思わぬ通奏低音 ウィリアム・クリスティ/レザール・フロリサンの「ヨハネ受難曲」
オペラシティで、ウィリアム・クリスティが指揮するレザール・フロリサンを聴いてきた。
J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV245
ウィリアム・クリスティ(指揮)
バスティアン・ライモンディ(テノール/エヴァンゲリスト)
アレックス・ローゼン(バス/イエス)
レイチェル・レドモンド(ソプラノ)
ヘレン・チャールストン(アルト)
モーリッツ・カレンベルク(テノール)
マチュー・ワレンジク(バス)
レザール・フロリサン(管弦楽&合唱)
感想1
本来なら外来オケに定期的に行ける経済力ではないのだが、ウィーンやベルリンよりこちらに行きたかった。
レザール・フロリサンを一度は聴いてみたかったのだ。
前回の来日は4年前。ヘンデルの「メサイア」をオペラシティでやった。
チケットを取っていたにもかかわらず、ものすごい土砂降りのせいもあって私の体調が最悪で行けなかった🥲
念願の初レザール・フロリサン。
CDでそこまで親しんだわけではないが、ナタリー・デセイが夜の女王を歌ったモーツァルトの「魔笛」やヒロ・クロサキとクリスティによるヘンデルのヴァイオリン・ソナタ集は好きなCDだ。
レザール・フロリサン、今回の来日は今日の1公演のみ。
北海道や沖縄から駆けつけた積年のファンもいたのではないか。
79歳のクリスティ、実はハーバード大とイェール大の両方を卒業してるというインテリ。
古楽器の指揮者はインテリが多い印象がありますね。
だからモダンの指揮者が迂闊にバッハを振れないのかしら……😅
ヨハネ受難曲を生で聴くのは初めて。CDでも昔一回、対訳も見ずにざっと聴いたくらい。ほぼ初めて聴くようなものだった。
ロビーの活気が凄かった。サイン会があるらしく、CD売り場に珍しく列ができていた。
クラシックのサイン会商法って、AKBと変わりませんね😅
まず、楽団員が入ってきて大きな拍手。次に合唱団員が入ってきて大きな拍手。
最後にクリスティが入ってくると、一段と大きな拍手。
拍手する1階席のお客さんが「油の上で一斉に跳ねる水」に見えました(初めての経験でびっくり😅)
さて、外来オケが最初の音を弾き始めると国内オケとは全然雰囲気が違っている(世界の格を感じさせる)ことがある。
グザヴィエ・ロト/ケルン・ギュルツェニヒ管のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番やラトル/ロンドン響のワーグナー「前奏曲と愛の死」はそんな感じだったが、レザール・フロリサンは「別世界!」と驚くほどではなかった。
私の席の聴こえ方もあるのかもしれない。フランスの古楽オーケストラなので、もっと色彩感があって洒脱なイメージがあった。
まあ、曲が曲だから洒脱には聴こえづらい。宇野功芳が「バッハは抹香臭いから嫌い」と言っていたが、私も宗教曲に関しては若干苦手意識がある。バッハの宗教曲よりヘンデルの宗教曲やオペラの方が断然好きだ。
今回は字幕スーパー付き。パイプオルガンの位置に横2行の日本語字幕が出る。
ただ、字幕に関して不満も。
アリアは繰り返しが多いが、繰り返し部分になると字幕が出なくなるのだ。
「繰り返し部分も表示したらしつこくなる」との意図かもしれないが、福音書の内容なんか馴染みが薄いので、1回読んだくらいでは頭に残らない。リピート部分になるたびに何を歌ってるのかわからなくなるのは困った。
もう一つ、福音史家とイエスのセリフが2行の前半と後半で表示されるときに、セリフの区別がなかったのもどうかと思った。
福音史家は地の文を読んでるのだからイエスの発言を鉤括弧でくくるとか、福音史家のセリフとイエスのセリフの間で画面を切り替えた方がわかりやすかったと思う。
福音史家以外のソリストは出番以外は合唱団に交じって歌っていた。
福音史家のテノール、バスティアン・ライモンディは、内田光子とのデュオで聴いたボストリッジを上回る柔らかい美声。
パドモアとか、ああいったタイプの声である。
歌手の中ではソプラノのレイチェル・レドモンドによるアリア「融けて流れよ、わが心よ、溢れくる涙の潮に」(第2部でイエスが亡くなったあとに歌われる)が、深い慟哭を感じさせる迫真の歌唱だった。
とはいえ、独唱が前に出て歌う場面では独唱とオーケストラのタイミングが何となくズレているように感じたことが幾度もあった。これも席による聴こえ方の問題だろうか。
一番心を打ったのはアリアよりも、最後の合唱「憩え、安らけく、聖なる御躯よ」とコラール「ああ主よ、汝の御使いに命じ」だった。
それまでも精度が高かったが、ラストになって日本ではなかなか聴けない響きというか、西欧の一流古楽オーケストラならではの指揮者・オーケストラ・合唱団が混然と溶け合った純然たるハーモニーが会場を支配した。
まさに圧巻とも言うべき数分間だった。
コンサートホールは魑魅魍魎の館
非常に残念だったのは、演奏会の大半で近くのBBAが音楽に合わせて服を擦っていたこと。
後半になって気がついた。前半でも似たような音がしていたのを思い出したが、後の祭り。
切れ目なしの後半の演奏中、BBAに注意するわけにもいかず。
ちらちらBBAに視線を向けるも止めないので、一度だけBBAをガン見したのだが、何食わぬ顔で最後まで続けてましたね😓
演奏会はいろんな聴き方があっていいと思いますが、音出すタイプの人はハッキリ言ってアタオカだと思ってます。
だって、美しい音を聴きたくて高いお金払って来てるのです。
高級レストランで例えるなら、他人の料理の上にタバコの灰落としてるのと同じです。
咳やくしゃみ、お腹の虫みたいに我慢してても突発的に出ちゃう音ならともかく、演奏に合わせて音出してるって頭おかしいとしか思えない。
「繊細の極み」とも言える声楽入りの古楽オーケストラで、服擦ってシンクロしてるBBAって相当だよね😓
そんなにシンクロニシティしたいなら家で聴けって😭
あと、「身を乗り出さないでください」の札を持った係員が何回も来るホールって何なのか……。
身を乗り出さないと見えない席の配置だからみんな乗り出すわけでしょう。
新しくコンサートホール作る人は席の配置よく考えた方がいいよ😔
実際、隣のおばさまは隣の若い男性(大学生?)のせいで字幕が見えづらそうで、しきりに身体を動かしてて気の毒だった。
その男性にしてもそこまで身を乗り出してないんだけど、隣の人が字幕見えないってことはやはり前傾だったってこと。
「身を乗り出さないでください」だと感覚的だから、「背もたれに背中をつけてご鑑賞ください」に変えたらどうかな。その方が具体的だ。
感想2
第1部、第2部ともにフライング拍手はなく、深い余韻を客席が共有しての大きな拍手。
早い段階でスタオベしてる人も結構いた。指揮台のすぐ前の女性もスタオベしていた。
クリスティはソリストとともに左右のバルコニーに向けてもお辞儀していた。
ソロカーテンコールの手前で退席した。何か最近ソロカーテンコールまでやらなくていいかなと思うようになってきた。シーヨン・ソンのときはしたかったけど。
結論。BBAの通奏低音には参りました😭