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『彷徨う意味』#1 消しゴムのカス

 ふと、思い出す。消しゴムのカス。誰かが消し去った物から生まれた存在の生々しい現実感が眩しい。同じ塵ならこうでありたい。誰かがもういらないと、葬り去った過去が絡みつく現在の凛とした姿。

 消しゴムのカスの意味を考えようとしたら、簡単ではないし、意味は無いかもしれない。けれど机の上に残されたそれは「捨てろ」と言っているようでもあり「捨てるな」と言っているようでもあって、強い輪郭を魅せつけてくる。そういうものでも良いのかもしれない。意味など求めない動きと誰かの意図が重なった時、存在という圧倒的な力が正しさの美を伴って人の記憶を埋める。


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