シンプルに 簡単に

かつて「暮らしの手帖」の編集長を務められたことのある松浦弥太郎さんが、著書の中で、「シンプルに、簡単に」と題して、次のことを書かれている。

複雑さがクオリティを高めるというのは錯覚です。
時間をかければ室が上がるというのは誤解です。
大切なのは、余計なことをしないこと。

「しごとのきほん くらしのきほん 100」松浦弥太郎 マガジンハウス

これは、「たくさんの機能がついていると、すごい」とか「難しい言葉を使って話した方が、信頼性がある」といった考えへの問題提起として投げかけられた言葉である。

言葉に関していえば、信頼性、とまではいかないが、見栄えや聞いた感じが格好良いかな、と思い、実は意味を十分に理解しないままに専門用語や日本語訳がしっくりこないカタカナ言葉を使ってしまいがちな傾向が自分にも思い当たる。

で、「何それ?」と反応されたときにうまく返すことができない、ということもしばしばだった。


ここまで書いて、大学受験のための勉強をしていた時のことを思い出した。

高校三年の時に希望した大学に手が届かず、一年間予備校通いをしていた。その際の、和文英訳(いわゆる英作文)の授業でのことだ。

講師は、大学生時代に英語を専攻され、卒業してから米国で教壇に立った経験を持つ方だった。
授業の前後の時間、希望すれば自分の英訳を添削して下さり、毎週、早めに予備校に行っては講師の指導を受けた。

講師が折に触れて私たちに言っていたのは「できる限り簡単な表現で、短い文章にすることを心がけて」だった。

この教えは、大学入試だけでなく、大学に入ってからのスピーキング主体の授業、社会人になってから時々出てくる英語でのコミュニケーション(主にメールでのやりとり)に役に立っている。

英語だけでなく、日本語でのやりとりも、できる限りかみ砕いた表現が大事。

専門用語など、通じにくい言葉を出す場面があったら、使った直後に意味することをかみ砕いた言葉で言い換えること。この点については、ジャーナリスト 池上彰さんが良いお手本になるだろう。特に、NHK在職時に担当されていた「週刊こどもニュース」の「お父さん」には、感心したという記憶が今でも残っている。

書いたり語ったりする事柄を腹落ちさせるためにも、シンプルで簡単な言葉や表現を心がけていきたい。

そういえば、予備校生時代のエピソードを、一緒に仕事しているイラン出身の人にしたところ「日本語でもシンプルな表現にするのは大事だよ」と返された。

はい。気を付けます。

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