川田教授に学ぶ #単独親権と #子の利益
親権制について、学んでいる。
非親権者の法的地位について掘り下げて考えることを試みていた。
その上で、単独親権制への問いに切り込んでいく。
今日、親権はもっぱら子の利益のためのもの、子の福祉のためのものであるとする点ではまったく異論がない。では、民法が離婚の際に共同親権から単独親権への移行を規定することは、子の利益という観点からどのような意味をもつといえるのであろうか。
単独親権は子の利益か?シンプルな問いである。
共同親権から単独親権への移行については、「実際論」を理由とすることを指摘する。実際論とは、離婚後の共同親権の立法趣旨をつぎのようにいう。
父母が離婚すれば、居住を異にするだろうし、子はそのいずれかに引取られているだろうから、その父母が協議しなければ、親権を行使し得ないということは、子にとって甚しく不利益であろう
離婚後の共同親権は、理想論だが、実際論としては、実行が困難だというのだ。しかし、ここに切り込む。
・・・「実際論」を理由とし、そのかぎりでの子の利益がいわれるのだとしたら、単独親権への移行により他方の親の権利義務まで消滅させる必然性はなく、またそのことが子の利益にかなうとはいえないのである。
続けて、後見人についての言及が興味深い。
・・・後見人について、わが民法は、これを一人に限っており・・・その理由として一人の方が能率があがるからだとされるが、親権者についてもこれと同様には解しえないのである。
この後見人を一人とする規定は改められ、現在は複数人が就任することが可能である。能率よりも、負担の重さがかえって後見人への立候補を躊躇させかねず、子の福祉を妨げていた点などへの配慮あっての改正である。複数人が後見人となるノウハウは、共同親権の実行性を向上させうるのではないだろうか。
続く、親たる存在への言及が感慨深い。
思うに親権者は、子に生を与えることにより自らその地位を引き受けた者であるとともに、その子に対する愛情ゆえに一般にその最適任者とみられ、しかも子の健全な成長発達にとって両親が必要であるがゆえに共同親権者としての地位についた者ということができるのであって、離婚によって常に親の愛情への一般的信頼が失われるとか、子にとって片親の方が利益になるとかいえないかぎり、常に能率だけを考えて一方の権利義務を消滅させることはできないはずである。
離婚による一律単独親権強制制の不合理性を、はるか昔から指摘があったという発見が嬉しい。しかし、なぜ、単独親権制が維持されてしまったのか。
他説に言及しつつ続く。
長期的にみれば、日常の監護行為についてはともかく、非親権者に子に対する愛情と献身への願望があり、それが子の健全な発育にとって必要なかぎり、親がこれを注ぎ、子がこれに浴しうる途を開くことの方が子の利益にかなうものというべきであろう。・・・片親の方が子の利益になるとはいえないのである。
非親権者の愛情が注がれることは子の利益だよねということ。当たり前のことが仰らしく論ぜられているのである。そして、まとめられる。
・・・子の利益という観点からみれば、民法は離婚による単独親権への移行を規定しながらも、日常の監護行為など実際上の親権行使の不都合がないかぎりで非親権者に権利義務を承認し、これを明確にすることについて、解釈上考慮すべきことを要請している・・・。
共同親権の萌芽である。
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