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フードデザイン/アート/カルチャー1|フードデザインをよりよく知るための本

はじめに

前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
 今回はこのシリーズ最後のトピック「フードデザイン/アート/カルチャー」についてです。なぜこれらのトピックに注目するかと言うと、既存の食を見つめ直し、新たな食に向き合うために重要な側面だからです。
 最近話題になった「マイコプロテインを主原料とした、3Dプリンタで作られる代替サーモン」のように、科学技術の進展によって新しい食のあり方が急速に現れるようになっています。そして1〜2年前に代替肉が3Dプリントされていた頃よりもその注目度が高まっているように感じます。
 こうした状況において、技術や科学と人間のあいだでデザインやアートはその役割を果たします。当たり前だと思われていることを別の角度から光を当てたり、まだここにない姿を伝える物語を描いたりするのです。そして人々の暮らしに新たな食の形が定着する過程で文化が形成されます。また現状の課題をただの数字として見るだけでなく、視覚的に訴えるような働きもします。
 このような観点から、フードデザインにおいて食に対する芸術や美学、文化、あるいは哲学の側面にも注目することが重要だと考えて、今回選書してみました。


選書〈フードデザイン/アート/カルチャー〉

このテーマは選んだ書籍が多くなったので、前編と後編に分けてご紹介します。前編では年代の古いものから取り上げることにします。

建築とマカロニ―architects’ garden’95

日本デザインセンター 原デザイン研究所
1995/07/01
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建築とマカロニ―architects’ garden’95

・作品集、展覧会カタログ
・15人の建築家と5人のアーティストがマカロニを設計
・設計図と設計意図、それらを基にした模型写真とイラストレーションを収録

現存するマカロニはそれぞれに「おいしい形態」を模索して進化してきた結果であり、それはよりおいしい形態を求めて進化し続けるであろう

原研哉
p.4

日本の文化の中では食べ物の形態をデザインするという概念はないんですね。あるとすれば和菓子ですが、あくまでも装飾的、視覚性のなか食べ物の造形が行われている。

原研哉
p.54

Man Eating Bugs: The Art and Science of Eating Insects

Peter Menzel, Faith D'Aluisio
1998/09/24
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Man Eating Bugs: The Art and Science of Eating Insects

・写真集
・オーストラリア、日本、タイ、カンボジア、インドネシア、中国、メキシコ、ボツワナ、南アフリカ、ウガンダ、ペルー、ベネズエラ、アメリカを取材した記録
・現地での採取方法や販売方法、食べ方、味などをルポ形式で説明する

"I want to use entomophagy to encourage us Westerners to examine our own diets and our attitudes toward what we eat."

「私は昆虫食を通じて、私たち西洋人に自らの食生活や食べ物に対する態度を再評価するよう促したいと思っている。」

p.15

the shelves of the supermarket carry only a narrow slice of what the world has to offer, one dictated by the preferences of North Americans like me.

スーパーマーケットの棚に並ぶものは、私のような北米人の好みによって決まる、世界が提供するもののほんの一部に過ぎない。

p.187

PIG 05049

Christien Meindertsma
2007/04/01
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PIG 05049

・写真集、資料集
・1匹の豚が食肉としてだけでなく多様な製品に利用されていることを解き明かした
・製品と材料の関係について無知な消費者の態度に言及
・生産と消費がかけ離れた現状と工業化への批評を視覚的に表現

SKIN→COLLAGEN→BEAUTY MASK

Beauty masks impregnated with porcine collagen are said to help reduce wrinkles and lines.

豚由来のコラーゲンが含まれた美容マスクは、シワやほうれい線を軽減する効果があると言われている。

p.5

BONES→COLLAGEN→GELATINE→COPPER

In refining metals, technical gelatine is used to help electrolysis proceed more smoothly. It improves the growth of copper crystals on the cathodes, which leads to a purer metal product at the end of the refining process.

金属を精錬する際、技術用ゼラチンは電気分解をスムーズに行うために利用される。これにより、陰極上での銅の結晶成長が向上し、精錬プロセスの終了時にはより純度の高い金属製品が得られる。

p.49

The Geometry of Pasta

Caz Hildebrand, Jacob Kenedy
2010/08/17
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The Geometry of Pasta

・レシピ集
・様々な種類のパスタを使った100を超えるレシピを、パスタの白黒グラフィックと共に紹介

Few (if any) of the shapes described were designed by any one hand … Instead, subtle differences have increased as methods to prepare modern Italy's staple food have passed from mother to daughter, neighbour to neighbour, and town to town.

説明されている形状のほとんどは、一人の人間によってデザインされたものではない。むしろ、現代イタリアの主食の調理法が親から子へ、隣人から隣人へ、町から町へと受け継がれる中で、微細な違いが増してきたのだ。

p.6

They[conchiglie rigate] are excellent with lighter sauces, such as light tomato or arrabbiata, as well as with chunkier vegetables, where the vegetables might enter into the shell's cavity and make for easy eating.

