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(123) レジリエンス「逆境からの成長」

2021年3月14日(日)

前回「(019) オプティミズム「制御できる」とアドラーの「使用の心理学」」に引き続き、エクステンション講座の内容を振り返っています。今回は、4つのこころの資本の最後として「レジリエンス」を取り上げます。

・レジリエンスはエフィカシー、ホープ、オプティミズムの上に成立する

レジリエンスは、困難や脅威に対してうまく適応できる心理的な能力として広く知られる概念になりました。一般的には、逆境、対立、失敗といったネガティブな出来事が起こってからの立ち直りに注目します。しかし、昇進や責任の増大というようなポジティブな出来事に対応することもレジリエンスの概念に含まれます。

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レジリエンスは、それ自体で単独の心理的資本というよりも、これまで述べてきた3つの心理的資本である、エフィカシー(私はできる)、ホープ(この道で行こう)、オプティミズム(制御できる)を資源として成立する総合的な能力だということができるでしょう。

環境の変化に対して立ち直り、適応していくためには、まず「私はできるんだ」という信念が必要です。そして「この道で行けば何とかなる」という見通しを立てて計画を練る能力が必要です。最後に、「自分がコントロールできるものはある」という信念を持っていることが必要です。もしできることが全くないとしても、それを受け入れて、切り替えるというのもレジリエンスの1つです。

・4つのこころの資本以外の候補

ルーサンス他『こころの資本:心理的資本とその展開』では、4つのこころの資本(HERO)以外の心理的資本の候補が挙げられています。その中からいくつかを紹介しましょう。

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チクセントミハイが提唱した「フロー」の概念は、時間を忘れるほど高い集中力で何かに取り組んでいる状態を指しています。これは、取り組む課題の難しさがちょうど自分のスキルのレベルと釣り合ったときに起こることがわかっています。フローを体験する時間と回数が増えれば増えるほど、フロー状態を作るために自分が何をすれば良いかがわかってきますので、その結果として心理的資本は強められるでしょう。

マインドフルネスのトレーニングは、自分の注意をコントロールすることをスキルとして学びます。それによって自分の心を占めるネガティブな感情を手放すことを可能にます。その結果、新しい別のことに注意の資源を振り向けることができます。

感謝と赦しのワークは、ネガティブな感情で構成された知覚や帰属の仕方を反転させる効果があります。その結果としてこころの働きを柔軟なものとして、心理的資本の貯蔵庫を広くすることができます。

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スピリチュアリティや信仰といったことが心理的資本の1つとして入っていることに違和感を覚える人もいるでしょう。しかし、それが何であれ、何かを信じるという行為には、自分自身を一貫性のある存在として統一し、目指す方向性を明確にするという点で、心理的資本を強める効果があります。

ポジティブ心理学では、本来性は「自分自身の思考、感情、欲求、要求、嗜好、信念、経験を認知し、真の自己と合致したように自己を表現する」ことだと定義されています。このように自分自身に正直であることが、真正で正当な行動の中間になると考えられています。

ポジティブ心理学で注目されている「勇気」の概念は、アドラー心理学のそれとは異なっていて、より一般的な定義がされています。それは「外的にも内的にも抵抗のある状態であっても目的を達成しよういう意思の行使を含む感情の強さ」です。勇気ある行動の目的は、意図があり、意味のある、有益なものであるとされています。この点では、アドラー心理学の「共同体感覚に沿った行動」ということに合致しています。

・感情、対人関係、実行機能の取り扱い

以上『こころの資本』で扱われている4つのHERO「ホープ、エフィカシー、レジリエンス、オプティミズム」を紹介してきました。このそれぞれの中で、感情、対人関係、実行機能といったことが扱われています。この点で、非認知スキル=社会情動スキルとは切り口が異なっているといえるでしょう。

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