念する声が上がっていた。↓
[抜粋]歴史認識問題を抱える隣国と良好な関係を維持するのは簡単ではない。だが米中対立の激化など東アジア情勢が厳しさを増す中、協力を強化することは日韓双方の国益に資する。↓
[抜粋]着床前検査は、いずれ親が子どもの才能や資質を選ぶ技術になる可能性を秘める。最初は限定的に認めたつもりでも、なし崩し的に広がってゆく「滑りやすい坂道」の典型だ。道をすでにくだり始めているのかもしれない。↓