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法制審議会家族法制部会第30回会議議事録読む6~大石委員・原田委員

合宿告知した

共同親権導入は既定路線だし

来年の国会に期待もして

議事録読む

○大石委員 


 ありがとうございます。委員の大石です。最初に、5人の幹事や委員の方から出された資料について、大変私も賛同するところが多くありましたということを先に申し上げたいと思います。
 第1に関してですが、5人の方々から出された資料の第2のところに、親であることから生じる義務についての提案として甲案、乙案が出されています。私は甲案のようなものを新設するということと、それを親権の章の最初の辺りに、まずは親であることに由来するという話を持ってきた方が収まりがいいのではないかと思っておりまして、そういった方向の整理が行われることを希望いたします。
 それから、こどもの意見表明に関しましては、様々な懸念を各委員が表明されました。同意する部分もあるのですが、やはり、こども、あるいは若者の意見表明がなかなか現在、保障されていないという現状があります。どちらと住みたいというようなことだけではなく、例えば進学に関してですとか、いろいろな面でこども自身の希望や意見が反映されにくい現在の社会構造があると考えております。自治体によってはこどもの意見表明を支援するような制度を整えていっているところもありますし、そういったものを参考に、意見表明を支援していくような方向が望ましいのではないかと考えております。
 こうしたことを条文に書き込むまでには、いろいろな制度整備なども必要だという御意見ももちろんあろうかと思うのですけれども、いま十分には対応できないから書かないということになりますと、ではその間の人々はどうなるのか、その間にいろいろな経験をするこどもはどうなるのかというようなこともあるように思いまして、多少強めにこどもの意見表明というものを支持していくような方向であってもいいのではないかと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。大石委員からも、第1とこどもの意見表明について御意見を頂きました。第1については基本的に規定を置いていくということに賛成されるということで、具体的に5人の先生方の作成された文書の中の案のような方向がよいのではないかということをおっしゃっていただきました。それから、意見表明については、これをサポート、強化していく方向で考えた方がいいのではないかという御意見だったかと思います。

