立憲民主党だけがまだまともな皇位継承論議
国民民主党が公表した不安定な皇位継承策
額賀福志郎衆議院議長の求めに応じ、国民民主党が安定的な皇位継承に関する党の考えを公表しました。
国民民主党は、経済政策に対する提言で評価する向きもありますが、安定的な皇位継承に伴う様々な問題点について深く理解しておらず、結果として不安定な皇位継承策を公表することとなってしまいました。
安定的な皇位継承策については、岸田文雄内閣から諮問を受けた有識者会議が、安定的な皇位継承策の議論放棄という職務懈怠の末に「皇族数の減少」という瑣末な問題をより重要視して提言したものがありますが、国民民主党はそれを丸呑みするようです。
自由民主党をはじめとする主な政党の安定的な皇位継承に関する見解
岸田文雄内閣を支える立場の自由民主党もまた、有識者会議の不安定な皇位継承策を支持するようです。
公明党も同様です。
岸田文雄内閣、有識者会議、自由民主党、公明党の誤りを指摘しておくと、皇族として生まれ戦後に皇籍から離れた11宮家の皇族であった者は、天皇陛下より高齢で「血のスペア」となり得ません。その一部の者を除けば、11宮家の末裔は、誕生から現在に至るまで私たちと同じ国民として俗世を生きてきた人々です。したがって、「皇族復帰」などではなく、著名な清和源氏や桓武平氏の末裔、花山源氏の末裔である白川家、嵯峨源氏の末裔である平戸藩主でもあった肥前松浦氏、岩倉具視を輩出した村上源氏の末裔である岩倉家など旧11宮家と同様に彼らのいう「神武天皇から男系男子で継承」してきた数多の末裔がいる中で、旧11宮家の末裔だけを特別扱いして新たに皇族とするというのがいわゆる「旧宮家の皇族復帰」なのです。更には彼らの言う「神武天皇から男系男子で継承」してきた者など国民の中には大勢いる中で、皇室という聖域の中で、その健やかな成長を国民が見守ってきたという皇室と国民の物語の対象である敬宮殿下や佳子内親王殿下という女性皇族より優先して「神武天皇から男系男子で継承」してきたいわゆる「そこら辺のあんちゃん」を皇位継承候補者として、敬宮殿下や佳子内親王殿下より上の立場とし、将来的には天皇になり得るようにするのがいわゆる「旧皇族の皇族復帰」なのです。
どのような家に生まれたかによって国民の中で特別扱いする者を選別するというのですから、憲法の門地による差別に該当します。それに伴うその改正憲法の条文は「日本国民のうち旧11宮家を男系で継ぐ男子を準皇族とし、皇族になるか否かの選択において彼らは選択権を有しない」というおおよそ近代国家に相応しくないともいえるものとなるでしょう。
もう一点の誤りを指摘しますと、皇太子は次に天皇になられる方、皇嗣は現時点で皇位継承順位1位であるものの次に天皇になられることが確定していない方ですから、皇位継承の流れは決まっているわけではありません。皇太子がいらっしゃるにもかかわらず他の方に皇位継承させようとするのであれば、皇位継承の流れを揺るがせてはならないといえますが、皇嗣宣明の儀を行う際に秋篠宮殿下が皇太子あるいは皇太弟など次に天皇となられるお立場を名乗られなかったことが天皇陛下、皇嗣殿下の皇位継承に関するお気持ちのあらわれなのではないかと私は考えます。
国民民主党、自由民主党、公明党と比較してまともであるもののまだ足りない立憲民主党の安定的な皇位継承策
国民民主党、自由民主党、公明党と比較して立憲民主党の安定的な皇位継承策はまともです。
立憲民主党の安定的な皇位継承策は、女性宮家創設という正しい方向に向かうもので評価することができますが、佳子内親王殿下に関しては大きな配慮がなされなければならないという点への考察が欠けています。佳子内親王殿下の姉の小室眞子さんは小室圭さんと婚姻して皇族から離れていますが、皇室典範の改正時期によって、姉が皇族から離れ、ご自分が女性宮家創設によって皇族に残って姉妹で運命がまったく異なるものになってしまうというのは、小室眞子さんと佳子内親王殿下の希望がいずれにあったとしても残酷なことであると思います。将来訪れるであろう佳子内親王殿下の婚姻の際には、佳子内親王殿下が希望する道に進みやすいように特別な配慮がなされなければならないと思います。
皇位継承において考えておかなければならない視点
まず、政府や各党の根本的な誤りを指摘しておかなければなりませんが、皇位継承をしっかりとなすことができるならば、皇族数の減少は大した問題ではありません。皇族の数が減少しているのであれば、それに応じたご公務を検討すればよいわけですし、皇嗣殿下が天皇陛下と同世代であることを考えると、現行の皇室典範の規定による天皇陛下の次の世代の皇位継承候補者が悠仁親王殿下お一人であり、悠仁親王殿下に男子が誕生しなければ皇位断絶という想像を絶するプレッシャーの中で配偶者となられる方が現れるかどうかという問題が発生します。このような現状の中で安定的な皇位継承策に関する議論を放棄して皇族数の減少を中心に議論してきた有識者会議のメンバーは何も仕事をせずに報酬をもらった方々と私は解釈しています。
