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哀れと同情、ざまぁと罵倒_愛に乱暴

ずっと小泉孝太郎に対して勝手に「好青年だけどナチュラルボーンクズ」っていうイメージがあった。

超失礼なんだけど、ドラマやバラエティやCMで拝見して様々な役を演じていらしても、何だか、滲み出る育ちの良さなのか、あの素敵な目尻にシワが集まる笑顔からなのか、背後にお父様と弟(とその嫁)が浮かび上がってしまうからなのか。
悪気なく人をその素敵な笑顔で地底まで突き落とす人なんだろうなって勝手に思っている。でもここまで言っておきながら好きな俳優の一人です。

劇場予告でこの作品を知り、江口のりこを観たい!っていうのもあったけど小泉孝太郎のクズっぷりを観たい!という気持ちもあった。いやーまじでクズでした。

さてこの作品。
原作のあらすじをあらかた知っておいた方がわかりやすいのではないかな?という所があり、原作を読まず鑑賞した自分は中〜終盤あたりにある事に気付くのだけど、鑑賞中は確証が無くて2パターンの解釈を頭に入れながら最後まで観ていた。
鑑賞後にパンフレット読んで「ああ!やっぱそうなのか!」ってなったけど気付けなかった人は別の解釈を持ったまま終わるよね。それでもまあいいのか。それでも成り立っているか。

これから原作読まずに鑑賞される方へネタバレにならない程度に事前に教えたいことは
「劇中で描かれるSNSは原作だと日記」だということ。
さあ私からは以上!さあ鑑賞楽しんで!

予告だと
江口のりこが演じる主人公桃子が夫の不貞に耐えられず異常をきたし軒下にある何かをチェーンソーを使って・・・
という印象。

が、実際鑑賞してみるとチェーンソーはインパクトのあるツールではあるものの、それ以上でもそれ以下でもない。

桃子をそこまで追い詰めているのは夫や夫の愛人、姑じゃなく、桃子の性格や過去から積み重ねてきたものからの結果であることが結構序盤からジワジワ感じてきて中盤では確信に変わる。

桃子、身近にいそうな意識高めに見える女性。

衣装も役柄からイメージして選定していたとパンフに書かれていて納得、服は好きな感じだったからちょっとギョッとしちゃったけど。あの、桃子の服、めちゃくちゃ好きだった。好き。
何だろな、この桃子のキャラクターに身近な人物が突き刺さるような人多いと思う。
表向きな桃子みたいなこういう人って一部の女性にとっては憧れのロールモデルであり、桃子もそれを意識していると思う。
ただ憧れのロールモデルとはいえ本音と建前は存在しており、桃子はそれを実感しつつも夢を見ながらSNSやってた人なんだろな。


桃子がおかしくなったことに対し、桃子自身が「変をあえて演じている」と説明するシーン、妙に納得し共感もした。
チェーンソーで床下を開け、家の柱を切る。あまり笑顔を見せない桃子が笑顔を見せる印象的なシーン。普段しないことって楽しいよね。

以前「ヘンテコな動きをすると元気が出る」という記事を読んで心に残っており、ちょっと実践もしたりして。やはり日常とは違う行動を自ら選んですることはストレスの発散になると実感済み。
それには破壊や自傷も含まれるのかな。
桃子のそんな異常な行動には、100%人を責めることができない自責の念が強いこともうかがえる。
不倫相手の家から出た後、物音がして、躊躇するものの引き返した桃子には自責の念以上に過去の自分と照らし合わせ、負のループを起こさせたくない気持ちもあったんじゃないだろうか(期待もしていたかもしれないけど。


最後の最後、桃子を縛り付けていた何かを解くのは、誰にでも発することのできる言葉で、発したのは桃子がネガティブに感じていた人物。
ここが非常に呆気なくもあり、この作品のシメとして縛り付けていた何かをバチンと大きな裁ち鋏で無理やり解く強いインパクトがあった。
些細なことの積み重ねで、ちょっとした「ねじれ」や「誤解」は解けなくなっていくんだろうなあ、と。

日常的な人とのやり取りでもあるもんね。
同じことを人に伝えることでも、言い方や態度でずいぶん印象は変わる。
姑にしろ元上司にしろ、薄い表層ではうまく取り繕っているようにしているが薄情さが滲み出ているし、その場しのぎの優しさが後々相手もとい自身の首を絞めることに気付いていない。

その中でのクズ夫。
「君が楽しそうにすればするほど俺は楽しくない」
ズーン。桃子じゃないのに、強いショックを受けましたよ私。
私なら目の前でへたって泣きます。
うぎゃー、言ったなこの野郎、表出ろ、よく言えたもんだなその口が、クズやろう。
取り繕う思いやりのないNOデリカシー野郎め。NOデリカシーNOライフ。
でもそこまで言わせてしまう桃子の存在もあるのだ。

色々「詰んだ」状態になっていく桃子に対して、哀れだな、とも思うんだけど
自分が過去やったことに対しての振り返りと因果応報と思えば、まあまあしょうがないよね、とか思ってしまう。
それでも偉いよ。リフォームするはずの離れの取り壊しを見ながらアイスを頬張る桃子。偉いよ。

ただ世の中って不条理なんだよ。
きっとあのクズ夫はその後数年は幸せに暮らすだろうし、姑も元上司も特に変化もなく、桃子のことを今は笑って話せることのように人に話すだろうし。

それでも偉いよ。あの中国人の青年が勇気を振り絞って発した言葉に、桃子だけは前を向く、桃子に幸あれ。

ホラーと言われたらホラーなんだけど、これがホラーなら現実世界全てがホラー、あなたの生活も、わたしの生活も。

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