2-教える技術ヘッダ

【教える技術】#13 文脈を変えることで「学習2」を訓練する

火曜日は「教えること/学ぶこと」のトピックで書いています。早稲田大学エクステンションセンター中野校での「教える技術」講座の内容を連載しています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。

前回は、ベイトソンの学習2について説明しました。学習2とは、単独のスキルそのものの学習(学習1)ではなく、文脈の中で自分のスキルをどう選択し活かすかということの学習です。

認知心理学でいう「領域固有性」とは、特定の文脈で学んだスキルが違う文脈になると活かすことができない(転移しない)ということを指しています。教室での授業で学んだことが、実際の日常生活では活かすことができないという現象はこれに相当します。

ですから、特定のスキルを習得したあとは、それをどの文脈で使うかということが課題となります。そのためには、自分が置かれている複雑な状況を解読することが必要です。それは単純なスキルの習得ではなく、そのスキルをどの文脈で発揮するのがベストかという判断力の習得とセットなのです。

固定された文脈で特定のスキルが習得できたら(学習1)、その文脈を変えていく訓練をします(学習2)。いつまでも同じスキルを繰り返しているとすれば、それは学習していることになりません(ゼロ学習)。常に変化するということが学習なのです。

具体的には、文脈を操作することで次のような訓練をすることです。

(1) 教材の文脈を変える
・複雑でリアルな問題を出して、それを解決しようとする(PBL)。
・現実のケースを取り上げて、ケーススタディをする。
・現場・フィールドに入り込んで、参与観察をする。

(2) 学習行動の文脈を変える
・当事者となって討論・議論をする。
・ロールプレイをして違う役割を演じてみる。
・自分の知っていることを相手に教えるピアチュータリングをする。

(3) 自我関与の文脈を変える
・自分が一体何を学んだのかということを振り返り、書く(省察)。
・体験したこと、考えたことをジャーナル(日誌)として書く。

以上のようなトレーニングをすることで、学習2が促進されます。その成果は、出会ったことのない状況においても自分のレパートリースキルの中から適切なものを見つけて、活用できるということとなって現れます。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。テーマは曜日により、(月)アドラー心理学(火)教えること(水)フリーテーマ(木)お勧めの本(金)連載記事(土)注目の記事(日)お題拝借で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。