見出し画像

椎野カロリーナさんのミス日本グランプリを祝福することができない自称愛国者たちへ

椎野カロリーナさんの日本に対する思い

 ウクライナから帰化した際のカロリーナさんがミス日本グランプリを受賞したことで、容姿が日本人らしい美ではないなどと主に愛国者を自称する者たちから批判がなされています。しかしながら、ミス日本のコンテストの最終選考に残るような方は日頃の振る舞いなどに限らず、代表として選出される国の文化などに対する知識はもちろん、国や文化に対する思いも高いレベルに達していることには目を向けていないようです。そして、椎野カロリーナさんの日本に対する知識や思いは、高森明勅日本文化総合研究所代表も評価するほどのものであったようです。

私は毎回、講義の最初に「日本という言葉を聞いて直感的に
連想する単語は何ですか?」と尋ねている。
それへの各自の回答によって、受講者の関心の持ち方や予備知識の
水準を大まかに掴み、それを手がかりに講義を組立てる為だ。

椎野さんは「サービス」と答えてくれた。
「気遣い、人に対する温かさが海外とは異なるから」というのだ。
まぎれもなく日本人そのものの感性を持っておられる。
前日の事前審査会でお話しした時も、本番を翌日に控えて緊張しながら、
あくまで謙虚な態度が印象に残った。

高森明勅「今昔モノ語り」「椎野カロリーナさん、ミス日本グランプリおめでとう!」

私の手元にある資料の自己紹介の欄には、以下のように書いてあった。

「日本人に見えない私の心が日本人である事、そのギャップに苦悩し、
乗り越えた日々が私のアイデンティティを作り上げています」と。

高森明勅「今昔モノ語り」「椎野カロリーナさん、ミス日本グランプリおめでとう!」

ちなみに、彼女の座右の銘は「山高きが故に貴(たっと)からず」。
「山はただ高いからといって貴いとはいえないように、人は見かけだけでなく、
中身が大切である」「外観よりも実質が大切だ」という意味のたとえだ。

出典は鎌倉時代から明治初期にかけて用いられた
児童教訓書の『実語教』。
本人がそこまで知っているかどうかは確認していない。

高森明勅「今昔モノ語り」「椎野カロリーナさん、ミス日本グランプリおめでとう!」

 元々日本列島に居住していた者に加えて帰化人が大陸の文化や技術を持ち込むことで日本民族が作り上げられてきました。ただ、日本の特長的な点は、帰化人や大陸の文化や技術をそのまま受け入れるのではなく、日本的なものへと変えて受け入れてきたことです。植民地時代の宗主国の言語を公用語に加える国が少なくなく、中には宗主国の言語をインテリが使いその他の言語を庶民が使うという国もある中で、歴史上常に超大国であった中国大陸の影響が避けられない地勢的な状況の中で日本的なものが守られてきたのには先人のそのような努力があったわけです。そのような先人の努力は、漢文などとして現在にも受け継がれています。
 そうであるならば、日本人になることを望んで日本人として物を考えていこうとしている椎野カロリーナさんが日本人として生きていくことは、日本の伝統に沿うものであると言えます。何より、そんじょそこらの日本人より日本を愛して日本人として生きていきたいと願う者を受け入れずして何が「愛国」だと思います。