サッカー日本代表伊藤純也の書類送検で思い出すあの書類送検
サッカー日本代表伊藤純也が不起訴が見込まれる書類送検
週刊新潮において報道されたサッカー日本代表伊藤純也の準強制性交致傷被疑「事件」(あえて「事件」と鍵かっこをつけています。)について、大阪府警察本部は大阪地方検察庁に書類送検しました。大阪地方検察庁が不起訴処分するという見通しについても併せて報道されました。
なお、今回の記事の画像は世田谷警察署の画像をお借りしました。
刑事事件の公訴を提起する権限は検察官個人に与えられており、他の者や組織が刑事事件の公訴を提起することはできません。したがって、事件を受理した都道府県の警察本部は必ず事件を検察庁に送致します。被疑者を拘束したまま事件を送致することを身柄送検、事件の捜査資料等を送致することを書類送検といいます。つまり、送検は事件について被疑事実が固まったなどという事実とは関係なく行われるもので、特に書類送検についてはその多くが不起訴となるものが多いと聞きます。
そして、書類送検というと私はある事件を思い出します。
李信恵さんを脅迫したしまふくろうさんの事件
反差別界隈の中で書類送検された事件として思い浮かべるのは李信恵さんを脅迫したしまふくろうさんの事件です。
行動界隈がなす差別的な活動に対して様々なアクションがなされ、その中で様々な人物が注目されてきました。初期において最も著名となったのは東村山問題に関する言論で中心的な役割を担ったAMUS(荒井禎雄さん、松沢呉一さん、宇留島瑞郎さん、3羽の雀さん)の4名でした。そして、その頃端役的なポジションであった李信恵さんが注目されるようになったのが、ガジェット通信「差別はネットの娯楽なのか」シリーズでした。特に沖縄県在住のしまふくろうさんが脅迫被疑事件で書類送検され、そのしまふくろうさんを告訴したのが著者である李信恵さんであるということは大きく注目されるきっかけとなりました。
ただ、その後刑法や刑事訴訟法の取扱いを理解した上で考えると、李信恵さんは別に開かない壁を打ち破って書類送検にこぎつけたわけでもありませんし、書類送検という言葉の印象から刑事事件の本格的な捜査が始まるように感じたりするわけですが、警察の事件処理が終わったことを警察に伝えて事件関係の書類を引き継いだだけのことであることがわかるようになりました。
在日コリアンを脅迫するようなクズはそれなりの制裁を受けるべきですし、書類送検によって事件が一区切りしたことは喜ぶべきことですが、李信恵さんは大きな宿題を忘れたままにしているのではないかと今では感じます。それは、書類送検がなされた後の検察官の処分内容の公開です。
書類送検は前述のように被疑者の有罪が濃厚になったわけではありませんが、一般人が受け取る印象は有罪濃厚と事例が多いように感じます。だからこそ、李信恵さんはしまふくろうさんが公訴を提起されたか、不起訴となったかを明らかにすべきであったと思います。在日コリアンを脅迫するクズであったとしても、不起訴となって罪に問われる可能性がほとんどゼロになったか、公訴を提起されて裁判所で審理されることになったかを伝えることは、人権を守る立場から記事を書いている李信恵さんとして発信すべき情報であると思います。増してや、告訴した者に対しては検察が処分結果を文書で通知してくれますからわざわざ取材などする必要はないのです。その後、書類送検の知識が増えることと比例して、私の心の中で李信恵さんの言論人としての不誠実さが大きくなっていきました。
なお、しまふくろうさんが公開法廷での審理や略式手続に付されるようになると必ず発信していたはずと私が感じる李信恵さんがその後何も発信していないことから、しまふくろうさんは起訴猶予で不起訴となり、ご自分の意に沿わない結果であったことから李信恵さんがしまふくろうさんの事件に触れることがなくなったのではないかと私は想像しています。