思い出の海外オーケストラ(3)
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2006年
24 ザールブリュッケン放送交響楽団 (スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ)
スクロヴァチェフスキもかなり実演を聴いた。
常任指揮者を務めていた読売日本交響楽団とのブルックナーやブラームス。手兵のザールブリュッケン放送交響楽団とのベートーヴェン交響曲チクルスは、6・7番以外の3夜通った。
宇野功芳はスクロヴァチェフスキの芸風を褒めつつも「箱庭的。スケールが小さい」と言っていた。
私は水泳のトップ選手(北島康介のような!)みたいに、贅肉のない引き締まった造型に感じていた。
音楽が枯れたり緩んだりして感じられたことは一度もなかった。いつでも俊敏だった。
2008年
25 ロンドン交響楽団 (ワレリー・ゲルギエフ)
ゲルギエフを聴いたオーケストラはロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、キーロフ歌劇場管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に続いて4つ目。それだけ当時ゲルギエフにハマっていた。
しかし、このときがゲルギエフを生で聴いた最後かも。プロコフィエフの5番やヴァイオリン協奏曲第2番(ワディム・レーピン)。
ロンドン響のシェフになってからのゲルギエフは、もともとの野生味が影を潜め、洗練された響きを追求するようになった。
私の好みとはズレてきてしまった。CDで聴く同コンビのマーラーも好みに合わなかった。
26 シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ (グスターボ・ドゥダメル)
当時、日本のクラシック界隈に大旋風を巻き起こしていた南米出身のドゥダメル。
待望の初来日公演でアルゲリッチがベートーヴェンのトリプル・コンチェルトを弾くというので行ってきた(ヴァイオリンとチェロがカプソン兄弟だったのは完全に忘れていた😅)。
会場は東京国際フォーラムA。音響のデッドさが際立った😓
トリプル・コンチェルトどころか、後半の「巨人」も迫力不足。
アンコールのバーンスタインの「マンボ」はノリノリだったが……。
2009年
27 ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー (大植英次)
大植のマーラーはテンポを揺らしまくるせいでTwitterでは評判が悪い。
私は好みなのだが。今年、神奈川フィルとの「幻想」や日本フィルとの「悲愴」を聴いて、その濃厚な感情表現を大好きになった。
マラ9の実演では、前回挙げたゲルギエフ/キーロフ歌劇場管弦楽団と小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラが両極端で印象に残っているので、大植の印象は弱い。
感情に沈潜するバーンスタイン・タイプの熱演だった記憶。
28 ルーヴル宮音楽隊 (マルク・ミンコフスキ)
オール・ハイドン・プロを聴いた。強烈に印象に残っている「驚愕」の第2楽章はアンコールだったようだ。
びっくりの箇所で最初は無音、2回目は楽団員が悲鳴を上げるという洒落た演出だった。
オーケストラの音色が瑞々しかった。
29 フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団 (大野和士)
強烈な印象を残したミンコフスキのわずか3日後だったせいか、まったくと言っていいほど記憶に残っていない😅
大野和士はモネ劇場との来日公演で「ドン・ジョヴァンニ」をやったことがある。好きなバリトンのサイモン・キーンリサイドがタイトルロールだった。
渋いイケオジだし、舞台写真がとてもかっこよかったので、見れなくて残念。
30 トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 (トゥガン・ソヒエフ)
諏訪内晶子とのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、チャイ5のプロを聴いたはずだが、ほとんど覚えていない😅
このオケは以前ミシェル・プラッソンが音楽監督を務めていた。そのコンビで一度聴いてみたかった。
2010年
31 ヴッパータール交響楽団 (上岡敏之)
*フライヤーなし
モーツァルトの28番とマーラーの5番のプロ。これも「行った」という記憶しかない😅
当時は入院中。外泊中コンサートに出かけても注意力散漫で、演奏を聴きながら「帰ったら何食べようかな〜」とか、全然別の考えにしょっちゅう気を取られていた。
それを思えば、最近は集中力が高まってきたのを感じる。加齢とともに集中力などさまざまな力は衰えるのが自然だと思うが、社会生活を通した訓練や障害理解を通して逆に力がつくこともあるのだと知った。
話を戻すが、上岡敏之/ヴッパータール響はCD2枚組のノロノロブル7が当時話題になっていた(私も買った)。
