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『彷徨う意味』#20 吸収

 膨大な時間を吸収した錆びた鉄は、触れるとパラパラと崩れて皮膚には優しい感触が残る。赤茶けたザラザラの一つ一つは物悲しい吐息とはまるで違う。解決しようのない音を乗せた呼吸が、今日もまた繰り返されるから、その分の余裕はあるかとまだ色の残った部分に聞いてみる。

 吸収するのはお前じゃないかと、返答されたような気がして、全部繋がっている時間をできる限り想像しようとする。目を閉じて捉える準備をする。せめて物憂げな呼吸の、小さな爆発を記憶にとどめる。


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