去年、最愛の両親を交通事故で亡くし、実家にて2匹の猫と一つ屋根の下で暮らしている瑠璃(35)は寂しさを紛らわすため、人生のパートーナーを探し求め婚活の世界へと足を運ぶ。 恋愛経験のほとんどない彼女にとって婚活パーティーのマッチングですら高い壁であり、なにも始まらない婚活動を過ごす日々であった。 あるとき、幼稚園の幼馴染であった、慶太に全く新しい婚活方法を紹介すると言われその話を鵜呑みにしてしまう。 35歳から始める婚活生活の物語がここで始まる。
瑠璃は雑誌を伏せて少し迷い美容師に伝えた。 「おすすめの髪形とかってやってもらうことできます?」 「おまかせですね!ありがとうございます!」 彼女は嬉しそうに小さな体と細い指先で鋏を持ち瑠璃の髪形を少しづつ透いていった。 美容師が瑠璃の席から離れているとバイブの振動が伝わった。確認してみるとまたもや! 美容師と会話をしろ!このアプリは頻繁になり瑠璃の行く先を方向転換させようとする。 「もううるさいなー」 スマホをポケットにしまうと今度は振動がいつまでも響く。 瑠璃は美容
その3人とは、公務員に不動産屋に証券会社であった。年収・ルックス・その他全てが瑠璃と釣り合わなかった。 「どの方がいいですか?」 『私は特にステータスとかこだわらないので』 「欲の無い子ね!でも、そういうあなたは以外と早く結婚出来たりするわよ。お見合いできそうな人がいたら3日以内に連絡するから待っててね」 相談役の気が強そうなおばさんは面倒見がよく以外と瑠璃の話と価値観を丁寧に聞き入れてくれた。そもそも、相談役というのは面倒見が良い人ではないともしかしたら務まらないのかも
『ううん。いいのよ。私も慶太にそんなことがあったの知らなかったし。隼人君きっと辛かっただろうね』 大好きな人に裏切られると言うのはどれほど辛い事なのだろうか!? 【俺はさー隼人の二の舞を起こさないようにさ、仕事を辞め会社を立ち上げ人々が婚活で嫌な思いをさせないようにR.Kと言うアプリを開発したんだよ】 きっと、慶太にとってはR.Kと言うアプリは隼人の無念そのままだったに違いない。 【とりあえず、婚活パーティーよりもまずは相談所行ってみるとこるからやってはどうかな?】
ここは雑居ビルの屋上で二人が登ったこのビルは他の建物とは比べ物にならないぐらい高さで見晴らしがとてもよかった。慶太はフェンスの正面へとむかっていきそこには小さな鉢があり吸い始めたばかりのタバコをお線香のように立て静かに手を合わせた。 【瑠璃もお線香あげて!】 慶太はもう一本タバコを手に取り火をつけたタバコを瑠璃に手渡した。 『うん?』 瑠璃は状況はわからないが誰かが不幸にあった事は悟った。 【悪いね。付き合わせちゃって!でもこの街の景色も捨てたもんじゃないでしょ?下
『食べてるんだから辞めてよ!』 瑠璃はお腹が減っていたのか、ハンバーガーを貪りながら鏡に映った自分の姿をチラつかせる。 【瑠璃は本気で婚活をやってる?】 『う~ん。両親が亡くなってからネコと暮らしてるから出来たらいいなぁぐらいかな!』 【それじゃー可哀そうだよ】 『そうね。でも、私自身が別に選べる立場じゃないから』 【いや、可哀そうなのは男性がだよ!男は真剣に相手を探すために婚活動に励んで遊び感覚で来れない額を払ってパーティーに挑んでるのに。瑠璃のようにリスクも無くそのよう
この状況ではもう手をつけようがない。一応、ルールでは割り込むのはマナー違反ではない。現に男性6人に対し女性1人と言う状況も存在していた。 でも、婚活パーティーで合う事のできた人と言うのはもう一生会えない可能性が高い。仮に街ですれ違ったとしても気付かない存在に違いない。 しかし、瑠璃は動けない。会場内のど真ん中で硬直状態となっていたが、奇跡は起きた。 16番の男性は小柄な女性に手を振り瑠璃の元へと近寄ってきた。 「さっきはすみませんね。僕に話しかけてくれようとしましたね
瑠璃が男性と話した内容は主にネコの事であった。 『猫は大丈夫ですか?』っと片っ端らから聞いていきその中でも4番11番16番の男性は特に猫の話には食いつきがよかった。 一回目のフリータイムを行っている最中にスタッフが順番に紙を渡していた。一回目の自己紹介タイムで印象がよかった人を三人まで投票することができる。その結果を記載した内容であった。 スタッフは瑠璃にも手渡してくれ開票してみると、16番の男性が自分に中間投票をしてくれていたのであった。瑠璃にとってこんなことは生まれて
