目黒さん
ある人があゆみ野クリニックに特定健診に来て、心電図を撮ったらⅡ、Ⅲ、aVfにabnormal Qを認め、かつ完全右脚ブロックでした。完全右脚ブロックは通常問題にしませんが、それがⅡ、Ⅲ、aVfのabnormal Qと同時にあれば「これは問題だ」となります。
その人は、石巻では一流の病院で糖尿病治療を受けていました。それで私は本人に「この心電図はちょっと急いで循環器科に廻さないといけません。あなたは今某病院で糖尿病の治療を受けているようですから、院内で情報が共有出来るその病院の循環器科に紹介します」と言いました。
そうしたらその人は、「いや、俺は目黒さんと知り合いなんだ、目黒さんはなんかあったらすぐ来いと言ってくれたから、仙台厚生病院に紹介してくれ」というのです。
目黒さんというのは、仙台厚生病院理事長 目黒泰一郎先生のことでしょう。無論目黒先生は有名だし、仙台厚生病院は宮城県ではもっとも循環器のレベルが高い病院です。しかしその人は、石巻のとあるちゃんとした救急病院で糖尿病の治療を受けています。今は非常によくコントロールされているようですが、敢えてその病院の糖尿病科がSU剤を使っているからには、かつては糖尿病のコントロールに非常に難渋したことが窺われます。それで私はその人に、
「たしかに仙台厚生病院は循環器の領域では超一流ですが、あなたの糖尿病とこの心電図変化にはおそらくなんらかの関係があるはずです。あなたが今通っている病院の循環器科のレベルも非常に高いのですから、あなたにはその病院の循環器科をお勧めします。何故なら、糖尿病科と循環器科が情報を共有することがあなたにとって大事だからです」。
それでその人は納得し、私はその人を石巻の病院の循環器科に紹介しました。
どうもその、石巻というか田舎の人は「偉い人と知り合いだ」というのを「目黒先生」ではなく「目黒さん」というように、わざとぞんざいな言い方をするくせがあります。そういう言い方をすると自分が重んじられると思うのでしょう。しかし、無論私は目黒先生が超一流であることは承知しているし、仙台厚生病院の循環器センターが、おそらく循環器では宮城県で一番、いや東北六県でも一番であることも承知しています。しかしながら私はその人にとっては今掛かっている糖尿病科と同じ病院の循環器科に掛かる方が大事だと判断し、こう説得したわけです。無論、その石巻の病院があまり信用がおけなければ私は即座にその人を仙台厚生病院に廻したでしょうが、その石巻の病院の循環器科も相当なレベルですから、私はその様に患者さんに勧めました。
どうもその、田舎の人ってのは、なんだか要らない名誉を振り回すくせがあります。
https://www.ayumino-clinic.com/
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