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歳を重ねるって悪いこと?「ダイアログ・ウィズ・タイム」から考える老後

「お誕生日おめでとうございます」
「いや、もうおめでとうっていう歳でもないんだけどね。嫌だわ、歳とるの」
いつからかだろうか。
誕生日がくるたびに心の底から嬉しく思えないわたしがいる。
1年経つたびに実感する老い。

すぐ回復しない体力。
目立つしみ。
周りの扱い方の違い。

巷では「アンチエイジング」が正義のように扱われ、実年齢より若く見える人が賞賛されている。でも、はたして年齢を重ねることが悪なのだろうか。

疑問に思ったわたしは高齢者がアテンドとなり”生き方との対話”を体感するエンターテイメント「ダイアログ・ウィズ・タイム」を体験しに行ってきた。(「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」でお馴染みの一般社団法人 ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが主催している)

5人1組となり、いくつかの部屋を高齢者のアテンドのもと対話しながら進む。
まずは、ある人物が誕生から高齢者になるまでになるまでの変化を描いた映像をみる。そのあとに「何歳に見られたい?」「何歳になりたい?」「あなたは高齢になることを恐れてる?」」など、考えさせられる問いの部屋に入る。

チラシ
アテンド紹介

映像をみたからなのだろうか。
自分が生まれてきて、そして現在を通過して高齢になっていく。
この事実を感情が介入せず、受け止めざるを得なかった。

そして、わたしに向けられている問いの数々に素直に心の中で答えていく。

「何歳に見られたい?」
ー25歳とか?
「なんでその年に見られたいの?」
ーいやなんとなく、ちょうどいいかなって。
「何歳になりたい?ってことは25歳になりたいってこと?」
ーなんか、そう聞かれるといまの年齢でもいい気もしてきた。
「あなたは高齢になることを恐れてる?」
ーうーん、自分は何を恐れてるんだろう。

はっきりした答えがでないまま、実際に足首に重りをつけたりなど高齢者になったような体験をする部屋に向かう。
「高齢者」の解像度があがった状態で「自分はどんな高齢者になりたいか」を参加者と対話する。

「縄文人は高齢になることをどう考えていたのだろう。」
ふと対話をするなかであることを疑問に思った。

縄文人の男女別死亡年齢分布を見ると、男女の違いはそれほど大きくないが、女性は、20代前半までと40代後半以降で男性より死亡者が多かったようだ。つまり、男性と比べて、早く死ぬか長く生きるかどちらかだったようだ。男性の場合、20代後半から40代前半の働き盛りの時期に狩猟や争いで死ぬ確率が高かったのではなかろうか。

縄文人以降と現代人の死亡年齢の違い

女性は出産による損傷などで死亡確率が20代前半に高くなっているそうだ。
なので、縄文人のなかには「高齢になるということ」に対して思いを馳せることもできないまま亡くなっていく人もいるのだろう。
わたしたちは歳を重ねることを憂いているが、「高齢になることをゆるぎない未来として想像できている」ことはとても贅沢なことなのかもしれない。

ある参加者が「いまの楽しさの積み重ねが未来」という言葉にハッとした。
「年齢を重ねることが悪」と考えたとしても、生きている限り歳を重ねることには抗えない。それであれば年齢を積み重ねることを全力で楽しんだほうがいいのではないか。
楽しいことの積み重ねが年齢なのだから。


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