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第7回毎月短歌/題詠部門

【第7回毎月短歌/一首単作】

第2弾、題詠部門です。

〇題詠部門:映画(投稿総数/154首)

一席(オーシャンアロー賞)

手をとってきょうはシネマにいきましょう くちづけのあるものを見ましょう/短歌パンダ

行きます!と即答しそうな歌です。
二人で観るなら、もうどの映画でも楽しいだろうと思うのですが、こんなワクワクする歌で誘われたら、行く前からテンション上がります。ひらがなが多いのも、優しくて好きです。映画はたまに観に行きますが、非日常を味わうにはやはり映画館なんですよね。「シネマ」「くちづけ」というややレトロな表現や、「~しましょう」という言葉の効果もあり、全体がミュージカル映画のようで、楽しい気分にさせてくれる歌です。

*オーシャンアローは、大阪と和歌山県を結ぶ観光列車。明るい車体が日常を忘れさせてくれる高揚感あり。この歌の弾むような感じと重なります。画像:JR西日本公式より

二席

返却の期限の夜に倍速で映画を見てる君を見ている/泰源

君はいつもこんな感じで生きているのだろう。忙しいのか、うっかりさんなのか、「あっしまった!」とか言いながら。でも、観ずに返却するという選択肢は持っていない。主体はどんな気持ちで、君を見ているのだろう。多分、「期限もうすぐだよ、ちゃんと観なよ」なんて言っても、君は聞いていないのかもしれない。こういう日常が垣間見える歌が好きです。この歌から今までの関係性や、距離感が見える気がして、何度も口ずさみました。急かさずに、じっと見てくれている(待ってくれている)主体、優しいですよね。

三席

どの恋も映画になってしまうのがこわくていつも林檎はうさぎ/肺

結句の「林檎はうさぎ」、主体が、恋に臆病になっている様子が伝わってきます。林檎のうさぎは、お弁当に入れる時などに華やかになる半面、あどけなさ・幼さも有しているものだと思うのです。そして林檎といえば「アダムとイブ」を連想させます。その象徴をいつもうさぎにしていることで、主体の頑なさを感じます。恋はいつか閉じていく。映画をその比喩に用いているのも、素敵でした。

佳作

映画ならここでfin.って出るのだろう 残念ながらいのちは続く/遠藤ミサキ

残念ながら、なんですね。ここで何があったのでしょうか。確かに生きていると「ここで終わらんのかい」と思う時がたくさんあります。主体にとって、残念じゃない続編がいつか始まりますように。

藍色のおおきな夢にかかとから掬われにゆく6番シアター/石村まい

何ともいえない浮遊感があります。シアターの、包み込むような椅子の柔らかさや、全方位から流れてくる音に掬われにいく。映画とは全身で感じるものだと、ハッとさせられました。

すみずみに配慮がひかる親切なUDゴシックみたいな映画/伊津見トシヤ

色々な方面に気を遣うあまり、主張が無くなってしまう。そんな様子を「UDゴシック」と表現したところが好きです。とんがっていることも時には必要だろ?主体の心の声が聞こえそう

(続きは明日の予定)


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