5. 社会統合論
今回のポイント
・アドラー心理学の基本前提の4つ目は「社会統合論」
・人は1人では生きられないので、常に社会の中に埋め込まれた存在である
・自分がいる共同体に所属するための有利な戦略としてライフスタイルを形成する
・ライフスタイルは最優先目標の視点から大きく4つに分類できる
今回は5つの基本前提の4つ目として、社会統合論について取り上げます。
5.1 小学生のときあなたはどんなタイプでしたか
前回までに目的論として、人は自分の理想的なイメージを目指して生きているということを説明しました。自己理想になろうとすることが生きていく目的です。では、その自己理想、つまり自分の理想的な姿というは誰がどのように決めるのでしょうか。
決めるのはもちろん自分自身です。それでは自分自身が完全に自由に決められるのかというとそうではなく、そこにはいくつかの制約があります。それは遺伝的な要因と社会環境的な要因です。
遺伝的な要因は自分の親によって偶然に決められていて、自分が選んだものではありません。また、社会環境的な要因も自分がどの地域に住み、どのような共同体に属しているかによりますので、これもまた自分が選んだものではありません。たまたまその社会に生まれたのです。
とはいえ、遺伝的な要因と社会環境的な要因は自分が変えられないとしても、それらを与えられた上で、それら以外のことは自分で決めたり選んだりすることができるのです。
小学生のとき、あなたはどんなタイプでしたか。勉強でがんばる子でしたか。運動やスポーツでがんばる子でしたか。楽器や絵画などの芸術でがんばる子でしたか。リーダーになる子でしたか。みんなを笑わせて人気者になる子でしたか。なるべく目立たないようにしている子でしたか。先生に気に入られるような子でしたか。
このように小学生の頃に「自分はこの路線で行こう」ということを意識しなくても決めているのです。これはアドラー心理学でいうところの「自己理想」を自分で描いているということになります。自分はこの路線で行こうと決めるのは、学校のクラスや友だちの中で「どのようにしていけば、私はこの中に居場所を作ることができるか」ということを考えた末の結論です。
クラスのメンバーや友だちはほぼ偶然で決められていますので、その中で自分の得意なところを見つけ、居場所を作れるように決心していくのです。これが「社会統合論」つまり「人は社会の中に埋め込まれた存在である」ということの意味です。これは小学校以降、学校でも会社でもサークルでも、いつでも自分が何らかの共同体の中にいるときに常に働く原理なのです。
そうした大小の共同体の中で、自分はどのように居場所を見つけ、所属を果たしていくかということが常に人生の課題となるのです。
5.2 自分の居場所を作るためにライフスタイルを決めていく
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