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オミクロン株に対するコロナワクチンの感染予防効果及び重症化予防効果について
最初にコロナワクチンが開発され、その効果についての臨床治験結果が論文として発表されたときは、世界中の医者が腰を抜かすほど驚きました。なぜなら「感染予防効果95%以上」という数字を叩きだしたからです。
感染予防効果が95%以上もあるワクチンなどと言うものは、未だかつて存在しませんでした。例えば、インフルエンザワクチンのインフルエンザ感染予防効果は年によって違いが出るのですが、ざっと10年ぐらいを平均すると40%程度です。しかしそれでも「インフルエンザ感染を40%も低減出来る他の方法」はないから、あのワクチンは充分推奨に値します。これまでの常識では、ワクチンの効果というのはその程度でした。それが95%以上の感染予防効果!!全く新しいmRNAワクチンというものの効果に世界中の医者が仰天し、その原理を発明した人は去年ノーベル医学賞を受賞しました。
しかし、コロナウィルスが次々に変異をくり返し、オミクロン株になった途端、コロナワクチンの感染予防効果は激減しました。今流行しているコロナもオミクロン株の亜種です。オミクロン株に対するmRNAワクチンの感染予防効果は、2回接種後2−4週後までは65%~70%あるものの、25週後には約15%にまで低下し、ファイザーワクチンでは20週を過ぎると感染予防効果はほぼなくなるという事が2022年、英国健康安全保険庁から発表されています。一ヶ月をざっと4週と考えれば概ね接種後5ヶ月であのワクチンの感染予防効果はなくなると言うことです。
一方、重症化予防効果をデータを取りやすい「入院予防効果」としてみると、オミクロン株に対し、追加接種後105日、つまりざっと3ヶ月後の時点において、18歳から64歳までの集団では急性呼吸器疾患による入院を67.4%予防し、また酸素投与や気管挿管、ICU(集中治療室)入院については75.9%予防した。いっぽう、65歳以上では急性呼吸器疾患による入院を85.3%、酸素投与や気管挿管、ICU(集中治療室)入院は86.8%予防しました。しかし、このデータの解釈に関しては、そもそも64歳以下ではこのような入院を要するような重症化はオミクロン株では起こりにくいという事を考慮しなければいけません。つまり、オミクロン株は少なくとも64歳以下では重症化しにくいから、重症化しにくいものの重症化を予防したというデータは臨床的にはあまり意味がない。しかし65歳以上では依然としてコロナは危険な感染症であって重症化リスクが高い。だから65歳以上の人にはコロナワクチンは重症化リスクを大きく低減させるという意味があるから推奨されます。しかしそれは、ワクチン接種から3ヶ月後までの話であり、それ以降どうかというのは分かりません。
そういうことを考慮し、現在日本の厚労省は3回目接種を2回接種後5ヶ月から認めていますが、リンクの通りイギリス、フランスでは3ヶ月後の追加接種を認めています。しかし、3ヶ月毎にワクチンを打ち続けるというのは現実としてあまりに煩わしい。いったいいつまで3ヶ月毎にワクチンを打つんですか、と言うことになります。
ですので、現時点においては、64歳以下の人はコロナワクチンを接種する意味は殆どない。65歳以上の人にとっては重症化予防効果は期待出来るが、しかし3ヶ月毎にワクチン接種するというのをいつまでやるのか、という話になるので、現実には一定のリスクを受容しつつ「65歳以上の人は年に一回、ないし半年に一回ぐらいのペースでワクチンを打てば、重症化リスク予防効果が期待できるであろう」という事になります。