子どもの意見表明権とは、手続き保障なのだと理解した

○原田委員

 ありがとうございます。委員の原田です。第1のところに関連して、こどもの利益の観点からの議論が重要だということは、私も異論はないのですけれども、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響で現在最も問題なのは、やはりこどもの貧困ではないかということを考えると、その意味では、ひとり親に対する国の支援と養育費の問題ですから、親権者であろうとなかろうと扶養義務があるということが最も重要で、そこを切り出すという、そこまで私は今日、考えてなかったのですけれども、皆さんの御意見を聞いて、やはりそこを明確にするという形の規定の仕方がいいのではないかというのは賛成です。
 ただ、今の視点で提案のところで立ち戻ってこどもの利益の観点ということを考えたとき、それと別にDVに適切に対応する視点というのが全く別項となっていて、DVと虐待が別物であるかのように記載されているところが非常に気になります。戒能委員の御指摘もありましたけれども、児童虐待防止法によれば、子の面前で行われるDVは子に対する虐待であると規定されているにもかかわらず、これまでの実務では、面前DVがあっても、子に対して直接暴力を振るっていなければ、親権者としての問題がないかのような扱いがされる例が多く見られました。また、こどもの養育の基盤は監護者の安心・安全ということが重要であって、ここが安定していなければ子の最善の利益を実現する養育が困難になるという点からも、ここでのDVへの適切な対応という扱い方が虐待と全く別物のように書かれていることについては、非常に問題があるのではないかと思います。この虐待の中にはそのことが含まれていますという意味かもしれませんけれども、条文上それを明確に入れるのが難しいとしても、最終的な報告書にはこの点を明確に記載を入れていただきたいと思います。
 それから、DVというのはやはり立証が非常に難しいということがあって、共同養育制度を取り入れているイギリスやオーストラリアで、このDVの事例が排除されないということが指摘されています。その意味では、当事者の主張の当否が適正な手続の下で適切に認定されなければならないという表現には十分注意を払う必要があるということと、今回、民法の先生方から御意見が出ていて、フランス法やドイツ法の紹介がされているのですけれども、一方、委員からはイギリスやオーストラリアでの問題点の指摘が紹介されています。そこで御紹介いただいているドイツやフランスは共同養育かうまくいっているのかということと、そうであるとすれば、イギリスやオーストラリアとどう違うからうまくいっているのかという辺りも御教示いただければ有り難いと思いますし、そういうところを取り入れていく必要があるのではないかと思います。
 また、権利義務の関係では、義務を果たすために必要な権利というふうに考えるべきではないかと思いますし、別居親にもDV被害者がいることは私も承知しておりまして、加害者が親権者にならないようにするためにはどういう規定が必要なのかという観点が必要なのではないかと思います。
 第2の親権、監護権のところですけれども、第2の1(1)で、単独行使ができる場合について、急迫の事情とされているところがどの程度のことを考えておられるのかということが、非常に不安になっています。ここではこどもを連れて別居する場合が一番深刻であるとは思いますが、そのほかにもいろいろな場面が想定されます。そのときに緊急性というのをどんなふうに考えるのか、例えば大学入学契約など、協議を重ねてもまとまらず、申込みの期限が迫っているという場合も、これは急迫でいいのかというような問題です。
 ここでは虐待とかDVの場合が想定されていると思われるのですけれども、例えば保護命令の場合でも、暴力があってから一定の期間がたつと生命身体に対する危険があるかの判断が否定的にとられることがあります。しかし、被害者の方は安心した生活ができておらず、限界に達したという場合もあって、その場合、急迫といえるのか。DVや虐待がなくても、高葛藤が続いていて両親がいつもけんかしている状態の下でこどもを育てるのが急迫といえるのかなど、急迫の判断に懸念が生じる場合が多いのが別居に伴ういろいろな実態だと思います。
 このときに、急迫という事情があるか否かで子連れ別居の正当性を問われるということになると、一番問題なのは、支援がしにくくなるということではないかと思います。現在でも別居の支援をした行政や弁護士が訴えられる事態が生じております。これではDV支援に支障が生じると思います。これを先回りして言うと、事前説明の中で、急迫の事情があるか、つまり違法性があるかどうかということと子の引渡しは別問題で、急迫の要件に該当しないとしても、子を引き渡すべきか否かは子の福祉、利益を考慮してどちらが養育すべきかという観点から判断されるという説明がありましたけれども、別居開始の事情が考慮されないということはいえないですし、何より支援が消極的になる可能性が最も深刻だと思います。
 これらの観点から、急迫の事情ではなく、必要かつ相当な事情とするのでは駄目でしょうか。必要性の判断の中には急迫性も求められますし、別居した方が子の養育環境が整うのかという判断もできます。また、相当性を入れることによって、例えば別居の手段、無理に連れていったとか、暴力があったとか、あるいは全く音信不通にして、残された側が監護者指定等の申立てができないなどの状況になっているのかも判断理由にできるのではないか、そういう意味では、適否の判断もこの中で求められるようになるのではないかと思います。
