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「福岡市 教師によるいじめ」でっちあげ事件報道検証 2~西岡研介さんの唯一の記事の正当性の根拠である福岡市教育委員会が敗訴した第一審判決は信用できるのか

村田兆治さんの死去に関する西岡研介さんの私見

 令和4年11月11日、元プロ野球選手であった村田兆治さんが自宅の火災が原因で死去しました。この死去を報じる報道について、西岡研介さんはこうおっしゃっています。

村田兆治氏死去についてのテレビ各局のニュース。自分が目にした限りでは総じて、今年9月の事件に触れていなかった。「故人に対する配慮」か何か知らんが、それは報道でも、ニュースでも無い。9月の事件が今回の火事と無関係と言えるか? そういうええ加減な仕事してるから視聴者から見限られる。

@biriksk

 ニュースを一面的ではなく多角的に見るべきであるという西岡研介さんのご主張は、ジャーナリストとして非常に結構な視点であると思います。ただ、この非常に結構な視点がご自分の仕事に対する検証となると明後日の方向に行ってしまうのはどういうことでしょうか。

「福岡市 教師によるいじめ」でっちあげ事件の福岡市に対する判決を一面的に解釈する西岡研介さん

 西岡研介さんは、「俺たち訴えられました!SLAPP裁判との闘い」において、次のように述べて自らが報じた週刊文春でのデマ記事を正当化しています。

 ただ、裁判の一審判決では、福岡市教育委員会が負けて、子供の両親が勝った。一審は、教師による暴力といじめ行為を認め、福岡市に対し二二〇万円の損害賠償を命じたんよ。ちなみに両親側は、一審判決で教師個人の責任が認められなかったのを不服として控訴した。というのも、国賠法(国家賠償法)では、「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる」って定められているから、教師個人は賠償責任を免れよったんや。そういう一審判決が出ているのに『でっちあげ』著者の福田ますみさんは、教師による虐待がさもなかったかのように書くから、「どっちがでっちあげやねん?」という話やわな(笑)。

鳥賀陽弘道・西岡研介著「俺たち訴えられました! SLAPP裁判との闘い」

 この民事訴訟において、西岡研介さんが報道に携わっている者として当然事実を認識していなければならないにもかかわらず、その注意義務を怠って認識することができなかったか、意図的に事実を伏せた部分があります。福岡地方裁判所で審理がなされた第一審において、福岡市教育委員会と小学校教師は対立する立場にあるという点です。平成15年8月22日に福岡市教育委員会は小学校教師に対して停職6月の懲戒処分を科しており、懲戒処分の理由となった小学校教師の行為について、この民事訴訟においても否定することができないのに対し、小学校教師はその行為そのものについて無かったと否定しているのです。
 民事訴訟においては裁判所の判断が当事者の主張や提出した証拠に拘束されますから、福岡市教育委員会がなした懲戒処分の理由となる小学校教師の行為について、原告である児童、児童の保護者と、被告である福岡市との間においては争いがないことになります。したがって、裁判所の判断においては、原告と被告福岡市との間の争いにおいて、福岡市教育委員会がなした懲戒処分の理由となっている小学校教師の行為については事実であるとして扱われることになります。
 西岡研介さんは、「マングローブ」で数多くの民事訴訟を経験しているにもかかわらず、民事訴訟において裁判所がどのように判断するかご存じないほど民事訴訟の知識がないのでしょうか。それとも、自らがなした人一人の命を奪っていたかもしれないほどのデマ記事の責任を逃れる根拠が判決しかないため、意図的にその事実に触れなかったのでしょうか。いずれにしても村田兆治さんの死去に対する切れ味鋭い指摘とは程遠い西岡研介さんの鈍すぎるセンスのみがこの民事訴訟に関する主張で目立つことだけは確かなようです。
 福田ますみさんの著書「でっちあげ」においては、福岡市教育委員会が小学校教師に対してなした懲戒処分の理由となった行為について被告福岡市が争っていないことが記載されています。

 福岡市も3月24日付で最終準備書面を提出した。同市は、川上側の立場とは異なり、市教委が認定した体罰やいじめの事実についてはもちろん争っていない。しかし、それ以外の原告側の主張全てに強い疑義を呈し、引っ越し先のマンションの家賃やインターナショナルスクールの学費まで含めるなどして、最終的に約5800万円にまで膨れ上がった損害賠償請求の多くについては、ほとんど正当性がないとして徹底的に反論した。

福田ますみ著「でっちあげ」

 そして、判決についてもこう触れています。(浅川裕二の父親は浅川卓二と仮名で記載)

 午後1時15分、いよいよ判決言い渡しである。勝利を確信しているのか、卓二が妻の和子に笑顔を見せる。
 野尻純夫裁判長が主文を読み上げた
「被告福岡市は原告裕二に対し、220万円及びこれに対する15年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。原告裕二のその余の請求、原告卓二および同和子の各請求をいずれも棄却する」
 川上の不法行為が認定された瞬間、何人かの記者が法廷を飛び出していった。
 裁判長は、不法行為についてこう述べた。
「被告川上は、5月頃、原告裕二に対し10カウントに伴いミッキーマウス及びアンパンマンを数回にわたって行った。また被告川上は、授業中ないしゲーム中に原告裕二に対し『アメリカ人』『髪が赤い』などと述べ、原告裕二のランドセルをごみ箱に入れたことが認められる」
 しかし、体罰については「原告らが主張するような、怪我をするほどの強い力でほぼ毎日行われいたものと認めることはできない」とした。さらに、「外国人の血が混じっているので血が穢れている」「アメリカ人は頭が悪い」などの一連の人種差別発言、「早く死ね」などの自殺強要発言の全てを否定、家庭訪問中の「血が混じっている」発言についても「差別的発言として直ちに違法とは認めがたい」とした。

福田ますみ著「でっちあげ」

 被告福岡市の最終弁論の主張と判決を比較検証すると、被告福岡市と原告との間で懲戒処分の理由となった小学校教師の行為について争いがなかったから原告と被告福岡市との間において被告福岡市の不法行為が認められたとしか考えられませんが、西岡研介さんは一体どんな根拠で「国賠法(国家賠償法)では、『公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる』って定められているから、教師個人は賠償責任を免れ」たなどという主張をなさっているのでしょうか。