上岡の実演はこのときしか聴いていないので、国内オケで来年までにはまた聴いてみたい(新日本フィルとの「グレイト」がよさそうかな?)。
32 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス (ニコラウス・アーノンクール)
私が実演を体験した巨匠世代をわかりやすく言うと、「朝比奈・ヴァント・アーノンクール」の世代ということになる。
10年早く生まれていたら「カラヤン・バーンスタイン・クライバー・チェリビダッケ・ムラヴィンスキー」といった大巨匠たちも聴けたかもしれない。山田一雄も聴きたかった。
ハイティンクやブーレーズは聴くことのできた世代である。しかし高価なのもあるし、率先して聴くべきと当時は思っておらずスルーしてしまった。
ベルティーニ、ホグウッド、プレヴィン、サンティ、サヴァリッシュ……スルーして後悔している指揮者は数知れず🥲
アーノンクールは、このときの来日の「ミサ曲ロ短調」をNHKで見た。傑作だった。私が行ったのはハイドンの「天地創造」。
ハイドン好きにもかかわらず、この曲の面白さがわかったのはつい最近。当時はオーケストラの響きの清冽さに感銘を受けたものの、「アーノンクールが振ってもつまらん曲だなー」と思ってしまった(豚に真珠とはよく言ったものだ😅)。
33 クリーヴランド管弦楽団 (内田光子)
内田光子は一番多く実演を聴いたソリストだろうか。7、8回は聴いている。
はっきりと覚えていないが、このときの弾き振りは2回とも行ったような。
テイトの指揮で録音した名盤の誉れ高いモーツァルトのピアノ協奏曲を内田自身の指揮で入れ直した23&24番のCDを聴いたときは大きな衝撃を受けた。
とにかく表情が濃厚。いま聴けば違う印象かもしれないが、聴いた当時はもっさりした印象すらあった。
実演はもっと自然体で、濃いとか、くどいということはなかったと思う。
いまも「顔芸」(指揮中の表情=変顔がコロコロ激しく変わる)は健在なのだろうか。
クリーヴランド管といえば、ドホナーニも聴いてみたかった。
2011年
34 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 (リッカルド・シャイー)
人の記憶は当てにならない。いままでいろんな人に「東日本大震災の3日前にシャイーを聴いた」と散々吹聴してしまった😅 実際は7日前でした。
このときのブル8の印象はわかりやすい。一言で言うと「massive」。
かっこつけてるのではなく、当時そう感じたのだ。分厚い音の圧が押してくる感じだった。
いわゆる「ブルックナー指揮者」以外でブルックナーを聴いた珍しい例かも。
とはいえシャイーもブルックナー全集を残しているから、「ブルックナー指揮者」なのだ😅
2012年
35 ドレスデン国立管弦楽団 (クリスティアン・ティーレマン)
売れっ子のティーレマンをいま聴いたら結構なお値段かもしれないが、NHK音楽祭だったので比較的割安で聴けた。
ブラームスの3番・1番。強烈な印象は残っていないが、音響のデッドなNHKホールにもかかわらず堂々たる威容の音楽だったと記憶している。
2014年
36 アカデミー室内管弦楽団 (マレイ・ペライア)
“聴きもの”は、指揮台に立ってのハイドン「驚愕」。
ひたすら繰り返される空手チョップのような指揮ぶりを見て思い出したのは懐かしのこれ😅
オケの響きは瑞々しかった。
アカデミー室内管といえば、ネヴィル・マリナー。
マリナーは晩年にN響とのブラームス4番を生で聴いて仰天した。ヴァントみたいなドイツ風の本格派だった。
晩年のマリナーは紛れもなくドイツ音楽の巨匠だった。
2022年
37 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 (フランソワ=グザヴィエ・ロト)
8年間もまったく海外オケを聴かなかったか怪しいのだが、いまいち思い出せない。
またこの間、コンサートに行かない時期が2年くらいあった。
結構な数行ったし、ラジオやテレビでも十分と感じてしまったのだ。
だがノット/東響のシベリウス5番をミューザ川崎で聴いて、再び生芸術鑑賞の虜になったのだった。
これと次の公演はnoteに感想を書いたので、詳しくは書かない。
疲れていてブル4はうとうとしてしまった。2階Lバルコニーだったが、河村尚子が完全に見切れていてホールの設計に腹が立った。
再 ロンドン響 (サイモン・ラトル)
同じ海外オケを違う指揮者で聴き比べたのはロンドン響のみ。と言っても、間が空きすぎて違いはよくわからないが。
3階席で聴いた。ミューザ川崎は手すりが高く、舞台上を見るのに遮るものがなかったので快適だった。
色彩感の乏しいエルガーは宇野功芳風に言うなら「無機的」。しかし、1回でもベルリン・フィルの音楽監督も務めた現代の巨匠を聴けたのはいい思い出だ。
実際に聴いた海外オケは以上。
ジャパン・アーツが招聘したウィーン交響楽団(ファビオ・ルイージ)とロシア・ナショナル管弦楽団(ミハイル・プレトニョフ)ももしかしたら聴いたかもしれないが……🤔
聴き逃して後悔しているのはこのあたり。
指揮者は聴きたいのに、辻井プライスで見送ったのはこの2つ。
全3回、長い連載になりました。
読んでいただき、ありがとうございました😊