はじめに
前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
今回はフードデザイン/アート/カルチャーの書籍を紹介する後編の記事です。中期的なフードデザインの歴史において取り上げられるDaniel Spoerri(1960年代にEat Artのムーブメントを主導した)や、短期的な歴史に大きな影響を与えたエル・ブジのクリエイティブチームメンバーのひとり、Luki Huberなどの作品集を取り上げつつ、食とデザインの分野で有名なものをピックアップしました。どのようなアイデアや表現が人々の心を動かしたのか?を学ぶきっかけになるはずです。
選書〈フードデザイン/アート/カルチャー〉
Designs and Sketches for Elbulli
Luki Huber
2019/07/18
🔗
・作品集、展覧会カタログ
・elBulliのクリエイティブチームで2002年から2005年の間に活躍したプロダクトデザイナーLuki Huberによるドローイングやスケッチ、記録写真を当時のストーリーと共に紹介
・フェラン・アドリア独自のテクニックや調理のために使われた人工物を多数収録
Stella Populis: Pop will eat itself
Blondey McCoy
2019
🔗
・写真集
・人々が信仰するセレブリティ達をトーストの焦げ跡として浮かび上がらせる
・焦げ跡など様々な場所に神の存在を見ること(パレイドリア現象としても知られる)を元ネタにした作品
分子調理の日本食
石川伸一/石川繭子/桑原明
2021/04/26
🔗
・レシピ集
・分子調理×日本食をテーマに慣れ親しんだ料理を、科学と技術で変えてみることで、新たな食の可能性を提示する
・ゲル化や架橋化を用いた料理のレシピと、それぞれの分子調理法の解説を掲載
Daniel Spoerri
Ingried Brugger, Veronika Rudorfer (eds.)
2021/07/20
🔗
・作品集
・オーストリア銀行美術フォーラムでの回顧展に合わせて刊行された一冊
・ダニエル・スペーリの作品や彼自身の蒐集品、インタビューを収録
・1960年代に食とアートの文脈を見出した前衛芸術家
The Poverty Line: Chow and Line
Stefen Chow et al.
2021/08/31
🔗
・写真集
・貧困ライン(それ以下の収入では、最低限の栄養、衣類、住まいのニーズが満たされなくなるというレベル)をテーマに、世界各国の貧困の現状を描写する
・貧困ラインとして定義される金額で、ひとりの生活者が1日に購入可能な食材の写真を掲載
・貧困を課題として捉える理由について、栄養不足や教育格差につながるという手段的な懸念と、道徳や人権といった本質的な懸念に言及
Odd Apples
William Mullan
2021/10/05
🔗
・写真集
・外は真っ白、中身がピンク、提灯のような形、カエルのような見た目、あるいは星形など、様々な種類のリンゴの写真を収録
・各品種の原産地、初めて記録された年、収穫場所を含めた説明を記載
Cooking With Scorsese: The Cookbook
Hato Press
2021/11/05
🔗
・作品集、カット集
・ジャンルを問わず、食をテーマにした、あるいは食が登場する映画のシーンを切り取って収録
・調理や食事の所作、時にはセリフから食の美学やストーリーを想像させる
Better Food for Fighting Men
Matthieu Nicol
2022/09/24
🔗
・米陸軍ナティック兵士研究開発技術センターで、主に1970年から80年代にアーカイブされた記録写真を収録
・食品の物撮りから、実験室での評価の様子、パッケージ、盛り付け例まで様々な角度でアーミー食を描写
以上がフードデザイン/アート/カルチャーに焦点を当てた書籍の紹介でした。フードデザインが一部の裕福な人々のためのものではないことや、食材の地域性と密接に関わること、映像作品の中で鑑賞者を作品に没頭させるためのツールとして有効であること、局地での食事は短期的なフードデザインが始まるより前にデザインされ始めていたことなど、各書籍がフードデザインをよりよく知るためにとても貴重な内容となっています。
これにて一連の本紹介記事を終わりにしたいと思います!いかがだったでしょうか。マガジンにまとめているので、もしお読みになっていない記事が合う方は、ぜひチェックしてみてください!
ここまでに紹介しきれなかった面白い本もまだまだあるので、またいつか別の記事で取り上げられたらと思います。
繰り返しになりますが、こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
──
本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。