コンキリエ・リガーテは、あっさりとしたトマトソースやアラビアータのような軽いソースにはもちろん、具だくさんの野菜とも相性が良い。その理由は、野菜がシェルのくぼみに収まり、食べやすくなるからだ。

p.76

Pasta by Design

George L. Legendre et al.
2011/09/19
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Pasta by Design

・数理モデル集(?)、写真集
・パスタを形態で分析し、系統図を用いて分類
・92種類のパスタを数式と3D図で表し、それぞれの食べ方と写真を合わせて掲載

Just like any other indispensable invention, pasta matches the available resources (wheat - one of the most widely produced cereals in the world) with goals (the human need not only to eat, but also to have a somewhat diversified diet).

他の不可欠な発明と同じように、パスタも利用可能な資源(小麦は世界で最も広く生産されている穀物のひとつ)と目標(食べるだけでなく、ある程度多様な食生活を送るという人間のニーズ)を一致させた。

p.7

The Futuristic Cookbook

Filippo Tommaso Marinetti
2015/09/01
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The Futuristic Cookbook

・エッセイ、レシピ集
・未来派宣言を書いたフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティが、モダニティの速度と将来性を歓喜し、当時の食を批評、創造性を高める食のスタイルを提案する

Movement. Lightness. Chewing the infinite. Vertical takeoff. Tilting away from everyday life. The line of artistic power ever ascending. Love hot soft faraway. Hands present but no use. Critical rumble of the intestines. In the mouth of the Futurist Aeropoet a bit more honey from the bees that inspired the Greek poets.

動き。軽さ。無限への咀嚼。垂直飛行。日常からの逸脱。絶えず上昇する芸術の力。遠くて暖かく柔らかな愛。手はそこにあるが、役立たず。腸の批評的な鳴動。未来派の空の詩人の口の中には、ギリシャの詩人たちを魅了した蜜蜂の蜜がさらに増している。

pp.168-169

Aerofood
(formula by the Futurist Aeropainter Fillia)

The diner is served from the right with a plate containing some black olives, fennel hearts and kumquats. From the left he is served with a rectangle made of sandpaper, silk and velvet. The foods must be carried directly to the mouth with the right hand while the left hand lightly and repeatedly strokes the tactile rectangle. In the meantime the waiters spray napes the of the diners' necks with a conprofumo of carnations while from the kitchen comes contemporaneously a violent conrumore of an aeroplane motor and some dismusica by Bach.

右からはブラックオリーブ、フェンネルの芯、キンカンが盛られた皿が運ばれてくる。左からはサンドペーパー、絹、ビロードでできた長方形の板が出される。右手で食べ物を直接口に運びながら、左手は板を繰り返し軽く撫でる。その間、ウェイターは客の首筋にカーネーションの香りをスプレーし、厨房からは飛行機のエンジン音とバッハのディスソナントな音楽が同時に響き渡る。

p.194

On Eating Insects: Essays, Stories and Recipes

Nordic Food Lab et al.
2017/05/01
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On Eating Insects: Essays, Stories and Recipes

・エッセイ集、レシピ集
・昆虫食についての文化的、政治的、生態学的な側面を考察
・世界中でのフィールド調査で得た物語とともに、洗練されたレシピを紹介

a balance between familiarity and novelty is central to success. … A food that strikes a sound chord of recognition, yet still gives the eater the excitement of trying something new, is a sure success.

成功への鍵は、親しみやすさと新奇性のバランスにかかっている。食べ物が心地よい認識を与える一方で、食べる人に新しいものにトライする興奮をもたらす場合、その食べ物は確実に受け入れられる。

p.46

Let's eat lots of different things. Let's grow and make and harvest lots of different things. Let's share our different things with each other. Let's be plural and eat plurally. That's the future. It's what tastes the best.

さまざまなものを食べよう。さまざまなものを育てたり、作ったり、収穫しよう。それぞれのものを互いに共有しよう。多元性を大切にし、多元的に食べよう。それこそが未来。そして、それが最も美味しいのだ。

p.310

Alternative Moons

Robert Pufleb & Nadine Schlieper
2017/10/01
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Alternative Moons

・写真集
・エディトリアルデザイナーのNadine Schlieperと、写真家のRobert Puflebによる作品
・月の姿として切り取られた食べもののイメージを通じて、鑑賞者の想像力を掻き立てる
・慣れ親しんだ食べものを別の視点で見て楽しむ機会を提供する

Enjoy your own personal moon expedition – and the pancake as well!

あなただけの月面探査を楽しんでください – そして、パンケーキも!

p.70

以上がフードデザイン/アート/カルチャーの前編をお送りしました。ちなみに『The Futuristic Cookbook』の初版は1932年なので、およそ100年前から中期的なフードデザインの歴史は始まっていたと言われています(短期的な歴史はフードデザイナー第1世代の登場で、長期的な歴史はヒトが人を使って料理を始めた頃まで遡ります)。それでは後編もお楽しみください!

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こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。

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