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国防に関する憲法改正論議で抜け落ちている視点

まだマシ程度の「憲法への自衛隊明記」

 自由民主党の憲法改正案をめぐる議論がなされています。

 衆院選後は憲法改正の議論が進むのか否かがポイントとなる。自民党や日本維新の会などは自衛隊明記や緊急事態条項の新設などに意欲を示すが、立憲民主党は反対論を展開。公明党も異論を唱えており、各党の方向性は一致していない。

自民、維新、国民は改憲に意欲

 自民は政権公約で、平成30年にまとめた改憲4項目(自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実)を紹介。その上で「衆参両院の憲法審査会で論議を深め、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、国民投票を実施し、憲法改正を早期に実現する」と明記した。
 9月にまとめた改憲の指針「論点整理」では、9条への自衛隊明記のほか、緊急時に政府の権限を一時的に強める「緊急政令」の導入や緊急時に国会議員任期の特例延長を認める改憲を重視する考えを打ち出している。
 維新は基幹政策で、「教育無償化や自衛隊の明記、緊急事態条項の創設など具体的な改正条文案を示し、期限を区切って国民投票の実現を目指すなど、停滞している憲法改正議論を積極的にリードする」と強調した。
 また、改憲により教育無償化や統治機構改革、憲法裁判所の設置を目指すと主張。自衛隊を9条に規定すると明記し、憲法裁判所の承認を条件に緊急事態条項の発動を認めると訴えた。
 国民民主党は政策パンフレットで、議員任期の特例延長を認める規定を創設すると説明。9条をめぐる議論の深化にも意欲を示した。

立民、共産は反対

 立民は政策パンフレットで、「『論憲』を進める」と指摘し、内閣による衆院解散の制約、臨時国会召集の期限明記などの議論を深めるとした。
 ただ、9条を残した上で自衛隊を明記する自民案は、フルスペックの集団的自衛権の行使を容認しかねないとして反対を明言。また、現行憲法に「参院の緊急集会」が存在し、災害対策基本法など個別法も整備されているとして、国会議員の任期延長を含む緊急事態条項の新設も不要とした。
 「護憲」を掲げる共産党は総選挙政策で、「国会で憲法の明文改憲を許さず平和主義を守るたたかいは、共産の躍進にかかっているといっても過言ではない」と訴えた。
 公明は立民や共産とは異なり改憲勢力にカウントされているが、自民や維新、国民民主との足並みはそろっていない。
 政策集では9条以外への自衛隊明記を主張。「内閣や国会による自衛隊の民主的統制を確保することは国民主権の原理からも重要」だとして、「憲法が定める統治機構の中に位置付けることについて、検討を進めていく」と盛り込んだ。
 緊急時の国会機能維持に関しても「緊急集会が参院の基本的かつ重要な権能であることを踏まえながら、任期延長ができる要件、手続をどう厳格かつ明確に定められるのかを含め、さらに論議を積み重ねていく」と記すにとどめた。(内藤慎二)

産経新聞「憲法改正、足並み揃わぬ与野党 立民は自衛隊明記に反対、公明も異論表明」

 ただ、自由民主党の憲法改正案は、現行憲法よりはマシという程度で、日本国憲法の根本的な欠陥を修正するものではありません。

国防において最も重要な憲法改正条項

 日本国憲法の根本的な欠陥は、自衛隊という警察を超えるともいえる殺傷能力を有する暴力装置に対して国民の人権を守る条項が憲法上まったくないことです。それは、憲法第9条第2項で陸海空軍をの他の戦力を保持しないとして、政府の公式見解として戦力に至らない実力を有する自衛隊の存在をまったく想定していないことがその理由です。
 したがって、憲法改正のために最も重要視する条項は自衛隊から国民の人権を守るという条項を設けるということになります。私は、憲法第76条2項の改正が最も重要であると思います。

第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
② 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
③ すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

憲法第76条

 憲法第76条第2項を改正して、終審として裁判を行う軍事法廷を設け、自衛隊員の軍機違反に対して一般の国家公務員よりはるかに厳しい制裁がなされる規定を設けることで自衛隊から国民の人権を守る仕組みが設けられることになります。
 その際、国家公務員の就職に際してなされる服務の宣誓の内容については、一般の国家公務員がなす服務の宣誓に加えて、軍事法廷の判決に服する旨の宣誓をなすことも必要となります。したがって、自衛隊員及び防衛省の職員は改めて服務の宣誓を行い、服務の宣誓を拒否する者に対しては分限免職するということになるでしょう。

私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。

国家公務員の服務の宣誓例