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法制審議会家族法制部会第37回会議議事録読む2~戒能委員・井上委員・武田委員・赤石委員・柿本委員

政治家って大変ね

議事録読むわ 

○戒能委員

 ありがとうございます。委員の戒能です。私はなお懸念を持っております。それで、この段階では二つお話しし、それから、最後の方で機会があるということですので、議事録に残していただきたい少し一般的なことをお話ししたいと思っております。一つは、先ほどの御発言にもありましたが、この部会では原則、例外論を採らないのだということが合意として、あるのではないかと思うのですが、しかし、この要綱案の第2の1を見ますと、(1)なのですけれども、どうしてもここに父母が共同して親権を行うというのが先に出てきてしまうわけです。第818条第3項の規律を明確化するためにということなのですが、この第2の1は婚姻中の共同親権の話と、それからその次の第2の2に出てくる離婚後の親権者の定めというものを統一して規定したいというようなお考えで、このようにまとめられたと思うのですが、誤解を生じるのではないかという危惧がどうしても拭い切れません。ですから、第2の1については明確に、婚姻中の共同親権の規律ということで分けるべきではないかと思っております。
 それから、同じ第2の1(1)ウの急迫の事情ですが、急迫の事情という文言になぜここまでこだわるのかというところも懸念を依然として抱かざるを得ません。これは文言が、例えば補足説明の方にも出ておりますように、家裁の手続などを踏んでいたならば間に合わないと表現されるならまだしも、民法の財産法上の急迫の事情とどうやって統一性がとれるのだろうかと、かなり幅広にこれは解釈されるのだということなのですが、解釈する主体は、司法解釈ですから、国民の理解があったとしても、司法解釈が果たしてそういう幅広の解釈で運用されるものかどうかというのが大変危惧をしております。
 現在のところ、以上の2点であります。
○大村部会長 ありがとうございます。戒能委員からは、先ほど懸念、課題という表現がございましたけれども、いろいろ工夫をしたけれども、なお懸念が残るということで、御指摘を2点いただきました。1点目は、これは前回も御指摘になった点かと思いますけれども、表現に関わるところかと思いますが、ここでの議論を反映したような表現になるかどうかということについて心配されているということだったかと思います。それからもう一つは、急迫の事情ということで、これも議論があるところでございますけれども、運用がここで考えられているようになるかどうかというところについてなお懸念があるという御意見だったかと思います。残りはまた後でということですので、後で伺いたいと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。

もしや、これで、非婚差別構造が残った?

○井上委員

 ありがとうございます。委員の井上です。まず、要綱案において法定養育費が法律上に位置づけられ制度化されることにつきましては、この間、第5次男女共同参画基本計画にひとり親家庭の貧困解消が入っておりましたので、その意味でも重要な取組だと考えています。
 また、今回の要綱案には、子の人格を尊重し子の利益を確保する観点から、父母間に対立があるとき又は協議が調わないときなどにおいて家庭裁判所が関与する仕組みを設けたということにつき、家庭裁判所がこれまで以上に重要な役割を果たすことになるということですから、体制整備をしっかりと行っていただきたいと思います。
 最後に、この附帯決議において、関係府省庁等において子の利益の確保を目指した協力という記載が入ったことに関しましては、先ほど事務当局からも、かなり踏み込んだ形でこの記載に至ったという経過も頂きました。この間のこの部会での議論をしっかりとこの文章に入れ込んでいただいたということだと思いますので、是非関係府省庁との連携の強化、その思いを受け止めていただいて、お願いをしたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは法定養育費の創設について積極的な評価を頂いた上で、家裁の体制整備あるいは関係府省庁との連携についての御要望を頂きました。ありがとうございます。
 そのほかはいかがでございましょうか。御発言ありませんでしょうか。

