【校閲ダヨリ】 vol.62 僕の夏休みの自由研究①(計量言語学への招待)
みなさまおつかれさまです。
世間では夏休みの期間ですね。
私もささやかな休日を取得することができましたので、久しぶりに気の赴くままに調べたいことを調べてみました。
今回は、個人的な自由研究の発表です。
テーマは、「計量言語学」。
言語学のいち研究分野なのですが、実をいう私もほとんど馴染みがない世界で、ゼロからのスタートです。
みなさんがイメージする言語学は、多くの場合「表現に関する考察」など、扱いたい事象を取り立てて、先行研究などとの比較から論を構成するものなのではないかと思われますが、計量言語学は、それらとは若干スタンスが異なります。
「計量」と付くように、計量言語学は「データをはかる」ことを出発点として言語をとらえようとする学問です。
言語学でいうデータってなに?
私も、最初の疑問はそこでした。
データというと、なんというかデジタルのイメージがあるような気がしますが、計量言語学の世界でいうデータは簡潔にいうと「単語の数」のことです。
膨大な単語数を集め、分類・分析していくことによって、言葉の特徴や、時代の特徴、作者の特徴などを導き出す。「定量から定性へ」というマクロな学問分野です。
独特の方法のように思われるかもしれませんが、広い意味での計量は、言語学で論を組み立てるときには割とよく行われています。
私もその一人で、「のだ」という助詞について卒業論文を書く際には、テレビ番組から用例を1000個ほど集めました。
「自分の論を裏付けるためにはデータが必要」ということになりますので、どうしても計量的方法が必要になるのですよね。ただし、これはあくまで「広い意味」での計量です。狭い意味では「推測統計(収集した全データの性質を推測すること)」を指し、裏付けのためのデータ収集ではなく「さまざまなデータを集めるところが出発点」ということになります。
今回は、この狭い意味での計量言語学を扱います。
推測統計的な計量言語学のスタートは、第二次世界大戦直後とされ、意外にも日本発の研究分野でした。
日本語の計量言語学なので、「計量日本語学」または「計量国語学」と呼ばれますが、これは1948年に設立された国立国語研究所と1956年に創立された計量国語学会を中心に発展してきたといえます。
なぜ日本発かというと、この種の学会の創立が世界初であったことと、欧米ではまだ「計量言語学(Quantitative Linguistics)」という分野名さえも誕生していなかったことがその理由のようです。
具体的には、どんな感じで進めていくの?
そう。そこが知りたいですよね。計量言語学といっても、その出口(下位分野)は「計量文法論」や「計量文体論」などさまざまですので、今回はそのいち下位分野である「計量語彙論」について、手法をご紹介したいと思います。
……とはいえ、私はこの分野のまったくの素人。よりどころが必要です。
便利な世の中になったもので、YouTubeでなんと無料で講義を受けることができました。
国立国語研究所・山崎誠教授の解説でとてもわかりやすくその「入り口」が示されていますので、みなさんももし興味がありましたらご覧になってみてください。
さて、動画を貼って終わりだと自由研究にならないので、私が勉強したことをまとめます。
計量語彙論では、「1つの言語に関する語のなんらかの集合という意味での語彙の構造的特色を,統計的方法で追求することを主な目的(日本語学大辞典)」とします。
?????
確かに、かなり意味が不明瞭です。(?????はそのまま私の声でもあります)
もう少し先を読んでみましょう。
「語彙の構造には質的構造と量的構造がある。質的構造は語彙の要素の意味的対立関係の総体を意味し,関係図で表現されることが多い。それに対し,量的構造は語彙の分布法則を意味する。そのため,分布を近似的に再現できる数式,つまり近似式で表現されることになる」
??????????
さらに意味不明ですかね。
これはつまり、こういうことになります。
計量語彙論の目的=語彙の構造的特色を統計的方法で明らかにしようとする
構造=質的構造/量的構造
質的構造:グラフなどの図で示される
量的構造:数式で示される
計量語彙論は、言葉を取り扱うことには違いないのですが、その出口はグラフや数式といったいわゆる「理系的」な手段で普遍的な構造を示そうとする分野なんですね。
感覚的には、宇宙の成り立ちを数式で示そうとする理論物理学の「神の数式」に近いものを感じます。
ちょっと、ワクワクしてきましたか?
私はとてもワクワクしております。
以降は計量語彙論の手法を具体的に見ていくこととなりますが、長くなってしまうので、ワクワクをまとめて今回は終わりにしたいと思います。
まとめ
それでは、また次回
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