注目していた町田ゼルビア黒田剛監督
昨年のJ2リーグを独走状態で優勝してJ1に昇格した町田ゼルビアですが、私は黒田剛監督の言語化の能力に着目していました。町田ゼルビアは選手が歯車のようにかっちりとかみ合ったサッカーをしており、メディアで注目される黒田剛監督の言語化能力が大きな働きをなしているのではないかと考えていました。
J1リーグに昇格した今シーズンも町田ゼルビアは首位を守っており、黒田剛監督のメディア対応も含めて引き続き注目していました。しかし、天皇杯2回戦筑波大学戦でのPKによる敗退から、横浜Fマリノスとのゲームに至るまでの流れの中で決定的に言葉の選択を誤ったようです。
「正義」を軽々しく用いる語彙感覚
この黒田剛監督のコメントに関しては、J1昇格プレーオフの煽り動画を制作しているShindowsさんの批判に尽きると思います。
「正義」という言葉は、スポーツの世界で用いるには非常に強い言葉です。「正義」が最も用いられる場面が、国際紛争、それも武力による衝突や戦争において、兵士や国民を鼓舞するためであることからも明らかです。国や国民を守るために自らの命を失うかもしれない修羅場に人間を送るのですから強い言葉が必要なのです。しかし、スポーツは違います。「サッカーは戦争だ」と表現されることがしばしばありますが、これはサッカーが戦争ほどの修羅場でないからなされる表現であって、そのような世界に「正義」という言葉を持ち込むのは語彙の選択を誤ったと言わざるを得ません。同じ意味で用いるならば、「町田は正しい方向に進んでいる」でよいでしょうし、元教育者である黒田剛監督がこのような語彙選択誤りを犯すのは非常に残念でなりません。