![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162335311/rectangle_large_type_2_f8533c89afb72d99676791e1261e7fd1.png?width=1200)
こころを旅する、紙の上の円
「こころを旅する数学 ―直観と好奇心がひらく秘密の世界」という本を読んでいる。この本の第3章で「円を想像してみよう」と誘われたあと、こんなことを尋ねられた。
1本の直線は3点で円と交われるだろうか?
(晶文社) ダヴィッド・ベシス 著 野村真依子 訳
うん、出来ないはずだ。交わる数は多くても2個だろう。そして、それは正しい。でも、確かにどうやって正確に証明をするんだろう? すぐに思いつくことができなかったが、5分くらいあれこれ紙と鉛筆を振り回していたら、ぴょっっ、と証明することができた。書き下してみると、中学生の範囲で完結していた。今思えば、中学生の頃は論理を全然気にしていなかったなぁ。実際、とくに相似の条件とかの意味を分かっていないまま、テストを根性の丸暗記で乗り切っていたことを思い出す…(反省)。
せっかくなので、「1本の直線は3点で円と交われない」ことの証明を書いてみよう。
1本の直線は3点で円と交われないことの証明
Step 1. 円を座標上にのせる。
紙の上にコンパスで描かれた円$${C}$$を考える。そこにはコンパスで刺した跡、すなわち中心点がある。この中心点を$${O}$$とし、$${x}$$軸と$${y}$$軸をとる。(つまり、$${O}$$を通る直線を一つとり、それを$${x}$$軸とした後、$${x}$$軸に直交する直線を引いてそれを$${y}$$軸とする。) このとき、円$${C}$$と$${x}$$軸は異なる2点で交わる (∵ 中心点からの長さが等しい点を打った図形が円) ので、図aのようになる。円$${C}$$と$${x}$$軸の交点で、$${x}$$座標の値が正なものを$${T}$$とおく。
![](https://assets.st-note.com/img/1731914940-mzAjTS3H0q28RtZgOKiLuM6v.png?width=1200)
Step 2. 円の代数化
円$${C}$$を代数化する。線分$${OT}$$の長さを$${t\quad (t \in \mathbb{R})}$$とおけば、$${x}$$, $${y}$$座標上の円$${C}$$は
$$
C : x^2 + y^2 = t \quad \text{・・・①}
$$
と表される (∵ ピタゴラスの定理)。
Step 3. 円と直線の方程式を連立させる
定規で書かれた直線$${l}$$を任意にとる。すると、直線$${l}$$は$${x}$$, $${y}$$座標上で
$$
l : ax + by + c = 0 \quad (a, b, \in \mathbb{R}, a \neq0 \text{ or } b \neq0) \quad \text{・・・②}
$$
と表される。ここで、$${x}$$, $${y}$$座標上の点$${P = (X, Y) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R}}$$を円$${C}$$と直線$${l}$$の交点とする。すると、方程式①、②から点$${P}$$は
$$
\begin{cases}
X^2 + Y^2 = t &\text{・・・③}\\
aX + bY + c =0 &\text{・・・④}
\end{cases}
$$
を満たす。以下の議論を見れば分かるように、一般性を失うことなく$${b \neq 0}$$としてよい。すると、等式④より
$$
Y = -\frac{a}{b}X -\frac{c}{b} \text{・・・⑤}
$$
を満たす。この等式⑤を③に代入すれば、
$$
X^2 + \left( -\frac{a}{b}X - \frac{c}{b}\right) ^{2} = t
$$
となるが、これを展開して
$$
\left( 1 + \frac{a^2}{b^2}\right) X^2 + \frac{2ac}{b^2}X + \frac{c^2}{b^2} = t
$$
を得る。したがって、ある$${A, B \in \mathbb{R}}$$があって
$$
X = A \pm \sqrt{B}
$$
と書ける。これを等式⑤に代入すれば、
$$
Y = \left( -\frac{a}{b}\right) \left( A \pm \sqrt{B} \right) -\frac{c}{b}
$$
となる。よって、
$$
P = \left(
A \pm \sqrt{B}, -\left( \frac{a}{b} \right) \left( A \pm \sqrt{B}\right) -\frac{c}{b}
\right)
\quad (\text{ただし、符号} \pm \text{は同順} )
$$
となるから、円$${C}$$と直線$${l}$$の交点は2個以下であることが示された。q.e.d.