【校閲ダヨリ】 vol.8 誰も傷つけたくない。傷つく必要なんてない
誰も傷つけたくない。傷つく必要なんてない
みなさんこんにちは。
突然ですが、子どもの頃の将来の夢って覚えていますか?
私は物心つく前に両親に「売れない女優!」と言うように仕込まれていました。売れると忙しくて大変だし、そもそもかわいくないと売れないから、売れない女優。なかなかひどいですね。
自分で考えられるようになってからは、お煎餅を経て、お花屋さん、ケーキ屋、という女の子の将来の夢ランキングにランクインしそうな一般的な将来の夢をもって、最終的には校閲者になりたいと思って実際になれているので、今のところ人生はまずまず満足です。
さて、上の文章の中に差別になり得る表現が含まれているのにお気付きでしょうか。
正解は「ケーキ屋」という表現。
職業や肩書きを示すのに「○○屋」とするのは差別語、不快語にあたる、とされています。蔑称、その職業を見下げている表現になるようです。
ではお花屋さんもアウトでは? と思いますよね。でもこちらは、愛称的な書き方なのでOKということになっています。他にも、呼称ではなく、お店そのものを意味する「○○屋」もセーフです。
つまり、
先日八百屋にすすめられた美味しいと噂の料理屋でパン屋さんの娘と食事をする。
この一文は最初の「八百屋」という表現のみが引っ掛かり、他は問題なしということになります。
ちなみに、「床屋」という表現は愛称だろうとなんであろうと理髪業、理髪店、もしくは理容師と直さねばなりません。
「床屋さん」なんて古き良き時代の空気が漂ってきていいと思うんですが、「理髪店の方」とエンピツを入れなくてはいけない校閲者の苦悩……。理容師さん自ら誇りを持って「床屋」と名乗ることもあるので、なんだかなあと思うこともしばしばです。
差別語、不快語は使う側にそんな気がなくても、誰かを傷つけてしまう恐れがあるので気をつけないといけませんね。ただ、今後世論が過剰に敏感になって言葉狩りにならないことを祈るばかりです。
文責:Y
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