ご当地アイドル自死をめぐる記者会見が名誉毀損であると判断された事例
愛媛県ご当地アイドルの自死をめぐって所属事務所を提訴した遺族と訴訟代理人がなした記者会見に関する裁判所の判決が言い渡されました。
私はこの裁判にはそれほど関心を持っていませんでしたが、この自死をめぐる一連の裁判においてご当地アイドルの女性が自死した原因は事務所の対応ではなく別の原因であると判断されてきており、記者会見が名誉毀損であると判断されたこともそれらの判断の積み重ねによるものであると思っています。ただ、提訴前の記者会見が危険なものであるということを改めて明らかにしたものであると思います。
プロボクサーの亀田興毅さんらに監禁されたと民事訴訟を提起した日本ボクシングコミッションのリングアナウンサーの記者会見が違法であると判断された事例
同様の事例として、四国で行われたボクシング興行で日本ボクシングコミッションのリングアナウンサーが亀田興毅さんらに監禁されたとして民事訴訟を提起し、提訴直後に行った記者会見の違法性が認められて本訴棄却、反訴一部認容で本訴原告のリングアナウンサーが330万円の賠償を命ぜられたものがあります。この事例では、亀田興毅さんらが監禁した事実がないばかりでなく、亀田興毅さんらは後々の紛議にならないように話し合いの内容を動画で撮影していたということもあり、本訴原告のリングアナウンサーの名誉毀損が認められたものでした。なお、この事例から派生した民事訴訟では、ライターの片岡亮さんも名誉毀損が認定されて高額の賠償を命ぜられています。
なお、この民事訴訟では片岡亮さんが亀田興毅さんらに何をやったのか理解すらしていないのではないかと思われるマスコミ人らによる「スラップ訴訟」という決めつけなどが目立っていたことも付け加えておきます。
亀田興毅さんらが提出した証拠にはリングアナウンサーとの話し合いの場である室内からいつでも出ていくことが可能であることが明らかにされていましたし、何よりその話し合いの内容を明らかにする動画も提出されていました。このような動かぬ証拠があるにもかかわらず、マスコミ人らが片岡亮さんを擁護してスラップ訴訟などという主張をした原因の一つには、知人や友人を互いにかばい合うマスコミ人らのぬるま湯体質があるのではないかと思っています。
記者会見の違法性の有無が法廷で判断されると思われる「リーガルハラスメント」裁判
これらの先行事例を見たうえで、今後の展開が興味深い事例が一般社団法人Colaboと代表理事の仁藤夢乃さんが暇空茜さんを提訴した民事訴訟の記者会見です。記者会見の違法性について暇空茜さんは原告訴訟代理人の神原元弁護士と太田啓子弁護士に対して民事訴訟を提起したことを明らかにしています。この民事訴訟についても、提訴直後の記者会見の違法性の有無について争われるものと思われます。
被告をサンドバッグにする民事訴訟直後の記者会見
このような敗訴が相次ぐ民事訴訟提訴直後の記者会見ですが、その原因は記者会見時点での情報量の差により原告側が被告側をサンドバッグにすることができるタイミングであることと無縁ではないでしょう。民事訴訟提起時点では、原告側は訴状の内容も提出された証拠の内容も含めて承知しているのに対し、被告側は何も情報を得ていません。仮に早く察知して提訴直後に裁判記録を閲覧しようとしても当事者への送達前に裁判記録の閲覧ができないのが通常の取扱いです。したがって、原告側は訴状の内容に基づいて伸び伸びと被告を批判することはできますが、被告側は「訴状を見ていないのでコメントできない。」と述べることしかできません。しかも、裁判の仕組みを知らない者からはそのようなコメントすら無責任であると批判されたりもするわけです。このような非対称性が原告側の全能感を満たしてやりすぎた批判となってしまうのだと私は思います。