修行不足
住職にかんしゃくを起こされたら呼吸が苦しくなったという坊主が来た。半夏厚朴湯で収まるが寺から診断書を出せと言われたそうだ。
それで診断書を書いてやった。
診断名:修行不足
仏典に曰く怒りを捨てよとあるのに、住職たるものがかんしゃくを起こす。
自己を拠り所とし、他人を拠り所とせず、法を拠り所とし、他を拠り所とするなとブッダは説いた。自己と理法のみを拠り所として確固としていれば、なぜ他人のかんしゃくなどで息が苦しくなることがあろうか。
そもそも居士とは俗世界に生きて仏道に通じた人を言うのに、何故死人に居士などとつけて何十万もの金を取るのか。ブッダが一度でもそんなことを説いたのか。
要するに両人とも仏道の修行がまるでなっていないから、こう言うことになるのである。よく心せよ。
上記の通り診断いたします。
あゆみ野クリニック
医師 岩﨑鋼
そうしたらその坊さん、書いてあることが一文字も理解出来なかったらしく、うんうんと唸った末、「だって私は身体の具合が悪いのです」と抜かす。
体と心は一つでしょう。あなたは肺がんで息が苦しいのか、肺炎で息が苦しいのか。違うでしょう。自らの心を制することが出来ないから、息が苦しい、ブッダは自らの心を制しなさいと、くり返しといたはずだ。
そう言ってやったが結局その坊さん、「こんな診断書は受け取れません」というので、そうかい、それでは好きにしなさいと言って帰した。
だいたい半夏厚朴湯などと言うものは、所詮草や木の葉っぱや根っこや木の皮だ。そんなものを頼りにして、仏法を顧みないなど、そんな坊主があるものか。あきれ果てたことだ。