井上委員は賛成かな

○武田委員

 親子ネット、武田でございます。今日お示しいただきました要綱案(修正案)と附帯決議に関してということで、意見を申し述べたいと思います。
 ここまで、一部論点によりましては、消極的な立場又は留保という意思表示をさせていただいた部分もございますし、その基本的な考え方が変わっているわけではございません。しかしながら、諮問から約3年、今日は37回目の会議体なのですかね、議論を重ねてきたということ、あと、この部会に先立つ家族法研究会から数えれば4年を超える議論を積み重ねていただいたものと理解をしています。ここまでの議論を重ねた結果が本日示された要綱案であること、今日のこの修正案が多数の委員、幹事の皆様の賛同を得られる限界であると、個人的には理解をしておりまして、この要綱案に関しましては賛同するものということで意思表示をさせていただきたいと思います。要綱案の中で皆さんが共通した課題意識というところを今回、附帯決議という形でもお取りまとめていただきましたので、同様に附帯決議に関しても賛同という意思表示をさせていただきたいと思います。
 最後になりますが、ここまで、私は飽くまで一別居親当事者でございます。私が言うような意見にも耳を傾けていただきましたこと、長期間にわたる部会での討議に御参加いただきました委員、幹事の皆様方、部会長、事務当局の皆様に一当事者として御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。武田委員からは、これまでの御発言の中で提案に消極意見を述べられたり、あるいは留保されたりした点もあるけれども、しかし、これまでの審議の経緯に鑑みて、要綱案、そして附帯決議の双方に御賛同を頂けるという御意見として承りました。ありがとうございます。
 そのほかはいかがでございましょうか。

武田委員 賛成

○赤石委員

 ありがとうございます。赤石です。
 まず、この要綱案と、それから附帯決議、両方に意見を述べるということだったのですが、まず、これは先ほど戒能委員もおっしゃったところなのですけれども、少し違う角度で言いますと、今、報道などでも原則共同親権であるというような報道が流れているかと思います。どのように記者さんに対してレクチャーしているのかなと思うのですけれども、とはいえ第2の1(1)を見ますと、若干そういう誤解を生じるようなことになっていることは、これまでも何人かの委員の方が御指摘いただいております。ただ、私どもの議事録を見ると、離婚後の原則はどちらでもないということで、それについてこの審議会で御反対されている方はいらっしゃらないと理解しておりますが、そうであれば、そこについてははっきりした、議事録に残せるような形で御意見を賜ればいいかなと思います。
 それから、この要綱案が示した世界というのは、非常にがらりとこどもの養育に関して変わっていくということを提案されているかと思います。こどもは幼いときから保育園に入ったり、学童クラブに入ったり、放課後デイサービスに通ったり、塾に行ったり、医療を受けたり、歯科矯正などの治療もあります。それから小学校、中学校、高校、受験と入学と、パスポート申請みたいなこともその間にあるかもしれません。あるいは、携帯電話を幼いときに持つためには、親権者が判子を押さないと携帯電話がもらえません。しかし、向こうの別居親の、あるいは共同親権者の携帯電話の許可がもらえないので携帯電話はそのままもらえなかったみたいな、これは一例を挙げたのですけれども、産業界に大きな影響が出てくるのではないか、今言ったように、福祉分野でも医療分野でも教育分野でも影響が出てまいります。それから、10代の未成年の女のお子さんの妊娠中絶の許可というものも、今は少し曖昧になっているのですね、法律的には親権者の許可が要るのだけれども、少しなし崩しになっているところもあるやに妊娠相談を受けている方から聞きましたが、これを厳格に運営されれば22週に間に合わないということになりますので、急迫の事情で乗り切れるのかということはございます。全ての手続が変わるということを私たちは本当に確保しているのかなということは思っております。やはりもっと、37回もやってきたのですけれども、これでもスムーズに行えるということが一つ一つ検討すべきだろうなと思っております。
 それからこどもの意見表明に関しては、やはり少し納得し難い思いを抱えております。やはりお子さんたちの立場の声を聴くと、何らかの形で意見を聴いてもらいたかったというのがあるので、人格の尊重というのは非常に曖昧すぎるのではないかと思っております。
 それから、一方では協議離婚などを割と判を付いてしまう無関心な親というのがかなりの数、塊でいらっしゃいます。この方たちが何か合意しないときというのは、黙示的合意がなされたと、連絡しても何もなかったら黙示的な合意があったとみなすとなっていたのですが、これって機能しますよねというのはやはり、すみません、本当に心配なのです。なので、お答えいただければいいなと思っております。
 養育費に関しては、やはり根本的な解決ではなく、同居親の側が忙しくて、お金もなくて弁護士費用もないお母さんが、法定養育費が決まったとしても、その後の取立てというところでは自分が動かざるを得ないということになって、こどもの利益に本当になるには、やはりもう一歩進んだものが必要だったかなと思っております。非常にここも残念なところです。
 附帯決議について、後で意見を述べさせていただきます。
○大村部会長 ありがとうございました。赤石委員からは、大きく分けて二つだったかと思いますけれども、一つは、先ほど戒能委員が問題にされた点について、原則、例外ということについてこれまでの議論は議事録には残っているけれども、ここで委員や幹事の御意見を更にお伺いしたいといった御要望だったのではないかと思って受け止めました。その他は、現在の案が実施されたときに本当にうまくいくのかという御懸念と、それから、養育費についてはもう一歩踏み込むことがあったらよかったといった御感想を述べていただいたと理解を致しました。
 この後の御発言の中で、もし今の赤石委員の御発言に何か応じる方がいらっしゃるようであれば、触れていただければと思います。ほかに御発言いかがでしょうか。