 その点について、(3)があると言われるかもしれませんけれども、高葛藤の事案で同居中に裁判所に申し立てて、更に家庭内での葛藤が続くというのは、子の利益に合致するとはいえないと思います。適否の判断を事後的に求める制度が必要だと思いますけれども、その制度の中で必要性、相当性について判断をするというふうな流れになればいいのではないかと思います。
 すみません、長くなりますが、第2の1(2)でこの間、どういう場合に困る場合が出てくるのかという点でいろいろ言って、いや、それはああだこうだというのがありました。けれども、債務負担行為ではなくても、例えば大学入学契約などで辞退というのはどうなるのか、これは単独でできるのか、あるいは医療行為の範囲をどうするのか、緊急手術の場合は急迫の事情でカバーできるかもしれませんけれども、ワクチンの接種とか、少し笑われるかもしれませんが、わきがの手術などですね、例えば皆さん、わきが手術なんかは緊急ではないと思われるかもしれませんけれども、中学生や高校生の女の子にとっては非常に深刻な問題で、不登校の原因にもなりかねないような問題です。このような問題を解決するに当たって、日常行為と重大な行為の例示が難しいのであれば、共同親権の場合に監護者を必須とする方法によって解決すべきではないかと考えています。この点は、(3)のところで、監護者ではない親権者も監護者の監護を害さない範囲で日常行為ができるという定めを入れておけば、問題がかなり解決できるのではないかと思います。
 さらに、第2の2なのですけれども、第2の2(1)は、親権者の定めをしなくても協議上の離婚ができるとしても、やはり申立てをしていないといけないわけで、DV被害者にとってはとても負担であることは変わりないということがあると思うのですけれども、その間は問題を起こさないようにしていれば共同親権ができているのではないかという実績が作れるようなことがないように、迅速な手続、保全のような仕組みが必要だと思います。また、取下げをさせられるということがないように、取下げができないような規定も必要ではないかと思います。この場合、また、社会保障などの問題については、是非こども家庭庁からも御意見を伺いたいと思います。
 それから、(注1)ですけれども、何となくこの書きぶりは共同親権が原則であるような印象を受けます。子の利益を害さなければいいと規定しているように読めますが、子の利益というのは、害がなければいいというのは少し、何というか、ひどいと言ったら言葉が法律的ではありませんけれども、適当でないのではないかと。本来は共同親権が子の最善の利益に合致する場合であるべきで、害悪を及ぼす危険がなくて子の最善の利益が確保できるか否か、あるいは監護者がですね、これは何と書いてあったか、何とかの言動を受けるおそれがなく、双方が互いの人格を尊重して平穏な養育ができるか否かとかいうような、もう少し積極的な文言を判断要素の中には入れる、あるいは説明に入れるなどするべきではないかと思いまして、第29回に議論された親子交流のときの規定と同じような印象を持ちました。
 第2の3(2)かな、(1)かな、この表現だと監護者を決めるべきだと読めるのではないかという指摘が、読んだ人からありました。私は決めるべきではないかと思っているのですけれども、ここでは決めるべきだという意味ではないと説明がありますので、少し表現の仕方を工夫すべきではないかと思います。
 ここは、先ほど言ったように、日常行為と重大な行為の例示が難しいのであれば、基本的に監護者を決めると、そうでなければ多くの事案を家裁に持ち込むことになって、家裁がパンクするということではないかと思いますし、リーガルハラスメントの温床にもなりかねないという問題意識があります。分掌の合意もあり得るとは思いますけれども、先ほど言いましたけれども、(3)を残すことによって、監護者でない親権者が全く何もできないのかという問題もある程度解決するのではないかと思いますし、社会保障の問題も多くは関係するのではないかと思います。
 以上です。すみません、長くなりました。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは、いろいろな御指摘を頂きましたが、幾つかを取り上げてまとめさせていただきたいと思います。まず、第1については、扶養義務を中心に考えていくべきだというのが主要な御意見だったかと理解を致しました。それから、第2については、幾つかありましたが、一つ目は急迫の事情や日常の行為というのをどのように判断するのかということについて御意見を頂き、もしそれらの判断が難しいということであれば、監護者必置という方向で考えると問題が解決するのではないかという御意見だったかと思います。それから、2(1)に関して、保全や審判、調停の申立てをするということで、これとの関係で、保全や取下げについての対応をきちんとしておく必要があるという御意見、そして、これは先ほど池田委員からも出ましたけれども、(注1)の判断要素について更に考える必要があるのではないか、こうしたところが主要な御意見だったと思いましたけれども、そんなところでよかったでしょうか、原田委員。
○原田委員 はい。
○大村部会長 ありがとうございます。

監護者必置はありえないからねー

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