婚活18日目

瑠璃は雑誌を伏せて少し迷い美容師に伝えた。
「おすすめの髪形とかってやってもらうことできます?」
「おまかせですね!ありがとうございます!」
彼女は嬉しそうに小さな体と細い指先で鋏を持ち瑠璃の髪形を少しづつ透いていった。

美容師が瑠璃の席から離れているとバイブの振動が伝わった。確認してみるとまたもや!

美容師と会話をしろ!

このアプリは頻繁になり瑠璃の行く先を方向転換させようとする。
「もううるさいなー」
スマホをポケットにしまうと今度は振動がいつまでも響く。

瑠璃は美容師に話しかけてみた。
「ご飯食べました?」
「?はい!食べましたよ?」

とっさの事で何を話して良いか分からない。美容師も突然の質問でびっくりしていた。美容師が振り向いている最中にスマホを確認すると、R.Kのアプリからアドバイスがあった。

YESかNOで答えられない質問をしろ!

相手を褒める事も視野に入れろ!


珍しくR.Kアプリから2連撃が届いた。

「お待たせしました」
「その付け爪良い色ですね。どうやってやったんですか?」
「えっ!ありがとございます(^^)うちのお姉ちゃんネイリストなんですよ!一週間に一回手入れをしてもらってるんですよ!その代わり、姉の髪も私が切ってますけどね(*'ω'*)」

「姉妹で役割分担できるって良いですね♪指先も可愛らしくて綺麗で羨ましいです!」

なんとか褒める事はできているのだろうか?逆に小柄な美容師は瑠璃に問いかけて来た。

「今日はどこかへお出かけですか?」

美容院ではよく聞かれる質問である。

「いえ、帰るだけです」

「そうなんですね!お化粧をしているからこれからどこかへ行くのかと思いました」

この美容師は瑠璃が何度も来店しているのを見ていて普段お化粧をしていない事も当然ながら知っていた。

見ている人は見ている。それがほんの些細な事でも誰かしら気付いてくれる事もある。

「もうこのお仕事は長いんですか?」
「そうですね・・・もう7年は経ちます(^^)/学生の時からアルバイトしていたんですが、気付いたらそれぐらい経っていました」
「瑠璃さんは普段何をされているんですか?」
「福祉関係で働いています」
「店長!ヘアーオイルここに置いておきます」
「ありがとう!」

瑠璃は驚いた!この小柄で20代半ばぐらいの彼女が店長だったとは
人は見かけによらない。実力で年齢なんて関係ない。
鋏を持つ彼女の小さな左手の薬指にはサイズの合ったシルバーリング
がしっかりとはめられていた。

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