もし、自分に悠仁親王殿下と同年代の娘がいたとして、結婚に際して男子誕生だけが求められ、女子が誕生したとしても喜ばれるどころか落胆され、上皇后陛下をしばしばバッシングの対象とした週刊文春のようなこの国の害悪とも言えるメディアが、名誉毀損による訴訟対応に備えずに済むというお気楽な立場から出鱈目を書き散らすという状況が目に見える中に娘を飛び込ませたいとは思いません。そのことについて大きな不安を感じるのが当然であると思います。
また、仕事をしない「無識者」であるとも言ってよい有識者会議は、安定的な皇位継承より皇族数の減少を議論するという職務怠慢をなして寝言のような意見書を提出しましたが、皇室の改革で最も重視されるべきなのが安定的な皇位継承であって、皇族数の減少は些事でしかありませんし、皇族数が減少すれば公務を選別すればよいだけのことで喫緊の課題でもありません。それに対して、安定的な皇位継承は喫緊の課題でもあります。
例えば、天皇家に最も近い宮家である秋篠宮家では、お二人の内親王のうち小室眞子さんが婚姻によって皇族から離れ、佳子内親王殿下が皇族として残っています。佳子内親王殿下もいつご婚姻の話が持ち上がっても不思議ではない年齢となっていますし、仮に女性宮家が創設されることとなったとしても、皇室改革の時期の問題で小室眞子さんと佳子内親王殿下の運命がまったく異なるものとなってしまうのはこの姉妹にとってあまりにも残酷です。つまり、安定的な皇位継承の前提の一つとなる女性宮家創設は秋篠宮家にとっては遅すぎる議論であったと言えるのです。
なお、皇位継承に関する議論で最も重視しなければならないのは世論です。天皇はいつの時代においてもその時代の臣民や国民にとって権威を感じる存在であり続け、それが積み重ねられることによって皇位が代々受け継がれてきました。国民がその健やかな成長を見守ることもなく、「どこの馬の骨かわからないあんちゃん」でしかない男子が皇位継承権を有する皇族として佳子内親王殿下ばかりでなく敬宮殿下よりお立場が上となることは、皇室の聖域性を損ね、国民の天皇や皇族に対する敬意の低下を招くものとなることは言うまでもありません。わかりやすい例を挙げれば、
竹田恒泰さんが天皇となる
小室圭さんと婚姻しても皇族に留まっていたと仮定して、小室眞子さんが天皇となり、小室圭さんが天皇の配偶者として皇婿となる
のどちらの天皇や皇室を国民が敬愛することができるかというものであり、私が結論を申し上げるまでもなく明らかであると思います。
元々、男尊女卑が念頭にあった男系男子による皇位継承
天皇にならなかった草壁皇子の妻である元明天皇から娘の元正天皇に継承された女系継承の事例など、かつては男系、女系の双系による継承が男系男子による継承と改められたのは、大日本帝国憲法下の皇室典範からでした。この皇室典範で男系男子による皇位継承が定められるまでに至る議論の中では、女性が当主である宮家について配偶者である男性が当主であるかのように国民が勘違いしてしまうのではないかというものがあり、当時の男尊女卑思想に基づいた臣民の認識が男系男子による継承の決め手となったことが分かります。
しかしながら、敬宮殿下や佳子内親王殿下が婚姻後も皇室に残って宮家を創設するご決断をなさったとしても、現代の国民はその配偶者の方が当主であると勘違いすることはありません。お二人が選び、皇族会議の承認を得るわけですから配偶者となられる方は立派な方であることは明らかですが、国民の敬愛の情はまず敬宮殿下や佳子内親王殿下に向かい、皇室の権威が損なわれることはありません。
さらに述べれば、世論調査においては、女性天皇や女系天皇の違いなどの専門的な部分については理解が進んでいないものの、次の天皇には敬宮殿下がふさわしいと考えている国民が多いことが明らかになっています。これは、天皇の子が次の天皇となるという直系で継承される皇位に国民が権威を感じているということであり、この国民の意識を無視してはならないと思います。
皇族になってもよいと考える旧11宮家の末裔は存在するのか
そして、「神武天皇から男系男子で継承」してきたことのみを重視する立場の方々が完全に見落としているのは、旧11宮家の末裔は我々と同じか国民ですから、どのように皇室典範を改正しても本人が皇族になってもよいという意思が無ければ皇族にさせることはできないという点です。これは作家の保阪正康さんが旧11宮家の末裔にインタビューして記事にしていますが、彼らはそれぞれ皇室とは無関係な生活をしており、「皇族となるなど畏れ多い」という人ばかりでした。
「神武天皇から男系男子で継承」したことを重視する立場であった安倍晋三元総理大臣は、内閣のトップとして皇位継承問題について国民が知り得ていない情報にも接する機会があったと思いますが、政権末期頃にはいわゆる「旧皇族の皇族復帰」には後ろ向きの発言が目立ちました。安倍晋三元総理大臣は、旧11宮家の末裔の意向を確認することができたからこそ、後ろ向きの発言をするようになったのではないでしょうか。