赤石さんは反対

○柿本委員

 委員の柿本でございます。赤石委員と戒能委員と重なりますけれども、私も2点懸念事項がございます。
 これまで議論を重ねてまいりましたけれども、離婚後の親権者の定めのところでございます。原則というふうに、今申し上げられてきましたけれども、原則共同親権というマスコミ発表が聞こえてまいりました。原則はどちらでもないという表現ぶりになっていなかったのではないかというところが気になっております。2点目、急迫の事情のところでございますが、定義がきちんとされておらず、解釈に幅が生まれ非常に困った状態が生まれるのではないかと思っております。環境整備として、紛争がとても深刻になりつつあり、かつ複雑な状況になっていて、家庭裁判所の働きが非常に重要になると考えます。人的・物的強化などの手当てが確実にされることの見通しが立っていないことを懸念しております。
○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは御懸念2点ということで、先ほど戒能委員が御指摘になった点についての御発言と、それから、家裁の体制が整うだろうかということについて御発言がありました。赤石委員からは何か関連で御発言があればという呼び掛けがございましたけれども、柿本委員からは、御発言の前提として原則、例外とは考えていないという理解をお示しいただいたものと受け止めました。
 そのほか、いかがでございましょうか。
 御発言ございませんでしょうか。
 赤石委員、附帯決議については後で意見を述べるとおっしゃったのでしたか。

柿本委員 反対

○赤石委員

 続いて、ありがとうございます、お時間いただきまして。引き続き、共同親権が原則であるという誤解ではなかったですよねというところは御意見を賜りたいと思います。
 附帯決議について、法務省の皆さんが大変御努力を頂いて、関係府省庁ともいろいろやり取りをしてくださったとお聞きしております。ありがとうございます。有り難いのですけれども、要綱案が出てきたら、もっと手前なのか、その後なのですか、分かりませんけれども、絶対に関係府省庁とはどういう仕組みでやるのかというのは議論すべきであるとは思っております。
 その上で、私が一番残念に思っているのは、やはり予算をつかさどる財務省、それから税制をつかさどる財務省とのやり取りをしていただくしかないのではないかと思っておりましたが、それについてはなかったということでございまして、やはり税の控除のところが誰に付くのかというところは、新制度を作らなければいけないのか、どういうふうに今後のこどもの扶養を考えるのかということはとても大きな問題です。もし、養育費が払われていればお父さん側に扶養控除が付くとなりましたら、今やっと頂いておる手当とか、それから、修学支援新制度という画期的な修学支援制度が、いわゆる高等教育の無償化ですね、2020年から施行されておりますが、これは非常に仕組み上、所得の制限と連動しておりますので、これがどちらに付くのか、あるいは合算なのかと。確か今の修学支援新制度は所得の高いほうで計算していると思うのですけれども、こういう枠組み全てにものすごく甚大な影響を訴えてしまい、大学の無償化とかが絵に描いた餅になってしまう方たちが大量に生じてしまうのではないかということを心配しております。
 ですので、私としては、もちろん御努力いただいたことは有り難いと一応言えるとは思うのですけれども、そもそもやらねばならないことではないのかと思うのですけれども、このような形で附帯決議が付くこと自体については、良い面はあるともちろん思うのですが、大変申し訳ないのですが、この点がすごくダメージが大きいと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員からは先ほどの要綱案の方について、第2の2(1)クについてですね、これもこれまで議論してきたところですけれども、やはり皆様の御意見が更にあれば伺いたいという御要望と、そして、附帯決議につきましては評価をしていただいた上で、予算や財政の面で十分でないという御意見であったと承りました。

なぜか 附帯決議も反対していく

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弁護士古賀礼子
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