都心から少し離れた地域にそびえ立つ摩天楼この30階でオープン形式の 婚活パーティーが19時から始まる。 瑠璃は30分前に最寄り駅に到着。行き場所もなく建物の前をグルグルと徘徊し、10分前に大きな屋外型展望エレベーターに足を踏み入れると、吸い込まれるように30階へと向かっていく。 エレベーターの乗客は全て参加者と思われるような格好をした人たちのみであった。瑠璃の中で既に緊張は高まった。 受付で名前を伝え・ボールペン・プロフィールカード・番号札『25』を渡され男性・女性に別れ
一刻と時間は過ぎてしまい、ようやく目が覚めた。 私はお化粧をしたことがない。できない。知らない。ふと、母親の口癖をこのとき思い出した。 「最初からできる人なんていないよ」 脳裏にその言葉をかすめた。 瑠璃はレジへと並びさっきの店員さんの元へと近寄った。 『あっ!あの!えっと、その!』 「はい?」 瑠璃は30を過ぎてから懇親の勇気を振り絞って大きな声で 店員に一言伝えた。 『初心者でもできるアイシャドウのセットをください』 店内は静まり瑠璃へと視線が向けられた。瑠璃は恥ずかしそ
何度も入力するが、画面には大きく✖の記号。それだけではなく、 『消えない』 このアプリを開いて閉じようとしたが閉じることすらできない。 調べる事もできない。仕方なくショッピングモールへ行き化粧品売り場へと足を踏み入れた。 『こんなところ入るの初めて~』 普段お化粧をおろそかにしている瑠璃にとってこんなところに入るのは初めてであった。学生やOLなど様々な客層が見られる。 女性客たちは店員の女性にアドバイスを貰いながら様々なメイク道具を試していた。 「いらっしゃいませ!何かお探し
慶太と別れてから瑠璃は家に帰りお風呂にくつろぎながらスマホを触りR.Kと言うアプリをダウンロードしてみた。 『何これ!?自分の個人情報を入力するの』 そのアプリは名前・性別・趣味など一般のプロフィールなどとかなりの項目数があった。 あなたの学生時代の部活動は? 『剣道』 あなた一番お金を使っている物は? 『猫・食べ物』 無我夢中で情報を入れ続ける事2時間が経過した。 気が付けば、夜も更け深い眠りへとついた。 翌日、出勤でこの日は遅番勤務であった。 瑠璃は介護福祉士と
慶太と瑠璃はほろ酔いの状態で夜風に辺りながらお互いの今までの経歴を語りながらどこかへと向かった。 【えっ!?瑠璃のご両親亡くなったばかりなの?】 『いきなり孤独を感じるようになって両親は健在?』 【覚えてなくても無理ないよね。俺は小学校低学年の時に病気で母親を亡くしてつられるようにして父親も後を追うかのようにすぐ亡くしたんだ】 慶太が転校した理由は身寄りがいなくなってしまい、施設に預けられた。 『ごめんね』 【ううん、施設はそれでも大家族みたいで悪く無かったよ?色々な理由で
【瑠璃!婚活してるのか~】 瑠璃は恥ずかしそうに静かに頷き周囲の視線を確認した。 【そうだったのか~俺も行った事あるよ!】 『本当!?結果は!?』 瑠璃は珍しく、慶太の婚活パーティーのお話を詳しく聞いてみた。 慶太の情報によると、合計行った回数は6回その内1階はマッチングせず、残りは女性とマッチングしたらしい。 その後、食事やお茶まではするが2回目以降会った女性はいないとのお話で合った。行った企画は年下女性・ぽっちゃり婚活・趣味活・オープン形式など、瑠璃と違い同じ企画に行く
瑠璃は参加者の男性に苛立ちや悲しさなどはなく、自分を責めるような思考へと変わっていった。 その日の帰り、パーティー会場の最寄り駅の繁華街を歩いていると、後ろから男性に声をかけられた。 【あれ?瑠璃だよね?】 振り返ってみるが分からない。男性と絡みの少なかった瑠璃には予想もつかず、マルチ商法か勧誘ではないかと予想した。 【俺だよ!俺!慶太だよ!】 『慶太!?あっ!』 その名前で閃いたのは一人しかいなかった。彼は瑠璃の幼馴染で小学校低学年の時に引っ越して以来の出会いであっ
彼らの②連撃により、瑠璃は戦意を喪失した。 結局、この日はマッチングは1組であり、少し嫌な気分が帰ってきた。 同じ主催が別会場でパーティーを主催し更に女性の参加費が0円~500円の場合、リピーターと呼ばれる参加者に遭遇する事も少なくない。 個室形式のパーティーも場合、7人参加予定で1人がリピーター。 更にもう一人が欠席などの理由で5人しかいないだなんて珍しくない。 瑠璃は行き慣れた会場ばかりに目を向けていた為、このような形となってしまった。しかし、彼女は懲りずに同じ主催