起こしたけど遅刻した
妹が朝に起きれないのは、いつものことだった。
でも不思議と妹は一度も遅刻をしたことはない。
たまにこっちの言葉を曲解してとる人がいて、そもそも学校に行かなければ遅刻とかないよねと言ってくることがある。
断っておくが、妹はきちんと学校に行っている。
風邪をひいた日は、欠席。
病院に行く日は、途中から登校すると遅刻という判定になるので欠席。
妹は意地でも遅刻の判定をもらいたくないらしく、病院に行く日も欠席するのだ。
というか、この件については親とひと悶着会ったのだが、結局は親が折れて病院に行く日は学校を休ませることになった。
だから妹が学校に行く日は、どんなに朝に起きることが出来なくても遅刻はせずに行っている。
しかし、どう考えても遅刻寸前の時間に家から出ていくと母が漏らしていたことがある。
俺自身、体調不良で学校を休んでいたとき、学校へ向かうために出ていくめちゃくちゃうるさい妹の音を聞いたことがある。
確かそのとき時計を確認したら、全速力で走って向かったとしても遅刻するであろう時間だった。
熱で朦朧としていたが、なぜだかその時間だけはハッキリと覚えている。
その時はたいして気にもしていなかったけれど、よくよく考えてみればおかしな話だ。
遅刻確定ともいえる時間に出て行っている妹が、なぜ一度として遅刻したことがないのか。
そんな謎すぎることを数年間放置していたのだが、それについて疑問を持った、というか思い出したのは大学で知り合った友人のせいだろう。
その友人とは仲が良く、いつも金曜日には泊まりに行っていた。
そんな友人が珍しく土曜日に振替授業が入ったとのことで、その日は帰宅しようと思っていたのだが、泊ってくれと懇願されて泊まることにした結果、妹のことを思い出したのである。
友人は目覚ましが爆音で鳴り響いているにも関わらず、一向に起きる気配がない。
俺は止めるのもなにかと思い、友人が止めるのを酷い音の中で待っていたのだが友人は起きなかった。
ちなみに目覚まし時計は消し忘れ防止機能のついているものだったらしく、三十分ほどで自動的に止まった。
俺は音から解放されたが、友人はスヤスヤと眠っている。
そんな様子を見て、不意に妹のことを思い出したのだ。
妹は遅刻ギリギリ、遅刻確定でも遅刻をしなかったが、この友人はどうなのだろう。
気持ちよさそうに眠っている友人を見る。
起こすべきかどうか、考える。
考えがまとまらないので、歯を磨いてから再度考えることにして洗面所へ向かう。
友人は俺が歯を磨き終わって戻っても、まだ眠っていた。