組織やコミュニティのWeb(蜘蛛の糸)化と、還元される世界
そもそもWebって
URLの頭にある"www"ってやつ、決して草が生えまくってる訳ではなく"World Wide Web"の略ですが、そもそものWeb(ウェブ)とは「蜘蛛の糸」のこと。
1991年にイギリスのティム・バーナーズ=リー博士らが発表したこのWebですが、その目的は、研究者のデータや文献を相互に繋げること(=Link)でした。
それがどんどんと発展していって、今の生活のインフラにまで至った訳ですね。
大衆浸透に伴い、今となっては「知識」(Knowledge)よりも便利な「情報」(Information)の集積場としてのイメージが強く、知識を繋げる力がやや弱いように感じてしまいますが、もともとは知識のリンクが目的であったのですね。
私はこれからの時代はより専門的な知識がもっとカジュアルに、スマートにリンクする時代になると思い至った次第ですが、なんだ原点回帰でしかないのか、30年前にとっくにそういうものとして作られていたのかと、、博士、恐れ入ります。
コミュニティのWeb(蜘蛛の糸)化が進む
もうひとつ、これからの時代において、よりWeb(蜘蛛の糸)が複雑に張り巡らされるであろうもの。それはコミュニティです。何を今更、と思われかもしれない話ですね。
ここでいうコミュニティは、友人や趣味のグループ、会社の組織などすべてを包含します。
友達も企業も、構成している元がヒトでしかない以上、根源的には切り分ける必要のない話です。もっといえば、会社の形も多様化し、仕事の定義も多様化し、従来的な解釈での会社や仕事の枠組みを選択する人もいれば、そうでない別の形を選択する人もいる、ということ。
そもそも仕事とは「事を成すこと」であり、報酬はその対価に過ぎません。子供が遊ぶことも、主婦が料理を作ることも、立派な仕事なのです。対価は必ずしも金銭(=交換ツール)である必要はなく、満足や学び、愛を感じることもまた、対価を構成します。しっくりこなければ、将来の幸福のための「投資」という見方でもいいです。
話を戻します。
コミュニティなんて、すでにインターネット上にたくさん存在してるじゃないか?Web化されてるじゃないか、というご指摘があるかもしれません。
それはその通りでもあり、ただ、コミュニティの「真のWeb化」はまだその過渡期にあると私は捉えています。
子供たちを見ていると、友人関係は、我々(30代後半以降)の頃とはだいぶ変わっていて、放課後はいつも公園やA君の家に集まる、みたいな感じではなく、プロジェクト単位でそれをやりたい子たちが集まり、プロジェクトが完了したら解散し、その都度その都度、コミュニティが再形成される、そういう印象です。
だから一番仲のいい子は?と聞くと、そんなこと言われても、といった具合です。
Webな組織(あなたの弱みを彼が補い、彼の弱みを彼女が補う)
Web型組織という言葉自体は既に存在しますが、ここで言いたいのは、なにも組織図を蜘蛛の巣のようにしろということではありません。だから、「Web型組織」ではなく、「Webな組織」です。
会社の組織図が縦に伸びているのは、別に偉い人を称えるためではなく、責任と権限の範囲や指揮命令系統を明確にするためです。ティール型など形を崩して成功している有名企業もありますが、あくまでも基盤をガッチリ整えてきた上での発展形であり、規定演技あっての自由演技です。
指揮命令や個々の役割はハッキリしていていい。している方がいい。ただハッキリしているその責務がちゃんと果たされるために、これまでの日本型の考え方においては、大きな事故が起きないよう、どんな環境でもある程度順応できる人、をリーダーに選定してきました。いわゆる、ジェネラリスト雇用の背景的正体ですね。
これは、新しい風を吹かせるよりも、事故を起こしたくないという経営意思の「本心」の顕れです。当然、変革は起きにくくなります。
決して、事故を起こしていいと言っている訳ではありません。それは企業の持続可能性において最も重要なこと。でもこの先は、それと変革、どちらも果たさないと生き残れない、さあ大変だ。
話を簡単にしてみましょう。
ある部署では成果のために3つの能力値が必要だったとします。AさんBさんCさんの能力値は以下の通りでした。
Aさん:6-6-5
Bさん:10-3-1
Cさん:2-9-3
値が5以上だと大きな事故は起きません、でも値が9以上でないと変革が起きません。
これまでの日本型雇用では、Aさんだけが昇格要件を満たしました。BさんCさんは、部分的には尖っていてすごいのだけど、全部を監督させるにはあまりにも危険なのです。
ではBさんは得意な10のパートだけ極め続ければいいのか?そういうルートもあるでしょう。しかし彼だって、部署全体に大きな変革をもたらす主導をしたいと思っているかもしれません。
Webな組織は、Bさんにとって苦手で能力値1のもの(例えば「企画力」だとしましょう)について、能力値10である他部署のDさんといつでも繋がることができます。なお、これには「Dさんが企画力10であることが全社的にシェアされている状態」という前提が存在しています。
そしてBさんはDさんにこう呼びかけます。
「私の苦手な企画を手伝ってくれませんか?その代わり、私の得意な対外交渉力を、あなたの部署にいるEさんが苦手で困っているなら、今度助けますよ」
こうやって張り巡らされた蜘蛛の巣を辿っていくことで、このプロジェクトは10-10-10となり、変革の土壌が整いました。
別にこれは、組織図を変えなくてもできることです。
ただ必要な条件は、
①強み弱みが正しくシェアされていること
②GIVEの精神を持っていること
です。
①は、そう感じたからこそストレングスファインダーのような手法を私は実践導入し始めています。
(※ストレングスファインダーの概要は以下を参照ください)
https://note.com/kohakuru/n/n5144ff51f4c9
②は重要かつ非常に難儀なことでもあります。GIVER-TAKER-MATCHERという有名な概念について別途noteにしますが、少なくとも組織の全員とはいかずともプロジェクトリーダーがこの条件を満たしていれば、現実的に可能なことです。
逆に言えば、ただひとつリーダーたる条件とは、もしかしたらGIVEの精神を持っていること、なのかもしれませんね。
還元する世界
拡げると、これは世界全体のコミュニティに当てはまります。
持つ者から持たざる者へ。GIVEの精神で繋がる世界。
こんな話をしているときに私の恩師が放った「還元」という言葉が見事に貫通しました。
もともと自然界は還元で成り立っているのだから、そんなに難しいことではありませんね。
人間として凝り固まったエゴから解放されさえすれば。でもそれこそがこれからの時代であり、正当化される生き方であり、コハクルライフ構想が支援する世界の在り方です。