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【アドラー教科書】(28) 無意識とは自分のまだ理解されていない部分である

2024年10月29日(火)

火曜日は『アドラー心理学の教科書』の記事を連載しています。

第1部 自己のしくみとその動き

第2章 アドラー心理学が考える自己とは

2.3 無意識とは自分のまだ理解されていない部分である

ここまでフロイトの無意識という概念について取り上げてきました。フロイトの心理学のように、表面的な現象ではなく、その心の奥底にあると考えられる無意識のダイナミックな働きを想定する心理学を「深層心理学 (depth psychology)」と呼びます。

フロイトの無意識というアイデアに対してアドラーは、無意識を明確な概念として定義されたものではないと考えました。実際、無意識とは「心の中の意識できない部分」という否定形によって定義するしかありません。直接、無意識とは何かという形での定義ができないのです。フロイトはそのように無意識を定義したあとに、その無意識の中には、自我(エゴ)が認めることができないような、不謹慎で表に出せない考えや衝動が収められているとしました。

それに対して、アドラーは無意識をどのように捉えたかというと、私たちの動き(movement)の原動力になるようなものであり、それは「まだ理解されていない材料(un-understood material)」なのだと考えたのです。そして、それは個人の考え、感情、行動として表出されるライフスタイルと一貫性のあるものだと考えました。つまり、アドラーにとって無意識とは、ライフスタイルの一部であって、まだその人に理解されていない部分だということになります。

個人のライフスタイルは、考え、感情、行動として表に出てきます。ライフスタイルはそれが表出される背景の幅広い文脈(context)の中で初めて理解することができます。そのためアドラー心理学はフロイト的な「深層心理学」ではなく「文脈心理学(context psychology)」と呼ぶことができるでしょう。

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