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【1000字エッセイ】ハイドンのユーモアとは何か
フォロワーさんが紹介していたロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンドのハイドンを今日聴きながら、ハイドンのユーモアとはいったい何だろうと考えた。
ハイドンに詳しくない人は、ハイドンのユーモアというと「驚愕」や「告別」の仕掛けを思い浮かべるかもしれない。
しかし私は、そういったわかりやすい仕掛けがハイドンのユーモアの真髄ではないと思っている。
グッドマンの音楽は素晴らしかった。ユーモアも随所に感じた。
ユーモアを感じるハイドンの特徴は、小気味のよさ、軽快、俊敏。
反対につまらなく感じるハイドンの特徴は、もっさり、鈍重、野暮ったい、である。
クレンペラーの威風堂々なハイドンは素晴らしいが、ユーモアがあるかといえばそうは感じない(昔に聴いた印象だが……)。
ユーモラスなハイドンには「省略の美」がある。
卑近な例で恐縮だが、以前こんなクラシックジョークを書いた。
【代役】
開演前のアナウンス。
「お客様にご案内申し上げます。お客様の中で指揮者の方はいらっしゃいますでしょうか。先ほど本日の指揮者が急病で倒れ、代役の当てもない状況でございます。我こそはというアマチュアの方でも構いませんので、係員までお申し出くださいますようお願いいたします」
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」からアイデアを得たものだが、私には「先ほど本日の〜」以降の記述がどうもくどく感じてならない。
ハイドンの音楽は余計なことは言わないのである。くどくども言わない。
センスの塊、とも言える。センスが悪くて悩んでる人はハイドンを聴き漁ったらいい。
飲み会なんかで、なぜかあの人が幹事だとうまく回るんだよなぁって経験ありませんか?
お店選びも会計も人選もそつがない。それがハイドン。
自慢しないでさらっとやってしまうから、周りから凄い人だと気づかれないこともざら。
聖人君子ではないが、人の悪口も言わない。敵をむやみに増やすのは愚の骨頂だからである。
ハイドンが苦手な人に限って、なぜかモダン楽器のロンドン・セットばかり聴こうとするが、先ほど述べた小気味よいハイドンとは逆方向だ。
ハイドンの軽快さを堪能するなら協奏曲かピアノ・ソナタ、交響曲ならパリ・セットまでがよい。
指揮者はホグウッド、ピノック、ヴァイル、ファイ、鈴木秀美、それにグッドマンあたりを選んでおけば間違いない。
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